プロローグ
人が神へと成り上がり、神が人―、魔物に堕ちる。
―その伝説は幾度となく繰り返されてきた。
神を殺し邪神となる者、邪神を倒し神となるもの。
過ちを犯し邪神となる者、そして邪神となり人に倒され、人―、魔物に堕ちる者。
だが堕ちた先、成り上がった先には過去の自分はいない―、記憶、能力、肉体、魂、その全てがリセットされる。
それは世界が作ったシステムであり、その世界の生物の生き方とも言える。
だがその伝説は易々と起こるものでは無い、だから伝説と呼ばれている。
人が邪神を倒し、神に成ったなんてことが、そう何度も起こるわけが無い。
倒した人は皆、人の域を脱した力を持つ。
そうして邪神を倒し、神に成る。
そして神になった勇者は過ちを犯せば邪神となり、また人に殺され、人、魔物に堕ちる。
しかしある時、それは起こった。
再び勇者が生まれ、邪神と対する時、勇者は力を欲するあまり、あろうことは"神"を攻撃した。
その結果、勇者は力を手に入れたが、人の肉体、魂では耐えられるものでは無かった。
結果、勇者の魂は崩壊し、残った力はいくつかに別れた。
しかし扱う者がいない。
そんな中、世界が取った選択は―、異世界からの召喚だった。
その召喚の矛先は、その世界と同じ、人がいる世界、地球の中の、日本、そしてその首都の東京へと向いた。
召喚された人は2つの世界間を移動し、その道中で世界から余った勇者の力を与えられた―、はずだった。
この物語は、召喚された人の中で、唯一人以外のものに転生し、勇者の力を与えられなかった者の物語。
―――――――――
おーい誰か!誰かいないかー!
と叫ぼうとしたけど、一言も声が出ない。
喉でも切られたのか?
…まあとりあえず落ち着きんしゃい。
確かマンションのベランダから外を眺めてたはずだよな。
それで…それで、そうだ!流れ星が見えたからお祈りをしてたんだ。
そしたら前が急に熱くなって…ん?
―いやいやまさかね…いや俺死んだよな。
うん死んだよな。
だって隕石こっち来たもん。ぶつかったもん。そんなん死ぬしかないだろっ!
ふぅ、いやいや、じゃあなんで意識があるんだ?
前も見えるし。
…
待てよ…息、してるか?
してないよな、うん。
俺どうなってるんだろ、間違いなく人じゃないよな。
これは…あれか、アレなのか、最近ハマってたあれなのか?!
いやいやいやいやー、そんな訳ないだろー、中学生で終わってたはずの厨二病を再発しちゃったんだろう。恥ずかしいけどそうだろう。厨二病だよな。
第一俺が考えてる物なら、
〇〇〇〇よ、お主は死んだ!これから異世界にて勇者となってもらう!その代わりに力を与えよう
とか!
勇者様!どうか我々を助けてください!我々は今、魔王の勢力に脅かされて…
とかお姫様に言われたり!そんなんがあるだろ!
仮に本当にそうだとしてもおかしいだろ!
なんでこんな暗い狭い汚い部屋にいるんだよ!
もっとこう…お城とかだろ!
そうだ!深呼吸だ深呼吸っ。
…
やっぱり無理だ!息が出来ない!でも苦しくない…今更だけど身動きも取れない。
うーん、やっぱりそうなのか!そうなのか?!
もう一度呼吸に挑戦してみる。
口を開き、鼻からスーッと空気を吸う。
しかし、鼻から空気を吸うどころか、口も開かなかった。
うん、これは…そうだな、厨二病とか言ってる場合じゃないな、ここは現実逃避せず認めよう。
俺は、俺はどうやら、人ではない何かに転生してしまったらしい。