表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第一話 出会い


「………きた!」


 思わず声が上がる。

 音、色、どれを見ても間違いない。

 いったいどれだけの時間が経ったのだろうか。

 廃れていた心は一気に活力を取り戻し、目は色を取り戻した。


「ついにきたな、裕也ゆうや!」


 隣にいる相棒が肩を掴み揺さぶってくる。

 ふん、まぁ黙って見てな。

 にやけながらタバコを咥える。


 この時を朝8時から待っていたんだ。これできてなかったらこの台ぶち壊すならな……!

 

「こいっ、確変!」


 そして、また俺の心は廃れていった。




「はぁ、世界とギャンブル滅亡しねぇかなぁ」


 とぼとぼと夜道を歩きながら、そう呟く。


「まぁ気すんなって、昨日はめっちゃ勝ってたじゃん」

「うるせぇよ、隣でバカスカ当てやがって、ぶっ殺すぞ」

「こわっ、一回負けたぐらいでそんな殺気立つ奴、久々に見たな」

「……それが最後の言葉でいいか?」

「いいわけねぇだろ!」


パチ仲間であり、幼馴染でもある相棒が慰めてくるが、全く心に響かない。

 

「明日1限からあるだろ、負けて気落ちしてるからってサボるなよ、裕也は単位ギリギリなんだからさ」

「わかってるわかってる。さっさと帰れボケ」

「こっわ、じゃあな夜道に気をつけろよ!」

「お前も背中に気をつけろよ」

「だから怖いって!」


そう言いながら、駆け足で去っていく。


「あいつはいつも元気だな…… 俺も見習わねぇとな」


 小さい頃から、落ち込んだ時にはいつもあいつがいて、そして慰めてくれた。


 ……いや、あいつともう1人か。



 アパートに帰り着くと、見慣れない顔の少女が2階へ上がる階段に座っていた。


 金髪で、顔立ちが日本人とは違っている。妹が持っていた人形に似ている気がする。


 いや、そんなことどうでもいいか。世界もどうでもいい。


目を合わせないようにし、知らぬ顔で少女の横を抜け階段を上がる。


こんな時間になぜ少女が1人でランドセル背負ったままアパートにいるのかと不思議には思うが、俺には関係のない事だ。


「……お兄さん」


くそっ、話しかけられた!


「なんだガキ、夜遅くに1人でいると危ねぇぞ」

「……わたしね、学校のみんなから意地悪されるの。髪の色が違うからって、家に帰っても毎日習い事で、全然遊べない」


 ……近頃のガキは大変だな。学校終わった後習い事してんのか。

 俺はずっと放任主義だったから好き勝手していたから分からんが、苦労しているんだな。


 ……だけど、俺には関係ない。


「そうなのか。夜道に気をつけろよ」

「だから、いえで? してきたの。もう学校も習い事も嫌だから」

 くそっ、こいつ話聞いてねぇ。


「でも、その一つ問題があってね……」

 すると、モジモジし始める。

「お手洗い、貸して欲しいの……」


 ……なるほど、学校終わってから家に帰ってないとすると、相当な時間が経っているな。

 だけど、小学生だろうと知らねぇ奴を家にあげたくないな……。


「すぐ近くに草むらがあってな……」

 言い終わる前に、ムスっとした表情でズボンを強く握り締められた。


「じょ、冗談だ、トイレ貸してやるからついてこいよ」




「ありがとう、タバコ臭いお兄ちゃん」

「なんか呼び方変わってない?」


 ハンカチで手を拭きながら、家の中を見回す少女。

 家片付けてないから、あんま見て欲しくないんだけどな。


「おいガキ」

「まつな、まつなって言うの。小学3年生だよ」

「小学3年生まつな、あんま家の中見るなよ、教育上よくないものがいっぱいあるからな」

「たとえば?」

「コンドームとかエロ本とかだな、見るか?」

「見ないよ。教育上良くないものなんでしょ」


 ……このガキ、妙に大人びてるな。

 それに、困っている時に俺に頼った。ほかにもこのアパートを使用している人はいるが、俺に頼ったんだ。おそらく、危険な人の見分けができている。


「ほら、これやるよ」


 手に持っていた袋を渡す。


「なにこれ?」

「惣菜パンとお茶だ。ランドセルに入ってる電話でお母さんを呼びな。」

「……なんで電話持ってるってわかったの」

「さっきからずっとバイブレーションしてるだろ。バイブレーションって言葉は忘れろよ、教育上良くないからな」


 まつなは、ふふっと笑った。


「タバコの人って面白いね」

「また呼び方変わってない?」

「ありがとう、私もお兄ちゃんぐらい自由に暮らしたいな」

「この自由を手に入れるために苦労してんだよ、さっさと帰れ小松菜」

「まつなだよ!」


 玄関の方で駆け出し、ドアノブに手をかける。

 そして、俺方に向き直った。


「またね!」

「おう、またな」


 ……腹がへったな。

 まつなに晩飯をあげちゃったし、朝イチでコンビニにでも行くか。


 なんだか妙に心地よかったな。ガキは嫌だったんだが、毛嫌いしてただけかもしれない。

 また、会う事があったら礼でも言っとくかな。遊んでくれてありがとうって。


 まぁ、会う事は、もう2度とないだろうけど。





「タバコのお兄ちゃん」

「………」




 翌日、同じ場所、同じ時間に、まつなと出会った。



随時更新していきます。


また読んでくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ