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崇拝者

俺は神から目を開けることの許可が必要になる。今口を動かしていいのか。体を起こしていいのか。担当さんとイチャイチャしてもいいのか。全て神々の権利である。俺は神の動かすプレイヤー3660機目に他ならないのだ。


もうHP0の俺は目の前の女神を見て癒されていた。


「ジロジロ見んな。そういうのってキモいっていうらしいよ。」


吐いたつばは氷柱のように鋭いが、その目は誰よりも綺麗だった。短い髪が風に吹かれて自然と束になり巻き取られていく。

俺は今までの行為全てを神に懺悔していた。担当さんに緑茶をかけてしまったせいで水の女神を崇められない。神は忿怒している。


「神よ今日は雨が降って、みこのシャツが透けますように。あ、後風も強めにしてくれるといいと思いますよ。スカー‥」


「おい何言ってんじゃこらあああ」


顔面に力強く拳が入る。HP0の俺は上限まで回復することに成功した。

ミコって別に巫女じゃない。まあ確かにそれぐらい気高くはあるが、ミコはH15-03535の番号をとって名付けられた。ミコは、学習も運動も俺より全然出来る。

ちなみに俺の呼び名は知りたいか。大丈夫、きっと彼女が教えてくれる。


「変態、美術見学もう始まってるよ。それと早く地獄に落ちろ」


いや変態って呼び名じゃない。変態はあだ名。俺は三郎。三枚目見たいな名前だろう。この名前を言うと初めてのやつに舐められるから言いたくなかったんだ。仲良くなるとモブ郎と言われる。


「ねえ、なんで今日‥」


「なんで今日は殴ったの。いつも見向きもしないのに。」


そう、いつもは殴ってきたりはしない。皆と同じように規則正しく動くはずなのだ。今の高校生は青春をしていると思うだろう。だが実際は誰かと馬鹿エピソードを話して終わり。青春なんてつまんないと言うやつがいても無理はない。


「昨日さ、テレビ見たんだけど7時に流れるいつものやつ」


「俺見てない。昨日は少し準備してたから」


テレビは毎日朝の6時、昼の12時、夜の7時に全国に一斉放送される。私たちは原則その放送を見なければならない。毎日明日の天気と日付、学生の行事内容を教えてくれる。基本学校以外の情報源はそれしかない。


「準備ってもしかしてまた担当さん困らせてたの、最低。」


「なんか‥やるせなくなって」


「そう。まあそんな日もあるもんね。じゃあ見てないのね。」


え、なんか優しい。


「実は今日あなたがこの学校を卒業するらしいの」


「なんで」


思わず声に出てしまった。


「ど、どういうこと。俺は学力は高くないし運動だって出来ないのに。」


何より、学校を卒業したらどうなるかを知らない。動揺が隠しきれない。手に汗の洪水が押し寄せる。


「そうなんだけど。実は、他のクラスも今日何人か卒業になるらしい。それに、私も

なの」


「私もって」


「私もこの学校卒業するの。」


「な、なんで」


また、声に出てしまった。


意味がよくわからない。学校にいればいいと思っていた。世の中のことを教えてくれるって信じてた。俺の頭が悪いから、この世界を理解できていないって思ってた。大人になれば分かるって皆口を揃えて言っていたから。毎日お薬を飲む子はよく育つって教わったから。俺も担当さんみたく優しい大人になりたかった。俺は今まで、ずっと紙の上の物語を読んでいただけだった。この国の法律も、食べ物も、医学も、花の名前も、俺たちは知らない。


神よ、どうか私たちを導いて下さい。

祈る私たちの悲痛な叫びに、神からの返事はなかった。


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