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8. 悪役令嬢登場?

 食事をし終えたフローラはぷらぷらと散歩をしていた。

 今日は入学式ということで授業はなく、午後からの時間は自由だ。

 お昼に食べ過ぎた肉を消化するために歩いている。


 ステーキがあまりにも美味しそうだったため、彼女は大盛りを頼んでしまっていた。

 もちろん、完食。

 ちょっぴり出たお腹が揺れ動く。

 リバウンドの危機である!

 お腹を擦りながら、彼女は散歩をしていた。


 ついでに学院の見学もしている。

 シューベルト学院の敷地は広く、散歩コースはいくらでもあった。


 ――これなら食べすぎても大丈夫だな!


 と、よくわからないことを考えているが……。

 そういう甘い考えが太る原因になるのだ。


 ぽかぽかとした春の日差しを受け、フローラは青空の下を歩く。

 日焼け止めクリームをたっぷり塗っているから、白い肌が傷つくことはない。

 美しさにも余念がないのは、腐っても侯爵令嬢!

 頭の中は肉だけではなかったようだ!


 ――歩こ~、歩こ~、ふろぉ~、らはぁ~、元気~。


 彼女は前世で有名だった散歩曲をフローラ風にアレンジし、脳内で再生させている。

 歌詞に自分の名前を入れるのは……さすがというべきか。


 もちろん、歌を口ずさんだりはしない。

 フローラは決して馬鹿ではないのだ。

 ただ少し抜けている……そう、ポンコツなのだ!


 前世では妹に、


「もう! お兄ちゃんは抜けてるんだから、しっかりしてよね! 飴玉くれる人について行っちゃダメだからね! あ……でも、男の人についていって……それで、それで……きゃあ、それはありかも!」


 と言われていた。


「ついていくわけないだろ。子供じゃあるまいし」


 そう憤慨していたが……。

 ちなみに妹が「ありかも」と言って想像していたのは、ボーイズラブである。

 兄を妄想の対象にする妹はとんでもない変態なのかもしれない。


 と、彼女は前世でも妹に心配されるポンコツだったが……今生のフローラもポンコツなのである!

 ポンコツとポンコツが組合わったところでポンコツにしかならないのだ!


 ――ほへー、今日も天気よのぉ……。


 フローラの思考はおじいさん化していた。


 美味しいお肉を食べて、気温もちょうど良く、晴天の中を歩いているフローラはアホ面をぶら下げている。

 そうして、歩いているときだ。


「まあまあ、平民からの人気取りは終わりまして?」


 フローラの耳に女の声が届いた。

 フローラは前方に目を向ける。

 そこには日傘をした赤髪の少女とその取り巻きたちがいた!

 さらに、少女の髪は、


 ――な、なんだと!? ドリルなのに金髪じゃないとは……これ如何に!


 少女の髪型は赤髪ドリルであった。

 それを見たフローラは、


「間違ってますわ……」


 ぼそっと言った。


「間違っている……なんのことかしら?」

「いえ、なんでもございません」


 すっと表情を戻し、フローラは真面目な顔をした。

 そうしていれば、フローラの顔は知的に見えるのだ。


「そう……。まあ、良いですわ。それで平民からちやほやされてどうでした? 満足されましたか?」


 赤髪ドリルの少女はフローラを見下すように言ってきた。

 フローラは首を捻る。

 彼女は平民から人気取りをした気もなければ、ちやほやされていたつもりもない。


 ――もしかして、赤髪ドリルちゃんは人違いをしているのか? そうだ、そうに違いない!


 フローラは赤髪の少女が自分を別の誰かと間違えていると思った。


 ――これは勘違いを正したほうが良いのか? しかし、人違いですよ、と言うのは相手を傷つけかねない……。だって赤髪ドリルちゃん、プライド高そうだし。


 とフローラは見当違いなことで頭を悩ませていた。


「あらあら、黙ってしまいましたね」


 赤髪ドリルが笑うと、つられて取り巻きたちが笑い始めた。

 馬鹿にされている。

 フローラは完全に馬鹿にされている!

 だが、彼女は、


 ――別にオレが馬鹿にされてるわけじゃないからな。


 と、どこ吹く風で聞き流していた。


 ――でも、馬鹿にされている子も可愛そうだよな。平民と仲良くしただけだろうに。


 フローラは見ず知らずの子に同情さえしていた。

 自分が馬鹿にされているとも知らずに!

 大変な楽天家である!


「どうしました? あなたのお口はお飾りですか?」


 ……と、フローラを馬鹿にしている赤髪ドリル少女だが。

 実のところ内心では、


 ――もう、わたくしはなにやっているのかしら! 本当は彼女と仲良くなりたいだけですのに!


 と思っていたのである。

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