【白夜】結成秘話
これはいつからの夢だったのか、僕はもう覚えてない。
確かなことは、
『僕たち5人で世界に名を轟かせる探索者になる!』
ということだった。
簡単なことでないことぐらい、理解している。
ただ、今考えれば期限を設けていなかったことは良かったんだろうとは思う。
最初は「僕だけでも探索者になる」ということを目指していたが、みんな一緒にいるうちに、
「じゃあ5人で最強を目指す!」
ということに変わっていった。
探索者になること自体は、ダンジョンに潜る者たちのことを総称して定められているため、ダンジョンに入る資格さえあれば、探索者を名乗ることが出来る。
中学生にあがってみんなでダンジョンに潜る資格を得ることができ、晴れて探索者となった。
ダンジョンに潜りはじめて、徐々に僕と4人に圧倒的な差が現れ始めた。
各々が探索の才能に気づき、レベル1ダンジョンのモンスターに対して、
1人は素手で、
1人は魔法で、
1人は神速の抜刀術で、
1人は指を鳴らして。
蹴散らして行った。
それを見た僕の気分は真っ暗だった。
僕だけが戦闘において、なんの才能もなかった。
かと言って、探索者として補助するような力もなかった。
スライムに遭遇すれば食べられそうになったし。
ゴブリンには舐められ、ゴブリンが持つ棍棒も地面に置かれて、素手でボコボコにされそうになったし………
1人で探索に行こうものなら、道に迷うし。
魔法なんて使えないし。
気づけば、ダンジョンで死亡者がいないとまで言われたレベル1ダンジョンの、唯一の死亡者になりかけた。
そんなことが続けば、僕の心はボロボロになった。
だから僕は親友達に言った。
「僕にはみんなみたいな才能はないみたい。だから探索者の夢はみんなに頑張って……」
涙がボロボロとこぼれ落ち、僕のセリフは最後まで言えなかった。
そんな僕に、みんなは言った。
「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」
そうタケルは言った。
「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」
そうユイは言った。
「シオンがいないと僕達も寂しいよ」
そうナツは言った。
「あなたが諦めるなんて言わないで。これは私たちの夢なのよ!」
みんなは笑って言ってくれた。
励ましてくれた。
勇気を与えてくれた。
なにより、僕は見捨てられてなかった。
そう思えると、自分の心が救われた気持ちになった。
これまで、5人の中でいちばん弱い僕なんて……探索者に向かない僕なんて……っていう暗い気持ちになることが多かった。
だからこそ、みんなの一言に、僕は安堵することが出来た。
ボロボロと今度は嬉し涙を流す僕に、ナツが言った。
「そこで僕からの提案があるんだけど」
「なんだ?」
「シオンはリーダーやればいいと思うんだ」
「「「賛成」」」
「えっ……?」
涙が引っ込んだ。
「っていうか、実際シオンはリーダーなんだよね」
「えっ……?」
頭の中に疑問符が浮かんだ。
「あっ、そういやダンジョンに入る時の手続きにパーティー申請の欄があったわね」
「??」
「シオンさんに内緒でナツさんが書きましたもんね」
なにそれ……知らないんだけど。
「そういやそんなことあったな。すっかり忘れてたわ!!」
「えっ、でも、僕よりナツの方が……」
「僕らの4人をまとめるのは、やっぱりシオンしかいないって思ってね。拒否権はないから頼まれてくれないかな?」
「俺からも頼む」
「まさか断るなんて言わないわよね。まあ、書いちゃってるから、断ることも出来ないんだけど」
「いやなんて言いませんよね」
みんなのキラキラとした視線が僕に刺さる。
というか笑顔なのに圧が凄い……。
この時の僕は、このままの関係でいられるなら!!!
「分かった……リーダーやるよ」
こうして、探索者資格を取得して数ヶ月で、僕は中学生パーティー【白夜】のリーダーになったのだった。
みんなの無言の圧に負けたからではない……拒否権がないからとか、キラキラした視線に耐えられなかったという訳でもない……
そうと思いたい。
ちなみにだが、高校2年生となった今でも、リーダーになった理由を明確に教えて貰っていない。
それはなんでなん??