表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ショートストーリー集 ~百合好きなのでさまざまなジャンル・シチュエーションの百合を描いていきます~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

812/1280

第810編「契リの社」(愛は、血よりも深く結ばれる)

 夜の森は静かだった。


 ただ、神社の奥にある「契リの社」だけが、ほのかに燭火を揺らめかせている。


 燈女とうこは、その小さな社の前で膝を折ると、隣に立つゆかりを見上げた。


「……本当に、やるの?」


 縁は黙って頷いた。


 この村には、「契リの儀式」と呼ばれる因習がある。長年、男神を祀らず、女神のみを信仰してきたこの地では、血統ではなく「魂の繋がり」が重視される。そして、特別な相手と「契リ」を交わした者たちは、生涯、互いを離れることなく生きることを誓わなければならない。


「燈女が嫌なら、やめてもいいのよ」


 そう言う縁の声は優しかったが、その指先は微かに震えていた。


 燈女は苦笑する。


「嫌なわけないよ。ただ……こういうの、怖いなって思うの」


「何が?」


「契リの社で結ばれた者は、来世でもまた巡り合うっていう、あの言い伝え」


 社の奥には、「契リちぎりがみ」と呼ばれる古びた巻物が納められている。そこには、代々この儀式を交わした者たちの名が記されているという。そして、それらの名は、何世代にもわたって繰り返し現れるのだ。


 「つまり……私たち、何度も何度も、同じことを繰り返してるんじゃないかって」


 燈女の呟きに、縁はそっと手を握る。


「それでもいい。私は、何度生まれ変わっても、燈女を選ぶ」


 月明かりの下で、彼女の瞳は揺るぎなく輝いていた。


「……もう」


 燈女は、縁の頬にそっと触れ、唇を重ねる。


 ——その瞬間、社の灯がふっと揺らめいた。


「契リの神が、見てる……」


「いいよ。見せつけてやろう」


 互いの指を絡め、誓うように、何度も何度も、深く口づけを交わした。


 やがて、社の奥で古びた契リ紙が、誰にも見られることなく、一文字を書き加えた。


 ——それは、もう何度目かの名だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ