1-1 死亡と思望
至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いします。改善した方が良いところ、誤字脱字等何かありましたらメッセージをいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
機械音が鳴る
それは一年間、この部屋の主であった少年の心臓がたった今止まってしまったことを表していた。
「いや! どうしてこの子が!」
女性のかん高い叫び声が真っ白い部屋に響き渡る。
崩れ落ちる女性を慌てて支える初老の男性。呆然とした表情でベッドの横に立ち尽くす中学生くらいの男の子。白衣を着た医師に数人の看護師。
少年の希望でいつも開け放されていた窓。まるで少年を連れて行ってしまうかのように吹いた風がそこにかけられている薄い水色のカーテンをふわりと揺らした。
♢♢♢♢♢
自分が呼吸をしていることに気がついたのは突然だった。
まどろんでいる時のような、まるで意識が低反発まくらにすっぽりと沈みかけた状態のような気持ちの時だった。ふわふわとして気持ちいい。
何で俺息してるんだ?
おかしい。あの時、確かに死んだはずなのに。すべてが終わったはずだったのに。
全力で頭を覚醒させようとする。
やっぱり呼吸してる!目をつぶっていても自分の胸がわずかに上下しているのがわかった。
状況を確認しよう!落ちつけ!死んだ後も呼吸ぐらいするもんなのかもしれない。別に呼吸したっていいじゃないか!そもそも俺の勘違いかもしれないし。
何度も深呼吸を繰り返して、目を開けて事実を確認する心の準備をする。吸ってはいてを3度ほど繰り返したところで深呼吸してるってことはお前、呼吸してるじゃねーかということに気がついたが綺麗にスルーした。気にしない、気にしない。
いや…… なんだか眠くなってきたぞ。もう一度寝よう。寝てから考えよう。
最近、痛みでぐっすり眠れることなんてなかったからな。
♢♢♢♢♢
次に目が覚めたのは、誰かにからだをさわられていると感じたからだった。驚きから目を開けてしまった。
白い天井が見える。白い天井……毎日同じ光景を見ていた俺にはすぐにわかった。
ここは…あの病室じゃない。もしや、霊安室か!? 病院の壁を見続けたといっても、さすがに霊安室の天井にまでは詳しくない。お化けのたぐいは苦手なんだ。
霊安室で目覚める…… なんということだ!と心の中で嘆きながら頭を抱えようと手をあげる。
手。手だ。これはなんだ?
自分の視界の中に突如入ってきたぷっくりとしたものを顔に近づける。やせ細り、点滴のあとが消えることがなかったあの手か!?ひっくり返して動かしてみる。想像したのと全く同じようににぎにぎと真っ白い手が動いた。
もう間違いない。この赤ん坊の手は明らかに俺の手だ。
そこでようやくなぜ自分が目をさましたかについて思い出した。真っ白な手を下ろすと、今度は真っ白い足が視界を横切る。
足。今度は足だ。
足元から何やら音がしている。さわさわと下半身に違和感を感じたところで気がついた。
自分はなんて…なんて格好をしているんだ!?
他人に下半身を見せているじゃないか!俺はもしかして変態だったんだろうか……
走馬灯よりも速く勢いで今までの自分の人生を振り返って行く。
…大丈夫だった。いたって正常だ。
パニックにおちいっている間に女の人に哺乳瓶のようなものでミルク?を飲まされていたらしい。哺乳瓶が空になると、何か言っていなくなってしまった。
ベットに寝そべったまま横をむき、部屋に自分しかいないことを確認する。子供部屋にしては少々大きすぎるのではないかという部屋には確かに誰もいなかった。
無意識にぎゅっと握りしめていた手をほどいた。
ぱちん、とほおを打つにしては可愛らしい音がする。わずかに感じる痛み。
あれ、いま赤ん坊?
それからしばらくすると、部屋が暗くなってきた。日が沈んでいく。つまりさっきのはお昼だったのか…。あれから誰も部屋に入ってくることはない。
普通、中身は違ったとしても見た目赤ん坊をこんなに長時間ほおっていくものだろうか。さっきの人は母親じゃなさそうだし… どんな放任主義だよっ
まあ、いい。なんにせよ、俺はこの数時間で現状把握というものすごく大きな一歩を踏み出したのだ。
赤ん坊である。しかも、自分の赤ん坊の頃とは部屋が一致しないことから、完全に違う肉体。
つまり、生まれ変わったのだ、この俺は。
この一歩はローラーシューズで白線の上を滑る距離並みじゃなかろうか。白線の上ってよく滑るんだよな〜
母親がだれか、父親は?兄弟はいるのか?
一体どこの国に生まれて、今はいつなのか。
一体「俺」はどんな人間なんだ?名前は何?
いくら考えても疑問が尽きることはない。
いいか。今は寝るのが仕事の赤ん坊なんだ。明日から調べていこう。
せっかく生まれ変われたのだから
心の中でそう嘆くと、再びまぶたをおろした。
修正しました。