人の心がわからない妹に振り回されてきました。そしてとうとう私が注意をしていたせいで妹いじめの姉として私は殿下に婚約破棄をされてしまったのです
「どうしておかわいそうといってはいけないの?」
「かわいそうなどと人に言う言葉ではないわ」
私は今日も学園で妹に注意をしています。
私は恵まれていて、あなたがかわいそうと…いえ心変わりをした婚約者を持つ女生徒にこれを言ったのです。
妹に心変わりをして、妹はその相手をなんとも思っていないというのはわかっていましたが。
「だって、婚約者が私のことを好きになったとしても私は好きじゃないもの。なのに私を好きになったから婚約を解消したいって言われておかわいそうよね?」
「だから…」
うわああああああと泣き出す女生徒、これで何度目か。
妹は清楚な美貌、愛らしい微笑、魔力量も高く成績もいい、そして家柄は侯爵。
無敵ともいわれる子でした。
何をさせてもそつがない。
ただ一つ、人の心の機微がわからないところを除いては。
恵まれすぎて人の心の痛みをわかりにくいというか。
なぜできないのこんなに簡単なのにと使い魔を出せない同級生に笑顔で問いかけ、とうとうそのいわれた子は退学をしたということもあります。
微笑を浮かべるだけで男は虜になる。
私は家の誉れといわれる妹に恐れを抱いていました。
私は顔は悪いほうではなく、成績も上位ではありましたが、あの妹の姉なのにトップの成績じゃないのねとよく言われてきました。
でもそれは仕方ないことです。
私は妹を羨んだりしたことはありませんでした。
「お姉さまってうるさい」
私は女生徒には評判があまりよくない妹を心配して小言を言っていたのですが。
男子生徒には妹いじめの姉と呼ばれ…。
挙句…。
「妹いじめの罪でお前と婚約破棄をする。レリア・アシュフォード!」
とうとう婚約者の殿下にまでこう宣言されてしまったのです。
妹がわざとらしく殿下の前で転んで、医務室に連れていかれたことがきっかけで二人が話をしているのを聞いていましたが。
さすがにこう来るかと…。
私は男子生徒の噂通りに妹いじめの姉として婚約破棄されてしまったのです。
人の痛みがわからない妹が婚約者となり、私は嫌な予感はしていました。
そして致命的なことになる前にと、妹の身辺を調べ、決定的な罪を見つけたのです。
私は王妃様にこのことを申し上げることにしました。
王妃様だけが妹を見る目がどうも周りと違ったからです。
「やはり…」
「王妃様?」
「あれは昔いた私の従妹とよく似ていたからな…」
王妃様の従妹といえば、国一番の美貌で知られ、魔法力が最も高い聖女と言われたカレン様でした。
でも確か…病気で。
「あれはな…」
私は王妃様から真相を聞き驚きましたが、お前の妹も毒蛇のような女なんだなと同情されてしまいましたわ。
そして妹は…。
「私はルーシア様を襲えなんて言ってませんわ」
にっこりと妹は笑いそういうのです。
ルーシアという女生徒の恋人は妹になびかなかった。そしてルーシア様は下町で複数の男たちに襲われ…。
学園をやめたのです。
「証拠もあるのだ」
王妃様におかわいそうにや私は知りませんわの発言は通じませんでした。
男子生徒は妹に言われて襲ったと白状したのです。
直接ではないようですが、その言質を集め証拠としました。
「お前の言い訳は聞きたくない。婚約は解消させ、お前は一生涯修道院で軟禁とする」
王妃様の言葉がよくわかりませんと笑顔で言う妹。
王妃様の従妹のカレン様もこう言ったそうです。
「毒杯がほしいのならくれてやるが?」
王妃様がそういうと妹はまた言葉を続けようとします。
王妃様はもうよい下がれ! と妹たちを下がらせました。
「…どうする?」
「王妃様の御心のままに…」
私がそういうと、わかったと王妃様が頷きました。
私たちは似た者同士かもしれません。
妹は…婚約を解消されたことが苦にして毒を飲んで自殺しました。
そして殿下は廃嫡になりました。
「20年前の出来事がまたかという…」
王妃様はその当時の王太子の婚約者であり、そして唯一陛下はカレン様の誘惑に屈しなかった男性で…
そしてカレン様は男たちを使って王妃様に害をなそうとし、その前に王妃様に…。
「あれが騙されたせいでお前にも迷惑をかけたな…」
「いえ」
私は第二王子の婚約者となりました。ええ一つは多分口封じ。他言はするつもりはありませんが。
歴史は繰り返す。
人の心がわからないという聖女カレン様は毒杯をあおり自殺したのです。
その美貌で男たちを操り、いろいろな罪を犯させていたという…。
あれの生まれ変わりのような妹だなと王妃様が苦笑されましたが、私はたぶん恵まれすぎていて人の心がわからないという人間は貴族に一定数生まれてくるのかもしれませんねというしかありませんでした。
私の代でこんなことにならないように、私は祈るしかないのかもしれません。
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