何度やり直しても、アレンの目が怖い
目を覚ます。
視界が暗い。まるで闇の中に沈んでいるようだった。
ゆっくりとまぶたを開く。
天井。
見覚えのあるシミ。
「……また、ここか」
喉が乾いている。
口の中がざらつき、金属の味が広がる。
何かが違う。何かがおかしい。
呼吸を整えようとするが、胸の奥がざわつく。
「この部屋」に対する違和感が、喉を締めつけてくる。
起き上がる。
ベッドから降り、床に足をつける。
ゾワッ。
瞬間、足元の冷たさに血の気が引いた。
温度が、異常に低い。まるで氷の上に立っているみたいに。
「……おかしい」
廊下に出る。
静かすぎる。時計の秒針すら聞こえない。
まるで、世界そのものが「停止」しているみたいだ。
−−−−−−
学校へ行く。
廊下を歩く。
ふと、視界の隅で人影が動く。
振り返る。
誰もいない。
背筋が寒くなる。
何かが違う。今までと、何かが違う。
向こうからアレンが手を振ってくる。
「おはよう、また寝坊したのか?」
また?
「……なあ、今日って何日だ?」
アレンが怪訝な顔をする。
「お前、どうした?そんなの決まってるだろ?×月×日だよ」
昨日も、その日だった。
その前の日も。
その前の前も。
「……昨日も?」
「何言ってるんだよ、お前」
アレンの笑顔が、何かおかしい。
いつもより少しだけ、目が冷たい。
喉が締めつけられる。
何かが違う。確実に、今までと違う。
−−−−−−
その日の夕方。
帰り道の交差点。
信号が赤に変わる。
その瞬間――
耳元で、誰かの声が囁いた。
「……今度は、どうする?」
ガチリ、と背骨が凍りつく。
息が詰まる。誰だ?誰の声だ?
「危ない!」
叫ぶ。アレンを突き飛ばす。
トラックが通り過ぎる。
助かった。
そう思った瞬間――
世界が"歪む"。
視界が滲む。耳鳴りがする。
体が震える。血の気が引く。
「……待て、これ、前も――」
思い出す。
アレンが血を流して倒れている記憶。
教室で一人、名前を呼び続けている記憶。
何度も。何度も。何度も繰り返したこと。
「またか」
「俺は、何を間違えた?」
足元が崩れる。
世界が暗くなる。
また――やり直しだ。
−−−−−−
目を覚ます。
暗闇。冷たい空気。
天井のシミ。
「……また、ここか」
全身が震えている。
息が荒い。喉が痛い。
何回目だ?これは何回目の"やり直し"なんだ?
この部屋を、俺は何度見た?
この天井を、俺は何度見上げた?
手が震える。
喉の奥から、息が詰まるような恐怖が込み上げてくる。
「終わらない……終わらない……!」
−−−−−−
学校へ行く。
廊下を歩く。
ふと、視界の隅で**"誰か"がこちらを見ていた。**
振り返る。
……そこには、何もいない。
背中がゾワリと粟立つ。
呼吸が速くなる。
胸が苦しい。
向こうからアレンが手を振ってくる。
「おはよう、また寝坊したのか?」
また。
まただ。
まただ。
まただ。
喉が詰まる。
息が苦しい。
過呼吸になりそうだ。
「……なあ、今日って、何日だ?」
「お前、どうした?そんなの決まってるだろ?×月×日だよ」
「……昨日も、その日だったか?」
「何言ってるんだよ、お前」
アレンが、笑う。
けれど、その笑顔はどこか**"ずれて"いた。**
「――レオン、お前、何回目か覚えてるか?」
背筋が凍った。
世界が歪む。
心臓が壊れそうになる。
「……何、言って――」
「今度こそ、うまくやれよ?」
アレンが、微笑んでいた。
まるで"試している"かのように。
恐怖が頂点に達する。
「……待て……待て、嘘だろ?」
目の前が暗くなる。
耳鳴りがする。
また、やり直しだ。
《終》