第56編「魁!百合塾 〜友情と愛の昇段試験〜」(友情と恋情、その境界線を超えた時、少女たちは本当の強さを知る)
ここは日本一の猛者たちが集まる「魁!百合塾」。ただし、この学び舎に入塾を許されるのは、百合を愛し、友情と絆を極めることを目指す少女たちのみである。武闘の極みを目指しながらも、彼女たちは戦いの中で芽生える「特別な感情」を隠すことはない。友情と恋情の境界線を超え、彼女たちは今日も熱き血潮を燃やしている。
塾の中央にそびえる「百合桜の木」の下。新入塾生たちの訓練を終えた二人の少女が向き合っていた。一人は長身で端正な顔立ちの天道霞。男勝りの性格だが、内には繊細な心を秘める二年生だ。そしてもう一人は小柄で華奢な一年生・白鳥玲奈。大きな瞳と可憐な笑顔が特徴の彼女だが、見かけによらず芯が強い。
「霞先輩、本当に今日はありがとうございました!」
玲奈が額に汗を浮かべながら、深々と頭を下げた。その声には敬意と憧れが滲んでいた。
「おいおい、そんなに硬くなるな。お前の方がよっぽど根性あったぞ。」
霞は口元を緩めながら玲奈の肩を軽く叩く。だがその手の感触に、玲奈はほんのり頬を赤く染めた。
「でも、霞先輩みたいには、まだまだなれません…。剣道の型もぜんぜん未熟で…。」
「お前には、お前の戦い方がある。それを信じて磨き上げるんだ。それが『百合塾』の教えだ。」
霞の言葉は簡潔だが、その瞳の奥には真剣さが宿っている。
玲奈はふと顔を上げ、霞の顔を見つめた。汗で濡れた額、乱れた前髪、凛々しい眉。そのすべてが、彼女にとって憧れと同時に胸を熱くさせるものだった。
「先輩って、本当にかっこいいです。」
「な、なんだよ急に…!」
霞は頬を掻きながら少し照れくさそうに目を逸らす。その仕草が、玲奈にはどこか可愛らしく見えた。
「だって、本当のことですもん。私、霞先輩みたいに強くなりたいって、ずっと思ってます。」
「強く、か…。でも、それだけじゃダメなんだよ、玲奈。」
「え?」
霞は少し間を置いてから、玲奈の手を取った。その手は温かく、玲奈の心臓が高鳴るのを感じる。
「強さっていうのは、誰かを守るためにあるものだ。自分のためだけじゃなく、信じたい何かのために。」
「信じたい何か…。」
「例えば、私なら…お前だな。」
その言葉に、玲奈の瞳が大きく揺れた。
「えっ…私?」
「お前が一生懸命努力してる姿を見ると、私ももっと頑張らなきゃって思うんだ。それに――お前のその笑顔が、俺には一番効くんだよ。」
「霞先輩…!」
玲奈の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。その涙は、悲しみではなく、彼女の胸の奥にある何かが溢れ出した証だった。
「でも、私、先輩に追いつけるかどうか…。」
「おいおい、そんな弱気なこと言うなよ。大丈夫だ、玲奈。お前ならやれる。俺が保証する。」
霞は玲奈の肩をぐっと抱き寄せた。その力強さに、玲奈は心からの安心感を得る。二人の間には、言葉では表せない感情が流れていた。
百合桜の木の下で、二人の影が重なる。降り注ぐ陽光の中で、霞と玲奈の物語は静かに、しかし確実に進み始めていた。




