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第1章 第1話   矢が射たもの

―ただの思い付きとはいえ、我ながら綺麗にできたもんだよな。

どう狙えばいいかもよくわからないまま、的に見立てた発砲の板に狙いを定めてみる。

昔から何となく狙うことは得意だった。

左手の指先越し、意外と予想以上に綺麗に鋳造できた鉛製の鏃。

的に当たれば変形してしまうことは明白だが、それでもその形状と金属の光沢が嬉しかった。


―それにしても、さっき聞こえた『音』は何だったんだろう?

右手を放す。カンという甲高い音が耳元で聞こえた。

矢を放つとこんな音がするのかと思った。


放たれた矢は眼前の白い塊に吸い込まれ、その塊ごと地面に刺さった。

「え」思わず声に出た。


俺は確か発泡スチロールの的を狙っていたはずだ。

いや、的も白いよ、確かに。

だけど、今矢が刺さっているこれは、白いけど、発泡ではない。

どちらかというと毛でおおわれた塊だ。


矢を放った瞬間に何かが飛び出してきたのだろうか。

俺は無意識に白い塊を凝視していた。

徐々に赤い色がにじみ出る。考えるまでもなく血液だ。


-何かを殺した?


血が滲むそれを生き物と踏まえた上で観察する。

白い毛で覆われた体、長い耳に赤い瞳。

兎のようなそれは今、地面に縫い付けられながらももがき続けている。


兎のようなそれ。兎ではない。


げっ歯目特有の前歯の代わりに犬歯、というか牙が見える。そして額には角。

最初から兎と認識できなかった最大の理由は、中型犬ほどもあるその身体の大きさだった。


「アルミラージ?」


思い付きのままに、その名を言葉にしたつもりだった。

が、俺の耳には聞きなれない声が聞こえた。

誰かいるのかと周りを見ようとした瞬間に右手から飛んでくる白い塊が視野に入った。


巨大兎もどきは1羽ではなかったようだ。

飛来するそれを寸でのところで躱した。いや、躱せた。たまたま。


そいつが着地した地点付近にもう1羽兎もどきがいた。

2羽の兎もどきは眉間にしわを寄せ、低く唸る。

明らかな敵意を向けている。

でかいから怖いわ。


俺はそいつらから目を離さないよう、地面に手を伸ばす。

矢はもう2本あったはずだ。

中指に堅いものが触れる。それを鷲掴みし、矢を番える。

2本目は残念ながら手の届かないところに落ちているようだ。触れることもできなかった。


1羽の兎が、飛び掛かろうと身を縮めた瞬間が見えた。


スローモーションのように感じる。


膨張する後ろ足が少しずつ伸びるのと同時に前足が少しずつ地面から離れる。

前足が完全に地を離れ、後ろ足が伸び切りそちらも地面を離れようとした瞬間に矢を放つ。


―カチャ コツッ コト

(この音!さっき何度も聞いた音だ!)


そこでスローモーションが終了した。


次の瞬間、兎は喉から矢を生やし、赤い花を咲かせたように血しぶきが舞う。

打ち下ろす形だったから矢は喉元を貫通し、地面に縫い付けられている。

…にもかかわらず、だ!奴の太い前後脚は疾走するように動き続けている。


その光景は軽く俺のSAN値を削った。


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