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婚約パーティー

「これはこれは、アルフレッド殿下。お久しぶりでございます」


 王城の大舞踏場で開かれた王族主催のパーティーには、アルスター王国の主たる貴族家が全て呼ばれている。艶やかなドレスを来た貴婦人に、贅沢に宝石をあしらったタキシード。贅を尽くした夜会服を見ても、今夜のパーティーが特別なものだということがわかる。何しろ、王位継承権を持つ王子の婚約披露パーティーだ。通常の夜会とは立ち位置が違うのは当然だ。


 煌びやかな雰囲気の会場を見回し、緊張感だけがつのっていく。


 先ほどから痛いくらいに感じる視線は、確実に自分へと向けられたものだ。右を見ても、左を見ても、肉食獣人だらけの会場の中、草食獣人は自分一人のみ。いくつもの好奇の目が自分を見ている。興味津々で向けられる目もあれば、あからさまな侮蔑の視線を投げかけて来る者もいる。今も、殿下に話しかけて来た狐獣人の男が、こちらを値踏みするような視線を投げかけてくる。


 どこへ行っても草食獣人へ向けられる目は同じだ。だからこそ、草食獣人は、あの保護区から出ることを極端に嫌がる。


「すまない、ユリアス。本当はこんな所、来たくもなかっただろう」


「いいえ、大丈夫です。草食獣人に向けられる目はどこへ行っても同じですから、慣れました」


 本当は、あの目が怖くて仕方ない。他の草食獣人と同じように、安全な保護区に居た方が楽なのは分かっている。ただ、そんな人生つまらないと心が訴えるのだ。


 これも若さ故か……


「――草食獣人と肉食獣人は、わかり合えないものなのだろうか?」


「えっ? どう言う事ですか?」


「いやな、俺の出自の問題もあるが……何でもない。そんな事より、今夜はどうしてもユリアスに会わせたい人がいるんだ」


「会わせたい人ですか?」


「あぁ。本当は、面倒くさいんで、会いたくはないんだが、会わせろ、会わせろとうるさいんでな」


 誰だろうか?


 そして連れて来られた豪奢な部屋。そこのこれまた豪奢な椅子に鎮座する人物を見て、本気で卒倒しそうになった。


「――陛下……」


 何を隠そう、そこに鎮座していたのは、アルスター王国の王にして、この国で最も強いと言われている青銀の狼『ロイ・アルスター』その人である。


 ただ座っているだけなに醸し出す雰囲気が、ただ者ではない。放たれるオーラに圧倒され、背を冷や汗が流れ、足が震えそうになる。絶対的強者に睨まれた獲物と同じ心境を今味わっていた。


「父上、その威圧そろそろ抑えてくれますか。流石に、エリアスには強すぎる」


「――あぁ、すまんすまん。別に威嚇していた訳ではないのだ。あまりに可愛い兎に、しばし惚けていた」


「言葉が過ぎますよ」


 今、陛下は何と言った? 可愛い兎とか聴こえたが……。これは、気のせいだ。そうでないにしても、その発言に突っ込みを入れる勇気はない。


 ビリビリと空気を震わせるほどの威圧が、スッと消える。


「ご、ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。兎獣人のエリアス・ラパンと申します」


「噂は聞いておるぞ! 大層、医薬に通じておるとか?」


「滅相もございません。多少、他の者よりも薬草に詳しいだけでして、王家お抱えの医師の方々に比べれば」


「そう謙遜するな。お主が居なければ、こやつは助からんだかもしれんしなぁ。侍医が言っておったわ。前処置がなければ、毒が体中に回って、助からんだとな」


 豪快に笑いながら、アルフレッド殿下を指差す。


「そうですね。あの時、ユリアスに出会っていなければ間違いなく死んでいましたね。彼は、命の恩人です。それだけではなく、運命だとも思っていますが」


 そう言葉を紡いだアルフレッド殿下が、こちらを見つめる。その瞳が熱っぽく潤んで見えるのはきっと、恩人に対する感謝の想いが込められているからだろう。


「――はは、運命か……。お前も言うようになったものだな。私がマリアと出会ったのも、また運命だったか」


――マリア……誰だろう?


 そんな疑問も陛下にかけられた問いに霧散し、消えていった。

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