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ピンク髪なら特別課税  作者: さいべり屋


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2/10

ピンク髪なら高額バイト

閲覧いただきありがとうございます。

本日は2話投稿していますのでご注意ください。

それはアネッサがくれた1枚のチラシだった。


アネッサは同じ食堂で働く同僚だ。ブラウンの髪に口元のほくろが色っぽい。


「短期集中バイト……。えっ、なにこの報酬?!」


わたしは目を疑った。普通の仕事ではありえない高給だ。


「給仕の仕事だけど、夜だから食堂が終わってから行けるし、いいと思ったんだけどなぁ。私は面接で落とされちゃったの。でもルナなら美人だからいけるかもって」


美人ならいけるかもしれない高給な夜の給仕……。嫌な予感しかしない。が、背に腹は代えられない。わたしは閉店後、求人チラシを握りしめて面接に向かった。




その店は裏通りを少し行った先にあるようだった。


分かりにくい地図に苦戦しながらたどり着いたのは、一見すると廃墟のような寂れた建物。こんな店で本当に高給が出せるのか……。訝りながらも裏口の重いドアを開けると。


別世界だった。


外の黴臭いにおいはなりを潜め、高価な調度に薄暗くムーディな照明。隠蔽魔法だろうか? 前言撤回、これはとんでもなく金がかかっている。紛うことなき「高級店」だ。


キョロキョロと辺りを見回していると、奥の部屋から男が出てきた。


「……バイト希望か」


男はルナを上から下まで舐めるような目で見ると顎をしゃくり、そのまま奥の部屋へ戻っていった。ついて来いということらしい。


奥の部屋は事務室のようだった。男はルナを椅子に座らせ、自分も対面に腰かけた。


「……志望動機は」


さして興味もなさげに聞いてくる。高級な店の内装にはそぐわない、爛れた雰囲気のある男だ。


「はい。ピ課税の支払いに困っていて、ここのことは友達に聞いて……。痛っ」


いきなり髪を鷲掴みにされた。男はわたしの悲鳴に頓着する様子もなく、掴んだ髪を検分すると、フンと鼻を鳴らした。


「いいだろう。合格だ。……契約書にサインしろ」


仕事内容も雇用条件も告げられず、一方的に契約書を突き付けられた。


「……なにこれ」


わたしは呆然とした。そこにはありえない条件がこれでもかと並べたてられていた。


  一つ、雇用主の指示には決して逆らわないこと。


  一つ、雇用条件および待遇は、雇用主の都合によりいつでも変更可能であること。


  一つ、就業地は雇用主の定めるところにより、いかなる移動や転居も拒否しないこと。


  一つ、契約中・契約終了後にかかわらず、雇用中に知りえたすべてのことを他言しないこと。


  一つ、雇用主から指示があった場合は、その他の事項についても発言を禁ずることができること。


  一つ、契約の解除は雇用主のみが可能であること。


  一つ、被雇用者は、雇用者が認めた第三者にも絶対服従すること。


  一つ、雇用権の売買・譲渡は雇用主の意志のみによって行われること。


  一つ、雇用中は、被雇用者の生命や身体、その他一切についての権利を雇用主が有すること。



ヤバいヤバいヤバいヤバい。


わたしは顔から血の気が引くのを感じた。これは明らかにまっとうな契約条件じゃない。それに輪をかけてヤバいのは……。


──強い、魔法のにおい。


この契約書、おそらく魔法拘束力がある。サインした瞬間に一巻の終わり。こいつらの奴隷だ。わたしは強張る顔面をなんとか動かして、へらりと笑顔のようなものを作った。


「えへへ。これはちょっと、え~っと、厳しいかもぉ? 一度帰って考えさせてもらってもいいですかぁ?」


他意はないと示すためにへらへらと笑うわたしに、男も笑顔で返してきた。片頬だけを上げた、滴るような下卑た笑みだ。


「そうかい。無理にとは言わねえよ。嫌なら帰れ。……帰れるもんならな」


隅の暗がりから強面の男がふたり、のそりと現れてドアの前に立ち塞がる。帰れと言いながら、帰してくれる気はなさそうだ。


──絶体絶命だ。


「……さあ、どうする」


逡巡の末、近づいてくる男の差し出したペンを、わたしは奪うように受け取った。


最後までご覧いただいてありがとうございました!

第3話「③ドキッ?! ピンク髪だらけの動物園」は、明日21時投稿予定です。

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