ナツが見た夢
僕は夢を見ていた。
これは、僕らが幼い頃だった。
『5人で世界に名を轟かせる探索者になる!』
幼い頃に、シオンが言った夢だ。
キラキラとした目で語ったその夢に、当時の僕はすごく感銘を受けたことを覚えている。
シオンはいつも僕やユイ、タケル、レオナのことも一緒に考えてくれていた。
決して自分一人で行動することが無く、シオンが引っ張る形でいつも5人で一緒にいたんだった。
そんなキラキラと輝く目をしたシオンに、僕らも一緒についていくことを決めた。
正直、当時の僕は探索者にそこまで興味はなかったが、あんなキラキラと憧れの眼をしたシオンの夢を一緒に叶えたいって思ったんだ。
でも、いざ中学生となって探索者資格を5人で取得し、ダンジョンに潜ってからのシオンの表情は日に日に表情が暗くなっていった。
シオン以外の僕ら4人は、探索者としての才能があったからか、メキメキと実力を伸ばすことが出来ていた。
シオンと実力の差が現れ始めてることにも、僕らは気づいていた。
でも気づかないフリをして、シオンと一緒に強くなろうと、気付かれないようにと思いながら、シオンのペースに合わせようとしていた。
「ちょっと僕はトイレに行ってくる」
先に攻略して、ゆっくりシオンとレベル1ダンジョンを探索したいと思って、レベル1ダンジョンに、シオンを除いた4人で挑み、攻略した次の日の事だった。
シオンの探索者としての実力を付けるために、再度レベル1ダンジョンに行こうとした直前、シオンが僕らから離れた。
「ちょっと!今からダンジョンに入るとこだったのよ?」
「まあまあ、行かせてやれよ。ここで待ってるから、行ってこいよ」
「ありがとう!」
笑みを浮かべ、トイレの方に走っていくシオンの表情に違和感を覚えた僕は、3人に断りを入れて、こっそりシオンについて行った。
「どうして!!!僕は……スライムにも勝てないんだ!!」
見なければ良かった。
タケルやユイ、レオナに隠れるように、トイレで1人ボロボロと泣くシオンの姿を目にしてしまったからだ。
誰もいないトイレ内で、拳をガンガンと壁に叩きつけ、涙をこぼす姿に、僕は心が締め付けられた。
思えば、シオン以外の僕ら4人は実力がついたと思って、レベル1ダンジョンに潜るのも、週に2、3回程だった。
でも、シオンだけは違った。
来る日も来る日も毎日のようにレベル1ダンジョンに潜り、モンスターに挑んでいた。
これは、後から受付の人から聞いた話だった。
諦めずに何度も何度も挑んでいった。
でも、無慈悲にも勝てたことは1度もない。
レベル1ダンジョンに潜ってた他の探索者の話を聞くと、初心者向けのモンスターと言われてるスライム1匹にさえ、殺されそうになったのだという。
それでも、毎日毎日潜っていたんだと。
『5人で世界に名を轟かせる探索者になる』
という夢に向かって、僕らに隠れながらも実力を身につけようとしていたことに気付き、僕ら4人はシオンはシオンだから、自分達で守ってやらないといけない……なんて、甘い考えを持っていたことを恥じた。
その事を、僕は3人に言うと、3人も表情が険しくなった。
「クソっ、すまんシオン!!!」
「慢心し過ぎてたわね……」
「シオンさん……」
たしかにシオンには戦闘において才能はない。
レベル1ダンジョンのモンスター戦を見たら明らかだ。
だけど、シオンには僕らにない力があった。
それはダンジョンに潜らなくても僕らの力となっている。
そのことはシオンは気付いてないみたいだけど、他の3人は気づいてるみたいだ。
シオンにはサポーターとしての素質がある。
中学生になり、シオンは演奏に興味を持つようになった。
あとから考えると、無意識のうちに探索者から遠ざける為のものだったのかなとも思った。
でも、シオンの演奏には特別な力があった。
最初は恐る恐ると言った感じで弾いていたギターだったが、その音を聞いただけで、僕ら4人は力が漲っていた。
試しにレベル1ダンジョンに潜ったら、最速で攻略したし、レベル2ダンジョンのモンスターにも苦戦することがなかった。
シオンはその事に全く気づいていなかった。
合間合間には、レベル1ダンジョンに潜っていた。
そんなある日の事だった。
「僕にはみんなみたいな才能はないみたい。だから探索者の夢はみんなに頑張って……」
シオンの部屋に集まった僕ら4人に、ボロボロと泣きながらシオンは言った。
その泣いた姿が、トイレで1人で泣いていたあの時と重なって見えた。
そうやって泣くシオンを、僕らは見たくない。
なにより、見捨てない。見捨てるはずがない!
「シオン、確かに君は戦う才能はない。でもね、僕らには君が必要なんだ」
泣いているシオンの肩に手を置いて僕は話す。
「だから……リーダーやればいいと思うんだ」
「は?」
「僕ら5人で【白夜】だ。それなのにシオンが居ないのはおかしいよね?」
「いや、そうだけど……僕なんか足手まとい……」
「んなわけねぇだろ。むしろ俺たちはシオンがいたからこうやってみんなで居ることが出来てんだ」
タケルが言った。
「私もシオンが言ってくれなかったら、そもそも探索者なんてなってないしね」
「それに、シオンさんは思ってもないと思いますけど、シオンさんは私たちの力になってるんですよ!」
「そんな訳……」
それでも言い淀むシオンに、トドメの一言を放つ。
「あ、リーダーにシオンって書いてるから、拒否権ないよ?」
「!!!!??????」
僕ら4人は言えなかった。
シオンは僕らの力になってくれている。
君の言葉は僕らの原動力になるし、君がいてくれないと僕らはバラバラになっていた。
覚えてないだろうし、シオンとしても無自覚にしていた行動だったと思うし。
だからこそ、シオンはパーティーになくてはならない存在だ。
勝手にパーティリーダーにシオンの名前を書いたけど、3人も賛成してくれたため、シオンは僕らのリーダーになった。
勝手に書いたことにシオンは怒ってるかもしれないし、不思議に思ってるかもしれない。
本当の理由を告げてないからだ。
ま、理由はまだ本人には言えないけどね。
シオンの力を世界が知ったら、僕ら4人よりもシオンを欲しがると思うから。
ニュースでの失言で、シオンの存在が明るみに出そうになってるんだよなぁ。
反省しないといけないけど、誰かが口を滑らしそうな気がするんだよな……。




