第48編「宵闇、百鬼夜行、ふたり」(妖しき夜の中で出会ったふたり、心の灯火は決して消えない)
**第一章 狐火の夜**
それは、夏の終わりの夜のことだった。
竹林の奥にある神社の境内で、千歳サクラは灯籠の薄明かりの下、蝉の声がわずかに残る夜風を浴びながら歩いていた。神社は町外れにあり、普段は誰も訪れない静かな場所だったが、今宵は少し様子が違った。
「狐火……?」
サクラの目の前を、小さな炎が浮かんでは消え、ふわふわと漂っていた。その炎は淡い青色をしており、不思議と怖さよりも美しさを感じさせた。
「こんなところで何をしているの?」
突然、背後から声がした。振り返ると、そこには不思議な少女が立っていた。白い狐のお面を手に持ち、長い黒髪が月光に照らされて青白く輝いている。
「あなたは……?」
「私はユヅキ。この神社を守るものよ。」
彼女の声はどこか儚げで、しかしその瞳は鋭く光っていた。
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**第二章 妖しき出会い**
サクラはユヅキに導かれるまま、神社の奥へと足を踏み入れた。そこには普段目にすることのない風景が広がっていた。灯籠の光が揺れる中、木々の間を妖怪たちが行き交っている。傘を手に踊る唐傘お化け、そっとこちらを覗き込む一つ目小僧、さらには川辺で影を伸ばす大蛇の姿も見えた。
「ここは……?」
「妖たちの集う場所。この世とあの世の境界線よ。」
ユヅキが微笑む。その顔は、人間とは少しだけ違う、不思議な美しさを持っていた。
サクラはふとユヅキの横顔を見た。長いまつ毛が月光に照らされ、その瞳にはどこか哀しみが宿っているように見える。サクラは胸が少しだけ締め付けられるのを感じた。
「ねえ、どうして私をここに連れてきたの?」
サクラが尋ねると、ユヅキは一瞬だけ口元を引き締めたが、すぐに穏やかに微笑んだ。
「あなたが特別だからよ。人間の中で、ただ一人、この世界を見ても怯えない心を持っている。」
その言葉に、サクラは驚きと同時に、胸の奥が温かくなるのを感じた。
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**第三章 妖しき絆**
それからというもの、サクラは夜ごと神社を訪れるようになった。ユヅキとともに妖怪たちの世界を歩き、さまざまな出来事に出会った。妖怪たちの騒がしい宴に参加したり、時には迷子の小鬼を助けたりもした。
「サクラって、いつもまっすぐなのね。」
ある晩、ユヅキがそう呟いた。月明かりの下、サクラは目の前の焚き火を見つめていたが、その声に顔を上げた。
「どういう意味?」
「妖怪と人間の間には、大きな壁がある。それでもあなたは、その壁を恐れない。それが羨ましい。」
ユヅキの声は、どこか寂しげだった。
サクラは思わずユヅキの手を取った。その手は冷たく、けれど不思議な温もりを持っていた。
「私はあなたが好きだよ、ユヅキ。妖怪とか人間とか、そんなこと関係ない。」
その言葉に、ユヅキは目を見開き、そして小さく微笑んだ。
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**第四章 消えゆく灯火**
しかし、平穏は長く続かなかった。ある夜、ユヅキが突然サクラに告げたのだ。
「私たちがこうして一緒にいられる時間は、もう長くない。」
サクラはその言葉に息を呑んだ。
「どうして……?」
「私はこの神社を守る役目を持った妖。あなたといることで、役目を忘れてしまいそうになる。」
ユヅキの言葉に、サクラはどう答えればいいのか分からなかった。ただ、目の前の彼女が消えてしまうような気がして、無意識にユヅキの手を強く握りしめた。
「それでも、私は……あなたと一緒にいたい。」
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**最終章 永遠の約束**
翌朝、サクラが目を覚ますと、ユヅキの姿はどこにもなかった。ただ、神社の灯籠に一つだけ青白い狐火が揺れていた。
サクラはそっと灯籠に触れた。その瞬間、ユヅキの声が微かに聞こえた。
「私はここにいる。いつでもあなたを見守っているわ。」
サクラは涙を流しながら微笑んだ。ユヅキがいなくても、彼女との絆は決して消えることはないと信じていた。




