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序章
ワンルームアパートの一室で、黙々と工作にふける青年。
緩やかに湾曲した木材に丁寧にペーパーを掛けている。
つややかに仕上がったそれにそっと指を這わせ、満足気に一人頷く。
両端に太い弦を掛けると、弓の形を成した。
弦を軽くつま弾くと、弦楽器を思わせる音がした。
既につくられていた3本の矢を持ち、人目を気にするように部屋を出てアパートの裏庭に向かった。
物置のそばに置かれていた発泡スチロールの板を金木犀に立てかけ、それを背に歩き始めた。
2歩歩いたところで足が止まる。
何かを探すようにあたりを見渡す青年。
おそらく何も見つからなかったのか、小さく首を傾げまた歩き始めた。
また数歩進んだところで足を止める。
「何の音?」
先ほどより大きな動きで周囲を見る。時には足元を見つめ、次は天を仰ぐ。
それでも探している「何か」は見つからない。
今度は目を閉じ耳元に手を添える。
音を拾おうとしているように見える。
顔の向きを変え、時折目を開けていたが、20秒もするともう一度首を傾げ、あきらめたようにまた歩き出す。
青年は何事もなかったように、用意した発泡の的に狙いを定め、弓を引き絞った。




