エメット
パルルの幼馴染、エメットのお話。
「……パルルが男になったって。」
「は?」
アリシャが言った言葉に、間抜けな声しか出なかった…
****************
王都から東、海の側にある街オリゾンテ
総人口の三分の二程が[ 海の民 ]の一族の街だ。
その一族には絶対的な決まりが一つある。
[ 海の民 ]の特徴が現れた赤子は、大人になるまでオリゾンテで暮らす。
その決まりに従い、赤子を連れて家族ごと移住や、一族が管理する施設[ クラム ]に赤子を預けて定期的に会いに来る等…様々な形でオリゾンテに集まって来る。
エメットとパルルは同い年、そしてエメットの(兄・姉)、二つ年上のアリシャ。三人はクラムで暮らしてて、特別仲が良かった。
親同士が懇意にしていたのもあったが…俺たちが物心つく前の二歳の頃、パルルの両親が亡くなって…
俺達の親がパルルの後見人になった。
まぁ、そもそもクラムで暮らしてるから家族みたいな物なのだが……パルルに両親の思い出は、ほぼ無い。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
気付いたら一緒にいるのが当たり前だった……
クラムで…イヤ!街の誰よりパルルは可愛かった。
同じ水色の髪でも、直毛で少し硬い手触りの俺やアリシャと違って、ほんの少しウェーブのかかった髪はフワフワで柔らかい。
同じ青い瞳なのに、パルルは真珠の様な光り方をしてる気がする…
ずっと見ていたい…と思った。
そうして、一番近くに居る俺だけが気付く違和感
パルルは何かが違う……
言葉にする事が出来ない何か……
でも、その何かは俺にとって、どーでも良かった。
その違いが、好きな理由にも嫌いな理由にもならなかった。
クラムには大勢の子供がいるので
たまに、居心地の良い三人の中に割り込んで来る奴がいる。
そいつは俺が一人の時に話しかけてきた。
「パルルばっかりじゃなくて私と遊んでよ!」
俺はその時、パルルの違和感が何なのか気付いた……
[ 海の民 ]の子供には性別がない。
でも、ある程度成長すると、意識する性別という物が出て来る……男らしい…女らしい…と言った行動や仕草だ。
例えば、俺は多分男になる…アリシャは女に、話しかけて来たコイツも私と言ってるから女になりそうだ……
だけど、パルルにはそれが無い…あんなに可愛いのに…女を感じない…勿論、男も感じない……完全な中性。
『何で?』
俺は焦った……パルルは、この前習った例外かも?…無性別のままかも?
『あっ…俺…パルルが好きなんだ…』
齢八歳。恋を自覚した!そして号泣した!!
『パルルが例外だったら…結婚出来ない!』
「うわあああーん」
大量の大粒真珠が床に落ちる。
「!!えっ?!あ?!…えっと…何で?えっと…ご…ごめん…?」
話しかけて来たヤツは割と良いヤツだった。
こいつのせいじゃないのに、謝ってきた。
名前も知らないケド…
俺はそれどころじゃ無くて号泣が止まらない!
そんな俺を心配して、そいつは大人を呼んでくれた……本当に良いヤツだ。顔も覚えてなくてごめん。
駆け付けて来た室母や先生に宥められても
「パルルが例外だったらどーしよー!!!」
と、泣きながら叫んでいた。
バラバラと落ちる真珠の音がうるさいケドどーでもいい…
余りの取り乱し様に、施設長まで出てきて。
「例外かどうかは調べられるんだ。ここに来た赤子の時に検査済みだよ。パルルは例外じゃないねぇ」
それを聞いて、やっと俺の涙は止まった。
パルルは例外じゃなかった。
でも俺と結婚する為には女になって貰わなきゃ!
(まだ自分の性別も決まってないのに)
『パルルを女の子っぽくしよう!』
八歳の子供の考えは単純だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「パルル〜…パルルは僕呼びより私って言った方が良いと思う…」
「?…そぅ?」
「うん。」
「じゃぁ、そうする♪」
俺はホッとした。
「アリシャ!!。パルルって、もっとカワイイ格好したらいいと思うんだ!」
そう言ってアリシャとパルルの服選びをして
「リボンいっぱいで邪魔〜」
嫌がるパルルに落ち込んだ…
「シンプルなのが好きなんじゃない?スカートとかワンピースを嫌がってる訳じゃないよ…」
とアリシャに慰められる。
「アリシャ!女の子っぽい遊びにパルルを誘ってやってよ!」
アリシャが刺繍の会やお菓子作りにパルルを連れてってくれた。
「凄いのよパルルって♪ 何をやっても上手に出来るの!なんか…職人気質?」
なんか違う……
俺と外遊びする時は、パルルをお姫様みたいに扱った!
「パルル♡転んだら大変だから、手を繋ごう!」
「うん♪」
「パルル♡あの木の実食べる?俺とって来るよ♡」
「ありがとー♪」
「パルル♡釣りしよー♪俺が準備してやるからー♡」
「やるー♪」
でも、俺は知ってる。
パルルは駆けっこも早いし、身軽で木登りも出来る。器用だから釣り餌も上手に付けられるし、釣りが上手い。
外遊びで夕方まで外にいた時…
「パルル♡疲れた?おんぶしようか?」
「…うん」
パルルが眠そうだったから、おんぶした。
俺は急に背が伸びて…もぉ直ぐ十歳って頃には、十二歳のアリシャと双子かと思われる体格だった。
背負ったパルルは軽くて小さかった。
『俺はパルルの騎士になりたい…』
俺とアリシャの両親は王都に居て、父さんは騎士団に入ってる。母さんは魔法省で魔道具の開発をしてる。
俺は、母さんを大事にしてる父さんが大好きで、強い父さんに憧れてた。父さんみたいな騎士になりたかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
十歳の誕生日を過ぎて少し…俺の性別は男に決まった。
不思議な感覚だった…
箱を開けるみたいに魔力が溢れて、体が白く光ったかと思ったら…下半身に窮屈さを感じた。男になっていた。
『生えてる……これ本当に父さんみたいになるのかよ?』
真面目に思った…
「何であんたが先に決まるのよー?」
そう叫んだアリシャの性別が決まったのは、それから一月後。
俺はアリシャを「姉ちゃん」と呼ぶことにした。
『後はパルルが女になれば…』
「パルルは女になれよ♪ んで、俺と結婚しよう♡」
「そーだねぇ♪」
パルルも、俺やアリシャ位の体格になったら、性別が決まるのだろう…
『姉ちゃんと同じ十二歳くらいかな?』
と思っていたのに。
パルルは、それから二年経っても十歳のままだった………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「パルルは、特例だそうだ…」
父さんが言った…
月に一回くらいしか来られない両親が、パルルだけを連れて、施設長と面談して来た。
「特例?」
「さっき、施設長に教えて貰ったの。」
淡々とそう言うパルル。
「十歳の身長のまま、二年過ぎたから…確定だろうって…」
『特例……特例…前に習った!
子供のまま…性別が決まらない…寿命で死ぬときまで子供のままかもしれない…一生オリゾンテから出られない…』
一瞬、目の前が真っ暗になった…
「えっ!そーなの?…じゃぁ、パルルは性別が決まるまで十歳のままって事?」
「そーみたい。」
『!!!そーだ!決まれば良いんだ!」
「そのうち決まるよ♪ んで、凄ぇ美人になるって♪」
俺は努めて明るく…そう言った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さらに四年経っても、パルルは十歳のまま……
俺は正直、辛かった…
どーしたらパルルは成長するんだろう
どーしたら女になるんだろう
当のパルルは何も気にしていなかった…
揶揄われた事もあったけど、
本人は
「そう言うタイプなんだから仕方ない。」
本当に、何も気にしていなかった…
(揶揄った奴らは俺がボコッたけど。)
パルルは性別にも成長にも興味がない……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アリシャと一緒に居られるのも、あと半年だね…」
十八歳になったアリシャは魔術師団に入隊するため半年後に王都に行き、両親と暮らす。
「そーだな。王都で良い結婚相手でも見つかれば良いな♪」
アリシャは結構な美人なのに、オリゾンテでは恋人が出来る様な出会いが無かった。
「恋人が出来たら、結婚するまでキスしちゃダメだよ!って言っとかなくちゃね!子供が出来たら大変だもん。」
「………は?」
「だから子供。タイミングが良い時にキスをすると、子供が出来ちゃうでしょ。」
「〜〜〜〜〜〜!」
俺は蒼ざめた!
慌ててパルルを連れてアリシャに会いに行く!
「姉ちゃん!。パルルに閨教育してくれ!!」
見た目十歳のパルルに、中身は十六歳なのだから!と、性知識の必要性を訴えて。
それをキッカケに、性別に興味を示してくれないかと期待したが……
ダメだった……
勉強が得意だったパルルには、性教育も勉強でしかなかった…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二年経ち…十八歳になった俺は、騎士団に入る為に王都に行く。
オリゾンテの護衛団に入る為には、王都の騎士団での経験が必須だからだ。
この頃の俺は、パルルが成長しなくても良いと思う様になっていた…
『パルルが女にならなくても、パルルを守る騎士にはなれる…」
パルルが街から出られないなら…
ずっと一緒にいる為に、俺がオリゾンテで護衛団の仕事に就けば良い。
五年…王都の騎士団で経験を積めば、オリゾンテに戻れる。
「パルル♡なるべく会いに来るからな!」
「分かった♪ お土産楽しみにしてる♪アリシャや、おじさんとおばさんによろしく伝えてね♪」
ニッコリ笑うパルルは本当に可愛い♡
でも、笑顔のパルルの目から涙が一雫…真珠に変わって落ちた。
「あれ?」
「パルル?!」
しゃがんでパルルと目線を合わせる……
「…大丈夫か?…寂しい?」
「………うん……そーかも……でも大丈夫♪」
また、ニコッと笑ったパルルをそっと抱きしめる…
「また直ぐ、会えるから…」
この笑顔を側でずっと見る為に、五年間…頑張らねば!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
王都の騎士団で修練を積む日々を過ごして四年…
アリシャが結婚する事になった。
父さんは今、騎士団・第二部隊の副団長を務めている。
その父さんの部下…レイルと言う、アリシャより三つ年上、二十七歳の人と二年程付き合って…めでたく結婚となった。
父さんが一目置く、将来有望で頼もしい人だ。
黒髪・紫眼の普通の人だが、[ 海の民 ]の事情も理解してくれてて。
『姉ちゃん…本当に幸せそうだ。』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして家族会議が開かれた。
「姉ちゃんの結婚式にパルルも呼ぶべきだ!」
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
父さんが唸ってる…
結婚式は王都で行われる事になった。
それは仕方ない…
レイルの家族は王都に居るし、アリシャやレイルの友達や仕事仲間も殆どが王都に居る。
そして、オリゾンテからもアリシャの友達は来る。
なのにパルルだけ出ないなんて絶対ダメだ!
だってパルルは、俺とアリシャの幼馴染で家族なんだ!!!
「護衛をつければオリゾンテから出ても良いはずだろー?」
「………手続きを踏むのが大変なん」
「踏んでよ!!!!!」
アリシャが食い気味にそう言って、立ち上がる!
レイルは怪訝な顔で
「渋るのは何か別の事情があるんですか?」
「ハァ……第三王子が[ 海の民 ]の特例に興味を持っちゃったのよ…」
と母さんが溜め息をついて答えてくれた。
「!!!ハァッ?!なんで!!!!!」
思わず椅子を倒すほどの勢いで立ち上がってしまった。
「…いったい何処から聞き付けたのか…[ 海の民 ]で十二年間、子供の姿のままの者が居ると……」
父さんが眉間に皺を寄せながら腕組みして言う。
『あの魔術オタクのイカレ王子が……』
第三王子、ソール・ディアマント
王都[ ディアマント ]の王族、末の王子。
この前、二十歳の祝祭があった…
「……好奇心旺盛な方ですからねぇ……」
レイルも溜息を着いた。
「パルルが来るって知ったら、確実に結婚式か披露宴に押しかけて来るだろうな……」
父さんが天を仰ぎ出した…
「で…でも、別にパルルに危害を加えたりなんて、しないでしょう?…仮にも一国の王子なんだし……」
姉ちゃんが困った顔で父さんに聞く。
「…勿論そーだと思うが…」
レイルが姉ちゃんを椅子に座るよう促しながら
「何度か護衛に着いた事がありますが、無体をなさる方では無いですよ。人の話もちゃんと聴く方ですし…」
「単純に見た目が十歳の二十二歳は、どんな思考なのか知りたいのかもねぇ…パルルと話せれば、気が済む程度の興味かもしれないわ。」
母さんが頬に手を当てながら困った顔で小首を傾げる。
「しかし…そうだな…パルルが参列しないのはあり得ないな。パルルにソール殿下の接触は確定と踏まえて、幾つか対策を立てて置こう。場合によっては陛下から殿下に牽制して頂く様、騎士団長にも相談する。」
「よっし!!!」
俺は両拳を強く握った。
一抹の不安はあるが…
半年後の結婚式に、パルルを王都に呼べる事になった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
結婚式の五日前…
オリゾンテにパルルを迎えに行く。
他の親戚や友人は既に王都に行っている。
あまり大人数だと隙が出来てしまうので…護衛とパルルのみでの移動に決まった。
パルルに就く護衛は、俺を含めて騎士団から三人。
一人は、濃紺の髪・黒目のソキウス。二人の娘を持つ三六歳
もぉ一人は、薄い茶の髪・灰色の目のザミール。一昨年結婚したばかりの二八歳、奥さんが妊娠中。
旅の間…ザミールはソキウスに、子育てについて質問しまくっていた。
俺達は、王都からオリゾンテまで[ 接木の門 ]を使い…幾つかの街を跨ぎ。途中の[ ビシクレータ ]と言う街で一泊
翌日の今日、オリゾンテに到着した。
ここまでの旅程を遡る様に辿って、パルルを王都まで連れて行く。
「エメット〜〜〜♪」
「パルル♡」
オリゾンテの[ 接木の門 ]の前で待っていたパルルが走り寄って来た♡
「迎えに来たよ♪」
俺は当たり前の様に抱き上げる♡
「おおー♪この子がパルルちゃんか。エメットの言ってた通り、物凄く可愛いなぁ〜」
「本当ですね!あー…女の子も良いなぁ♡」
後から近づく二人を見て、パルルは俺の耳元で
「(特例の事)知らない?」
と、小声で尋ねた。
俺はコクコクと小さく頷く…
(二人はパルルを十歳の子供だと思ってる。)
「初めまして♪パルルです♪」
パルルは無邪気な笑顔で挨拶した。
「初めまして。おじさんはソキウス。こっちはザミールって名前だよ。」
「初めまして♪パルルちゃん♪」
軽く挨拶を済ませて…
「じゃあ、ゲートが開いてるうちに折り返しましょう。それじゃ、マトカさん行って来ます♪」
パルルを見送りに来ていた、寮母に挨拶して。
オリゾンテを出発した。
パルルの安全の為になるべく早く王都に着きたい。
でも初めて街の外に出るのだから…出来る限り、色々な物を見せてやりたい!
オリゾンテは大きな街で、王都並みに色々揃ってるし…街並みも立派だ。
周りの自然も豊かだし…海も川も、小さいけど山もある。
オリゾンテにない物を調べた結果…
[ ビシクレータ ]には大きな滝があるらしい!
一泊する街、ビシクレータに着いたのは昼過ぎ……少し観光する時間が出来た♪
「うわあぁー♪ 凄いー!」
大滝は街に程近い所にあったので、時間的にも体力的にも負担なく、皆んなで見に行けた。
「おーーー!これは壮観だなぁ!」
「本当ですね!ビシクレータの名所らしいですよ♪ 知らなかったなぁ」
俺はパルルを抱き上げて
「凄いな!ほら!下の方…虹が出てるぞ!」
「凄いね!綺麗〜♪」
青い瞳を丸く見開くパルル
「一緒に見られて良かったなぁ♪」
「うん♪」
この笑顔をずっと見ていたい…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ビシクレータの宿屋…二人部屋をニ部屋取って、俺とパルルが相部屋だ。
「ハァ……パルルに…渡す物があるんだ。」
俺は渋々、懐から手紙を出す…
「…第三王子からのお茶会の招待状…。」
「第三王子?」
結婚式の準備を進める間…
第三王子がパルルに接触してくるのは確実だろう。ならばやはり先手を打って置こう!と、父さんが騎士団長と共に国王陛下に拝謁して、第三王子に牽制しておいて貰った。「一生に一度の結婚式を邪魔するな!」って事だ!
そしたら、正式にお茶会の招待状が来た…
『クソッ!』
明後日の午後…結婚式の前日だ。
「姉ちゃん達は勿論無理!父さん達も時間が捻出出来なかった……俺とパルル、二人で伺う事になったよ。」
パルルの貴重な滞在期間の半日を取られた…
「[ 海の民 ]の特例に興味があるらしい…何処かで聞きつけたんだよ。パルルの成長が止まって十二年経ってるって…」
「ふぅん…まぁお話しするくらい良いよ。」
パルルが部屋のソファに座って、お茶を啜っている。
「…………うん…多分、変な事はされないよ……一応、王子だし…暴君ではないから。」
俺は頭をガシガシ掻きながら言った…
「困った人なの?」
パルルは可愛く小首を傾げる。
「う〜〜〜〜ん…なんて言うか…悪い方では無いんだよ…悪気はないんだと思う…悪気は!
頭がめちゃめちゃ良いらしい…剣も武術も勉学も…なんでも出来る天才だって。ただ好奇心が凄くて……希少な魔獣が出たって聞いたらいきなり討伐に出掛けたり……貴重な鉱物が採取されたって聞きつけたら、そこに押しかけたり……珍しい魔術の研究を始めたチームがいたら、混ぜろって言ってきたり……その度にあちこちが振り回されて…騎士団も緊急で出陣したり……一番最悪だったのは隣国と開戦になりかねない問題が起きて…なんとか収まったから良かったけど…流石にその時は殿下も懲りたらしいって話しだけど……」
「困った人なんだね…」
俺の言い振りにパルルは呆れた顔をする。
「そーなんだよ!困った人なんだよ!!」
頭を抱えた。
「まぁ……大丈夫なんじゃない?、なんたって次の日は結婚式で、陛下に結婚式の邪魔をするなって言われてるんでしょ?私に何かあったら自動的に結婚式がダメになっちゃうでしょ?殿下はちゃんと理解してるよ。頭の良い人なんでしょ?」
「………そーだな。」
「王宮のお茶とお菓子、楽しみ♪」
パルルはニコッと笑ってそう言った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日中の三時過ぎ…
王都ディアマントの[ 接木の門 ]の前でアリシャは今か今かと待っている。
「結婚式より待ち遠しい感じで、なんだか妬けるなぁ」
そう言いながらレイルはニコニコしてアリシャを見ている。
「だっ!だってだって!私二年以上、会えてないのよ!通信魔道具で話したりはするけど…あぁ元気かしら…いや、元気なのは分かってるけど…あ〜早く会いたい…」
すると[ 接木の門 ]が光だし…カチャと開錠の音がする。
モヤの様な白い膜が貼った門からエメットが…続いてパルルが出て来た。
「パルル!」
「!アリシャ!!」
アリシャの呼び声に気付いたパルルが駆け出した。
「アリシャーーーー♪」
「きゃ〜〜〜!パルルー♡」
アリシャもパルルに走り寄る
「会いたかったー♡」
アリシャがパルルをぎゅうぎゅうと抱きしめた。
「アリシャ!…くる…しい…」
さらに後から門を潜って来たソキウスとジャミールが
「アリシャさんがこんなに燥ぐなんて…」
「珍しい物を見たな。」
二人は、レイルと同じ父さんの部隊なので、姉ちゃんとも顔見知りだ。
「落ち着けよ姉ちゃん!パルルが苦しがってる!!」
「アリシャ、嬉しいのは分かるけど、パルルちゃんが潰れちゃうよ。それに僕にも挨拶させて欲しいな♪」
レイルの声でやっと腕を緩める。
「あっ!そうね♪ パルル♡。この人が私の旦那様になるレイルよ♪」
「初めまして♪ パルルさん。やっとお会いできました。」
レイルの話し方に、チラリをアリシャを見上げるパルル…
その視線に気付いて、コクリ(知ってる)と頷くアリシャ。
「初めまして♪ お会いできて光栄です♪ 」
パルルはスッと手を差し出して、レイルと握手した。
二人のやり取りをみて、ソキウスとジャミールが
「パルルちゃんって本当にしっかりしてるなぁ!俺の娘達と歳が変わらないのに。」
「オリゾンテって教育レベルが高いんですかね?」
俺は苦笑いして、濁した。
護衛を請け負ってくれた二人とはここでお別れだ…
「んじゃ、パルルちゃん。また明後日の結婚式で会おうな、俺の娘達も連れて行くから、挨拶させてくれ♪」
「俺の奥さんにも合ってね♪ 」
「うん♪」
短い旅だったけど…二人はかなり、パルルと仲良しになった。
なんたってパルルは可愛いからな♡
「さぁ!先ずは屋敷に帰りましょ♪」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷には、父さんと母さんが待ったいた。
これから、母さんとアリシャはパルルのドレス決めだ…
俺と父さんとレイルは、会場整備や警護の打ち合わせ確認に行く。
結婚式は
披露宴を、騎士団所有の敷地にある建物。
集会や決起会…入団式などを行う、大きいホールのある館があるので、そこで行う。
なので、式は披露宴会場から一番近い教会で執り行う。
この半年間は、臨時雇いの使用人・料理人の身元確認に忙しかった。
足りない人手は、王都に屋敷を持つ貴族に打診した。勿論、そちらの身元確認も怠らない!
会場の出来栄えも上々。
教会から披露宴会場までの警護の配備も万全を期している。
レイルは実家の屋敷へ、俺と父さんも自宅屋敷へ帰る。
パルルのドレスは見せてもらえなかった…
「式の日まで内緒よ!」
「ね〜〜〜♪」
家族で食事をして…
パルルとアリシャと俺、久しぶりの三人で過ごす夜……真夜中まで、思い出話は尽きなかった。
明日は第三王子とのお茶会だ……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
もぉ直ぐ朝の十時…
俺とパルルは、王宮に来ている。
招かれたのは午前のお茶会で、場所は西の宮殿…第三王子ソールの宮だ。
パルルは王宮に招かれるのに相応しい様、子供サイズのドレスを来ている。これも昨日買い付けた。
黄色味の強いクリーム色のデイドレス……俺も騎士服ではなく、濃紺のモーニングコートでの参加だ。
案内されたのは庭園の大きなガゼボ
ガゼボの中央には丸テーブルと三脚の椅子。
ガゼボに作り付けられているベンチにパルルを座らせて、俺は立ったまま、王子の到着を待つ。
程なく従者二人を連れて第三王子が現れた。従者の一人は[ 海の民 ]一族だ
黄金の様な濃い色の金髪に…王族特有の金の瞳。切れ長の目の端正な美形だ…
白のモーニングコートを完璧に着こなして。 魔術オタクのイカレ王子さは、かけらも感じさせない。
「やぁ♪。エメットとパルルだね。今日は来てくれてありがとう♪ とてもとても楽しみにしていたんだよ♡」
「お招き頂き、ありがとうございます。エメットです。」
パルルはベンチから降りて、侍女の様なお辞儀をした。
女子ならカーテシーだろうけど…パルルはどちらでも無いし、王子がパルルは性別が無いと言う事を当然理解してる筈……だからこその、このお茶会なのだから…
「パルルです。お招きありがとうございます。」
「うん♪。聞いた話しよりも、ずっと可愛らしいね♪。さぁ、座ってくれ♪」
俺たちの挨拶にコクリと頷いた王子は、着席を促す。
俺より二つ年下なのに威厳が凄い…さすが王族。
侍女たちがお茶やお菓子を並べ始めた。
「先ずはエメット、お姉さんの結婚おめでとう♪ 」
「祝いのお言葉。ありがとうございます。姉にも伝えさせて頂きます。」
「パルルは一昨日にこちらに着いたのだろう?疲れてはいないかい?」
「はい♪大丈夫です。」
そんなやり取りが終わる頃、配膳が終わった侍女達がガゼボが出て、少し離れた場所に待機する。
ガゼボの中は俺とパルル、王子とその従者が一人…もお一人の従者はガゼボの外、直ぐの場所に背を向けて立っている。
王子が指をパチンと鳴らすとガゼボ全体に防音の魔法障壁が張られた。
外の従者の背中にピッタリ沿うように…
『凄え…』
防音だけの障壁…出入りは出来るが、中の音は一切漏れない。唇が読まれない様になのか?装飾ガラスの様にキラキラとしていて、外がはっきり見えない…
「これで誰にも聞かれない♪ あぁ、僕の従者は何を聞かれても大丈夫だからね。」
ニッコリ笑って紅茶を飲んだ…
「二人共、甘い物は好きかな? 。オリゾンテには無さそうな物を用意させたんだけど、是非食べてみてくれ。」
「はい♪ 頂きます。」
「お気遣いありがとうございます。頂きます。」
幾つか菓子を摘み…紅茶を飲むと、王子が話し始めた。
「王宮の図書室には色々な本があるんだ…本当にあるのか判らない場所の事を書いた本とか…希少な生き物に関しての記録。今、使われてる魔法とは異なる仕様の魔法の記録…昔に滅んだ一族の記録とか…今尚続く一族の記録。僕はその殆どを読んでしまってね。」
やはりこの人は天才なんだな…と思う話しだ。
「君たち[ 海の民 ]の一族の事は前から知ってたけど、図書室でその歴史の本を見つけてね。特性に付いての詳しい資料と記録が載っていた。」
『!』
「何故その様な特性なのか?伝承や、どの様な事例があり、変化に関する可能性の憶測…希望的観測とでも言う様な事もあった。本当に色々書いてあった…その代の記録者の願望が殴り書きされてたりね…読み応えがあったよ。」
『可能性?!パルルが大人になる為の方法がある?!』
俺は膝に置いた手を握りしめた。
「その本は私も読みました。」
咀嚼したお菓子を飲み込んでからパルルはそう言った……
『?!』
俺は隣に座るパルルを見た。
「へぇ〜!そうなのかい!!」
王子の瞳により一層の興味が光る…
「はい。オリゾンテの図書館にある本は殆ど読んだと思います。」
「僕と一緒だねぇ♪ 」
王子が前のめりの姿勢になる。
「それで君はどの様に思った?」
「…………昔は酷い事もあったのだな…と、」
『酷い事?』
俺はパルルをじっと見る…と、目が合った。
「パルル?」
パルルは困った様な笑顔で肩を竦めた。
王子が俺とパルルを交互に見て
「………エメット、済まないが少しパルルと二人だけで話しをしたいのだが…席を外して貰えるか? 」
「え?!…ですが………」
突然の退席要求に狼狽える…
「あまり時間は取らせないよ。僕もこの後、約束があるからね。君は後でパルルに[ 海の民 ]の話しを聞くと良いよ。」
会話について来れないなら出てろって事だ……
「……畏まりました。外の従者の方の側で…待たせて頂きます。」
そう言って立ち上がる。
「パルル……外で待ってる。」
「うん♪」
いつもの変わらない笑顔で返してくれた。
飾りガラスの様な障壁は、何の抵抗感も無く、俺を通した。
従者の隣に、俺も障壁に背を向けて立つ…
二十〜三十分程経った時、障壁が消えた。
振り向くと、王子がパルルを抱き上げてこちらに来る!
『!!!何で?』
「とても有意義だった♪♪♪ 。今度オリゾンテにも寄らせてもらうよ♪ 」
王子は物凄くご満悦で、パルルを抱き上げたまま俺の方まで来た。
「エメット♪ 。お待たせ〜♪」
パルルが俺の方に手を伸ばしたので、王子から直接パルルを受け渡される形になった。
「ソール様と友達になったよ♪。」
「ふぇ?」
変な声が出てしまった!
隣の従者も驚いた顔をしている。
「エメットとも今度ゆっくり話がしたいね。」
ニッコリ笑った王子の笑顔は最初より柔らかい気がする…
思わず頬が紅潮した。
「それじゃぁパルル。王都を楽しんで♪」
王子はパルルの頭を撫でてから、
「今日は来てくれてありがとう。時間を取らせて悪かったね。」
と、俺に向かって言って…
「名残惜しいが、明日の事もあるのだろう?今日はこれでお開きとしよう。気を付けて帰りなさい。」
「はい。本日はお招き頂き、ありがとうございました。」
パルルを降ろし忘れて、そのまま挨拶してしまった。
「ソール様。また、お会いしましょうね♪ 。」
「楽しみにしているよ♪。」
王子はそう言って手を振り、従者を引き連れて帰って行った…
「エメット、もぉ降ろしてくれていいよ?」
小首を傾げてパルルが言う…
「あっ…ああ。」
そっとパルルを降ろすと…
「美味しいお茶とお菓子♪♡ありがとうございました♪」
と、侍女達に愛らしく挨拶して、手を振る。反対の手は俺と繋いで歩き出し、一度宮殿の中に入り、玄関ホールへと向かう。
「王子と何を話したか聞いていい?」
歩きながらパルルに尋ねる。
「う〜ん…大した事は話してないよ?。王子本人の事や、オリゾンテでの暮らしの事……んで、安全を確約するから、この宮殿で暮らさないか…とか。」
「!なんっ!!………ハァッ?!」
「断ったよ。」
「……そうか。」
俺はあからさまにホッとした。
「[ 海の民 ]の事は馬車の中で話すね♪」
「……うん。」
そこまで話して、俺は前から来る人物に気付いた。
「パルル、壁に寄って…頭を下げるよ。」
と小声で知らせる。
パルルも気付いて小さく頷く…
俺たちは壁に寄って、軽くお辞儀したまま止まる。
侍女を一人連れて、俺達の前を通るのは…
ふわりとた白金の髪に、翠の瞳で少し垂れ目で甘い顔立ち。
第三王子の婚約者。ルフレ・リュウール侯爵令嬢だ。
『この後約束がある』と言っていたのは彼女の事だろう…と思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宮殿を出て、馬車に乗る。
俺とパルルは向かい合わせに座った……
「パルル…」
「[海の民 ]の一族の話しだね。」
「うん。」
「うーん…先ずはねぇ〜[海の民]は性別の無い状態で産まれるじゃない?。でも、実際は雌雄同体なの。」
「雌雄同体…」
「男女両方の性別が体の中にある…それが魔力と一緒に隠れている状態なの。
そして、思春期の頃にどちらかの性別と一緒に魔力が現れる。」
俺はポカンと口を開けた。
「なんで思春期だと思う?」
「え?…なんで……?」
『思春期の頃に性別が決まるのは当たり前で何故かは考えたことが無かった……だって当たり前だったから……』
「異性を意識する年齢…恋による感情の昂り。そしてなにより、好きになった相手を守りたいと言う想い。[ 海の民 ]が得意とする結界・防御魔法の影響も大きいみたい…明確にキッカケを探り当てるのは難しいんだって…母性や父性も絡んで来るから。総合的に庇護対象に合わせて性別を選んでいると記録には書いてあった。」
「………」
ただ、そう言うものと思っていた[ 海の民 ]の性別・成長について、根拠があった。
俺が理解するのを、パルルはジッと見て待ってる。
ちょっとしてから、理解が追いついたと判断したのか…再び話し始めた。
「ここまでが前提にあって…次は私…特例についてね。」
パルルは自身の胸に手を当てて言う。
「思春期で成長が止まり、性別が決まらない。…このタイプは性別が決まると急成長して、膨大な魔力が発現する…って言われてるのは知ってるよね?」
「勿論!」
『俺はそれを待っている…』
「性別が決まると膨大な魔力が発現するんじゃなくて、膨大な魔力があるから性別が決まらないのよ。」
「えっ……」
「 [ 海の民 ]の一族は結界・防御魔法を得意としてるでしょ…つまり私達の魔力の根幹は守る事
特例は強い魔力が守りの壁となって、感情にも壁を作ってしまっていると推測されている。
記録には特例は、子供の時は冷めた性格の傾向があるって書いてあった…
…自覚はある。人より何事にも興味が薄い気がするって……私は思春期の感情の昂ぶりが薄い……そんな薄い昂ぶりじゃ足りない。魔法の壁を壊す程の感情の揺さぶりが無ければ成長する事はない。」
「そっ……か…うん…覚悟はしてたかな…理解した。」
「ごめんね…大人になれなくて…」
「気にすんな。……俺は…パルルが子供のままでも、もしも成長したとして…それが女じゃなくても、お前の笑顔が見られればそれでいいんだよ♪。」
パルルが目を見開いてから、ゆっくり笑顔になる。
「ありがとう…エメット。」
『うん♪。この笑顔をずっと見ていたい…』
「ん?…そー言えば…酷い事てのは?」
「あぁ…それね。……歴史の話しになるんだけどね……今の王族が王権を手にする前の王族の頃の話しになるんだけど。
…その王族がイカれててさ!特性のある一族や部族の能力を、より活用する為に…捕獲して研究・実験してたんだって……そのせいで滅んだ一族も沢山あったんだってさ……
「けっ…研究?!実験???!」
「そっ……生きたまま解剖しちゃうようなヤバイやつ!…勿論[ 海の民 ]なんて格好の的!!」
パルルはビシッと一本指を立てる。
「昔は特例が沢山居たんだけど、その特例を成長させる為に色々したんだよ。感情を動かす為に痛みや恐怖を与えた……拷問や…目の前で家族を殺したり……まぁ記録には全部失敗って書いてあったけどね。」
俺は青ざめた……
その時代にパルルが産まれてたら、どんな酷い目に遭わされたのかと思うと…吐き気がした……
「今の王族も狙われた一族だったんだよ。
金の目の一族は体の中に金塊があるって…子供が沢山攫われて殺されたって……馬鹿だよね!金の目の一族の強さを舐めてた。魔力の多さに魔術のセンス。戦闘能力も群を抜いてて……本質は温厚だから、自分からは仕掛けないだけなのに…子供を攫うなんてさ……報復に国を征服して王権を奪って。今の国を作った。」
「そーなんだ……」
「いい国を作ってくれたよね♡」
「本当にな……仕えるに相応しいよ。」
「そー言えば、例外は?例外にも何かあんのか?」
「うん。例外はね…本当にその名の通り例外なんだよ。私達みたいに雌雄同体じゃなくて、本当に性別の無い状態なの。だから性別が現れないし、魔力も無い。
でも例外の涙の真珠にはね、魔力が含まれてるの。それもかなりの強さの!」
「!?…マジで?!……えっ?これ…外に知られたら駄目なやつじゃないか?……」
「うん!絶対内緒のやつ!」
そう言って人差し指を口に当てるパルル。
「まぁ…今、例外は居ないから関係ないけどね♪」
「あっ…そっか。」
そうして馬車は屋敷に着いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
結婚式に相応しい天気だった♪
やっと見られたパルルのドレス♡
昨日のクリーム色のデイドレスより。華やかで可愛らしい。薄桃色のワンピースドレスだ♡
「パルルー♡めちゃめちゃ可愛いなー♡」
「ありがとー♪エメットもめちゃめちゃ格好良い♪♪♪」
俺は式典用の儀礼服を着ている。
朝早くから、教会に併設された建物の中で各々着替え。
パルルの着替えには女性騎士に着いて貰った。そして今、待合室にいる。
教会の周りも中も警備の人間を多く配備したし。
何より、父さんとレイルの友人や知人関係は殆どが騎士だ。
防犯面でこんなに心強い状況はない!
親戚や友人は既に教会に着席していて。
待合室には、レイルと両家の家族が揃っている…
「そろそろ時間だな。」
父さんはそう言って、アリシャを迎えに行く。
レイルは両家族を引き連れて、教会の式場に入った…家族は席に着き。レイルは神父の前に立ってアリシャを待っている。
扉が開き…父さんがアリシャをエスコートして歩いて来る。
扉からゆっくり歩く二人…アリシャの花嫁姿は本当に美しい。
レイルに引き渡されたアリシャの顔は世界で一番の幸せな笑顔だった。
オリゾンテで、いつも三人で過ごしてきた…
大切な家族のアリシャの新たな門出を、パルルと一緒に見送れて良かった…
『やべぇ!泣きそう……』
式は恙無く終わった。
母さんの足元には真珠が散らばっていた。
父さんはいくつか真珠を握っていた。
『…キャッチしたんだ…』
招待客の友人や親戚は、先に披露宴会場のある騎士団の敷地に移動してもらい。
両家両親もそちらを持て成す為に先に出る。
花嫁と花婿は衣装替えしてからの移動になるので、俺とパルルは二人と一緒に行く事にして…
今は四人で馬車に乗っている。
衣装替えした二人は、薄紫をベースにした揃いの衣装を着ている。
衣装替えしたアリシャも本当に綺麗だ。
「アリシャ♡とっても綺麗だよ♪」
パルルがニコニコして言う。
「二人が並んでると絵になるよなー♪」
と褒めると、アリシャが俺の膝をバシバシ叩いて
「やだ♡もぉ〜〜♡」
「痛い痛い痛い!」
アリシャは嬉しくなると力の加減が下手だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
披露宴会場に到着し…
新しく夫婦になった、レイルとアリシャが挨拶をして。宴会が始まった……
「エメット、パルルちゃん。本日はおめでとう。」
「ソキウスさん。ありがとうございます。」
ソキウスは、奥さんと二人の娘さんを連れて参列してくれた。
「やぁ♪パルルちゃん。今日は素敵にして貰ったんだねぇ。可愛いよ。…そうだ!娘達を紹介させてくれ♪。」
そう言って、ソキウスの後ろに隠れている十二歳と八歳の娘さんを前に勧める。
「上の子がフロル、下の子がフィオーレだ。」
「「初めまして。」」
ソキウスと同じ 、濃紺の髪の可愛らしい娘さん達だ。
「俺はエメット。この子はパルルだよ。お父さんには、お世話になってるんだ。よろしくね♪」
「よろしくね♪。」
パルルも笑顔で挨拶をした。
二人は俺とパルルをポーッと頬を染めて見ている。
『うんうん♪子供にもパルルの可愛さはわかるよな♪。』
「エメットがカッコよくて見惚れちゃってるね♪」
と、クスクス笑いながらパルルが言った。
「えっ!俺?!」
ビックリしてパルルと二人を交互に見ると、
二人は真っ赤になってモジモジしている…
「はははっ♪今日は正装だから、カッコよく見えるんだよ。」
俺はニカッと笑って答えた。
ソキウス達と別れた後に、ジャミール夫妻が挨拶に来てくれた。
「やあ、二人とも♪。今日はおめでとう。良い式だったね♪。」
「「ありがとうございます。」」
「紹介するね。うちの奥さんのミウィ♡」
妊娠中の奥さんを大事そうに紹介してくれた。少しお腹が目立ってきてる。
「初めまして。妻のミウィです。」
柔らかい笑顔で挨拶してくれた…クリーム色の髪に濃いピンクの瞳の可愛らしい人だ。
「初めまして。ジャミールさんには、いつもお世話になってます。」
「初めまして♪。パルルです。」
「パルルちゃん♪。まぁ♡ジャミールの言った通り。本当に可愛らしい♡」
「な♪。可愛いだろ!」
「えへへ♪。ありがとうございます♡」
パルルが、照れ笑いしながらお礼を言うと
「可愛い〜!女の子も良いわね♡」
「だよな♪。まぁ、どっちでも僕達の子は可愛いよ♡」
うん…イチャイチャし始めた…
ジャミール夫妻と別れて…
パルルがアリシャに呼ばれた。
「パルルー♪。エメット、ちょっとパルル借りるわよ。私の職場の友人を紹介したいの♪。」
レイルの方も騎士団の仲間と話している…
今は各々の知人友人に挨拶回りをしてるようだ。
「分かった。じゃぁパルルは任せる。その間に、俺も騎士団員達のとこに顔出してくるよ。」
俺はレイルのところに合流して…談笑しつつ、パルルとアリシャの方を伺う。
アリシャの友人達と語らう、楽しげな二人を見てほくそ笑む…
『幸せだ…ずっと見ていたい…』
パルルと合流して…
用意してある食事を摘んだり。ダンスを踊ったり。
楽しい時間はどんどん過ぎて行く……
「明日帰らなきゃいけないなんて、残念だなぁ…」
珍しくパルルがボヤいた…
明日は[ 世界樹の門 ]が半年に一度、開く日だ。それを通って、オリゾンテの近くにある[ 世界樹の子木 ]へと、親戚や友人達も一緒に帰る。
オリゾンテの護衛団の人員があちらの門で待っている予定だ。
だから、一緒にいられるのは明日の夕方まで…
「そーだな…楽しかったもんな……もっと、色々見せたかったなぁ」
俺は物凄くしょんぼりと言ってしまった……
「また、今度だね♪」
俺は目を見開いた。
二十二年間で初めて街の外に出たのに…次は一体いつになるのだろう……
でも、この言葉は…パルルが来たいから言ってるのではなく、残念がってる俺を慰める為の言葉だ。
「………そーだな♪」
パルルの頭を撫でながらそう言った。
いつかくる『また、今度』を夢見て……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕方になり
流石に疲れた様子が伺えるパルル……
その時、母さんが近づいてきて。
「アリシャが、お化粧直しした方がいいみたいなの。少し休憩も入れたいから控え室に行くけど、パルルちゃんも一緒に行きましょ。疲れたでしょ…?」
「丁度良かった。休んだ方がいいと思ってたんだ…行く?パルル。」
「うん。」
俺はキョロキョロと周りを見渡す。
「.………女性の護衛が今は休憩中みたいだ…。俺が付いてくよ。控え室の扉の外で待ってるから…」
「あの…すいません。少し宜しいでしょうか?」
使用人が話しかけてきた。
「はい…?。どうかしましたか?」
『臨時雇いの使用人か。』
「何か…急を要する事態が起きた様でして…奥様かエメット様をお呼びするように言われまして……」
「あら…私?」
『急を要する?』
「……俺でも良いなら俺が行くよ。母さんはアリシャに付いてあげて。パルルの事も頼むね。」
侍女に少し待って貰って…
周りを見渡し、壁際に立つ男性の護衛を呼ぶ。
「この子が控え室に行くので護衛をお願いします。男性は中に入れないだろうから…扉の前で待機を。」
「はい。ちゃんと会場まで連れて帰って来ます。」
俺の心配を取り除くように返事をしてくれた。
「じゃぁ…パルル、また後で。」
「うん♪ ちょっと休んでくるね♪。」
パルルは母さんに手を引かれ…護衛を引き連れて、アリシャと合流した。
アリシャの職場の友人も何人か居る…一緒に行くようだ。
俺は、待たせている侍女に向き直って
「で…どちらにですか?」
俺は侍女に連れられて、階段を降り。玄関ホールに来た…
ホールには数人の侍従や使用人が、何やら話している…
すると侍従の一人が
「?!…お前!何でエメット様を呼んできたんだ?!」
「えっ?…だって…侍女の方が、奥様かエメット様を呼んで来て欲しいって…」
「はぁ?どちらもお呼び立てしちゃ駄目だろ!」
「だって!言われたんだもの!」
『……何だ?…行き違いか?』
「何かありましたか?…事情を聞きたいです。」
揉め始めたので、一旦冷静になってもらう為に事情を聞く。
「申し訳ありません…手違いがあったようで。ご来賓の方々がお帰りの際にお渡しするギフトが…本来、玄関ホール側の部屋に運ばれている筈ですのに…見当たらず。只今探しております。……ですが、稀にある問題なので、余程のことがない限り。主催者様やそのご家族に、お伝えはしても…お呼び立てする様な事は無いのです。」
「……成る程……行き違いですね。では、こちらはお任せしま…」
「すいません!あの!お聞きしたいことが!」
侍従達で対応出来そうだと思い、任せて帰ろうかと思ったら…再び声をかけられた。
「ギフトが見つかりました!厨房の搬入口側に届けられてたのですが…ちょっと話が噛み合わなくて…エメット様、確認して頂けますか?」
「?……わかりました。」
厨房に行くと…また、揉めていた…
「あ!。エメット様!…申し訳ありません。確認したい事が!……花屋が来てまして…ギフトに添える為のスワッグを届けに来たと…しかし、こちらはそのような支持をされておりませんので……伝達のミスでしょうか?」
目の前には、困っている侍従と花屋とギフトの配送業者がいる…
「スワッグ?」
尋ねると、花屋が答えてくれた。
「はい。壁掛け用の花束でして…ギフトに添えるので、こちらに届けるようにと…代金も頂いております。」
すると、配送業者が
「あっ!こちらには昨日連絡がありました。スワッグを添える作業が加わったので、玄関ホールではなく、搬入口側に運ぶようにと。」
「?…昨日…」
『アリシャにそんな支持を出す暇は無さそうだったけど…レイルさんかな?」
「分かりました……今はまだギフトにスワッグは添えないで。玄関ホール側に、一室用意があるそうなので…スワッグとギフト、両方共そちらに運んで下さい。僕は家族に確認して来ます。」
そう支持を出して…披露宴会場に戻り、レイルを探した。
『居た!』
騎士団員達と談笑してるのを見つけた。
「レイルさん。すいません…下に花屋が来てるんですが…贈答品の追加ってありましたか?」
「花屋?…いや…僕じゃないよ?アリシャからも何も聞いてないケド……」
「………そうですか……アリシャに直接聞いてみます。……アリシャとパルルと母さんは……まだ戻ってませんね…」
「そうだね……そろそろ終了の時間だし…侍女に見に行って貰おう。」
「じゃぁ、俺は父さんにも贈答品について何か知らないか聞いて来ます。」
「ああ。僕も両親に聞いてくる……そこの君……」
そう言ってレイルは侍女に、控え室の様子を見てくるように指示して。騎士団員に挨拶してから、ご両親の元へ向かった。
程なくして……遠くで悲鳴が聞こえた!
俺は会場の人並みを縫って走り、廊下に飛び出す…レイルはもう先に出ていた。
すぐに父さんも駆け付けて、俺たちに尋ねた。
「何処からだ?」
「わかりません……」
レイルが答えてからすぐ後に
「人が倒れてます!誰かー!」
『!!!控え室!』
俺とレイルが走り出す!
後方からは父さんが支持を出す声が聞こえる…
「騎士団!!事態の把握が済むまで待機!一般の来賓は騎士団の指示に従うように!ソキウス居るか?!」
「はい!」
「後を任せた!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
全速力で控え室に向かう!
廊下の先に控え室の扉が見えた…
さらにその先。廊下の突き当たり右に曲がった奥からも声が聞こえる。
「こっちに護衛が倒れてます!!」
『クソ!!!』
扉が開いている控え室の前に着いた!
「!!!」
「アリシャ!!!」
女性達が倒れている!
レイルは一番奥のソファに倒れているアリシャに駆け寄る。
一番手前の床に倒れてる女性を介抱してるのは、さっき様子見に行かせた侍女だ。
『パルル…パルルが居ない!』
部屋に隈無く目線を向けても、パルルが見当たらない…
『窓が開いている…』
すぐ後から父さんが来て、俺と同時に部屋に入る。
「メイディア!」
父さんは窓際の床に倒れている母さんに駆け寄る!
「外を見て来る!」
俺は二階の窓から外に飛び出した!
地面は芝生。数名の足跡…向かう先を辿る。
すぐに外構にぶつかった。足跡がここまでしかない……越えられない高さの壁……左右どちらにも続いてない足跡……
剣を取り出して、壁にバツ印を刻む。
すぐさま飛び出した窓の下まで戻り、跳躍して窓から中に入る。
中にはアリシャを介抱するレイル…母さんを介抱する父さん…
他の女性達を介抱する侍女・侍従、使用人達
程なくして、医者も駆けつけて来た。
「父さん…パルルが見当たらない。何者かの足跡が外構の所で途絶えてた。俺は廊下で倒れてた護衛を見て来る…」
『クソ!クソ!クソ!!……パルル!!!』
俺は叫び出したいのを、必死に堪える!
パルルが攫われた……………
王族や貴族以外は名字無しって設定で来ましたが…ちょっと、やりづらさを感じてます…でもここまで来たらゴリ押しで♪
○○の一族〜とかの一括りを、名字代わりにさせていただきます。[ 海の民 ]の一族はお金持ちが多いのでしょう。
国の防衛に深く関わってたりで、王家に重宝されてますんで♪




