第77編「笑って恋して!大騒動」(笑いと恋が渦巻く、最高にドタバタな舞台へようこそ!)
田舎町の公民館で、毎週土曜日の夜になると奇妙なイベントが開かれる。それが「ドタバタ笑劇場」。町内の人たちが出演し、即興のコントや歌、ダンスを披露するこのイベントは、いつしか町の名物となり、毎週数十人の観客が詰めかけるようになった。
イベントの中心人物は、元気いっぱいの舞台監督・笑美。彼女は細かいことを気にしない性格で、とにかく「楽しいことが一番!」が信条だった。そして、もう一人の主役が、新人の音響スタッフ・響子。響子は都会からこの町に移り住んできたばかりで、内向的な性格から人前に出るのが苦手だったが、このイベントを手伝うことになり、いつも舞台袖から皆を支えていた。
その日も舞台裏は大騒ぎだった。「笑美さん、衣装のボタンが取れちゃいました!」と駆け込んできたのは、町内の豆腐屋の娘・真奈。「おっけー!安全ピンでとりあえず留めとけ!」と笑美が指示する横で、響子は黙々と音響機材を調整していた。
「響子ちゃん、調子はどう?」笑美がふらりと近寄る。
「あ、問題ないです。えっと、あの……今日も無事に終わるといいですね。」
「無事になんか終わるわけないでしょ!これが『ドタバタ笑劇場』だもん!」笑美は豪快に笑った。その笑顔に、響子はほんの少しだけ胸を締め付けられるような感覚を覚えた。
いざ本番が始まると、舞台上は案の定カオスだった。町内の八百屋のおじさんがなぜかバレリーナの格好でステージに現れ、観客が笑い転げる中、照明が突然点滅を始める。慌てて機材を直そうとする響子の背中に、笑美がポンと手を置いた。「焦らないで。ドタバタこそ、この劇場の醍醐味だからさ。」
その言葉に勇気づけられた響子は、なんとか照明を元に戻し、舞台は無事に進行を続けた。けれどその夜、イベント終了後の片付け中、響子はぽつりと呟いた。「私、なんでここにいるんだろう……都会でなら、もっとちゃんとした仕事ができたかもしれないのに。」
それを聞いた笑美は一瞬きょとんとした後、大きな声で笑った。「そんなの、決まってるじゃん!響子ちゃんが必要だからだよ!あんたの音響のおかげで、みんながこんなに笑えるんだよ!」
その言葉に涙が込み上げてきた響子は、初めて自分がこの町の一員として認められたような気がした。そして、その夜、二人は夜遅くまで語り合い、やがて響子の心に芽生えた特別な感情が、次第に形を持ち始めた。
翌週のイベントでは、響子が舞台に初めて立つことになった。笑美の提案で、二人で漫才を披露することになったのだ。「え、私がですか!?無理ですよ!」と慌てる響子に笑美が言った。「大丈夫、私が隣にいるから。」
観客の前に立つと、響子の手は震えていた。しかし、笑美の隣でボケとツッコミを交わしているうちに、不思議と緊張が解け、気づけば会場中が笑いに包まれていた。その笑顔の中に、響子は自分の居場所を見つけたのだった。
こうして、町の公民館は今夜も笑いと愛に満ちた騒動で溢れている。そして、舞台袖で響子は笑美に小さな声で言った。「……笑美さん、私、あなたが好きです。」
笑美は驚いたように目を丸くしたが、すぐにニヤリと笑った。「そりゃあ困ったねぇ。じゃあ、これからも隣で支えてよ。」響子は真っ赤になりながらも、力強く頷いた。
ステージの照明が消え、二人のシルエットが夜空に浮かび上がる。その光景を見た町の人々は、また新しい笑劇の始まりを予感していた。




