表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ショートストーリー集 ~百合好きなのでさまざまなジャンル・シチュエーションの百合を描いていきます~  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/1280

第57編「「心の静寂に咲く花」」(言葉を超えた静寂の中に、愛は芽吹く)

 その村は、乾いた風と広がる砂地に囲まれていた。鳥のさえずりすら静まり返るような午後、陽光が白く眩しい中で、サナータとアマヤは一本の大樹の下に座っていた。村の唯一の水場から離れた場所に佇むこの大樹は、彼女たちにとって特別な場所だった。


 サナータは、村でも評判の勤勉な少女だ。瞳の奥には強い意志が宿り、その言葉はいつも穏やかで、誰もが彼女の中に揺るぎない芯を感じていた。一方で、アマヤは、明るさと奔放さを持ちながらも、どこか影を引きずるような雰囲気をまとっていた。


「サナータ、今日はやけに静かね。」

 アマヤがふっと笑いながら問いかける。その笑顔は、サナータにとって太陽よりも輝いているように見えた。


「アマヤ、静けさは大切なことよ。言葉がなくても、感じることができることがあるわ。」

「また難しいことを言うのね。でも、そういうところが好きよ、サナータ。」


 アマヤは冗談めかして言いながら、そっとサナータの肩に寄りかかった。その仕草は軽やかで自然で、それでいて確かな温もりがあった。サナータは一瞬だけ驚いたが、すぐに優しく微笑んだ。


「アマヤ、あなたはいつも言葉で気持ちを伝えるわね。でも、言葉だけが真実を伝える手段ではないの。」

「どういうこと?」

「例えば、この風。私たちが言葉にしなくても、ここに流れる風が私たちを包み込んでいるのを感じるでしょう。それと同じよ。」


 アマヤは少し黙り込んだ。その目がじっとサナータを見つめる。そのまっすぐな視線にサナータは少しだけ照れながらも、目を逸らさなかった。


「ねえ、サナータ。私があなたを好きだっていう気持ちも、言葉にしなくても伝わってる?」

 アマヤの問いかけに、サナータの心は一瞬だけ揺れた。彼女は深呼吸をして、答えた。


「ええ、あなたの行動や仕草、すべてが私にその気持ちを教えてくれるわ。」

「でも、私は伝えたいの。ちゃんと、あなたに。」


 そう言いながら、アマヤはサナータの手をそっと握った。その手は少しだけ震えていて、それがアマヤの真剣さを物語っていた。サナータはその震えを感じながら、穏やかな声で言った。


「アマヤ、私はあなたのその誠実な心が好きよ。それが言葉にせよ、行動にせよ、私にとって大切なのは、あなたがここにいるということ。」


 アマヤの瞳に小さな涙が浮かぶ。それを隠すように、彼女は少しふざけた声を出した。

「また難しいこと言うのね。でも…ありがとう、サナータ。」


 サナータはそっとアマヤの髪に触れた。その仕草はまるで、風に触れるような優しさで、アマヤはその温もりに目を閉じた。


 砂の上で二人の影がゆっくりと重なっていく。言葉にできない思いが、確かな絆となってその場を包んでいた。大樹の葉が揺れ、風が二人の間を静かに吹き抜けていく。


 その静寂の中で、二人はただそこにいるだけでよかった。言葉を超えた愛が、確かに彼女たちの心を繋いでいたからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ