カグヤ姫は全力で婚約を破棄したい
遠い遠い国ですが、我々に近い生活をしている国のお話しです。
その国の王女であるカグヤは、幼き頃から五人の婚約者候補がおり、カグヤが年の頃を迎えると、婚約者候補達は挙ってカグヤの前へと集まりました。
「どうか、何方と婚約するか決めて頂きたい」
カグヤは悩みました。
勿論、誰にするか、ではなくて、どうやって断るか、ですが……。
「じいや、何か良い案は無いか!?」
幼き頃からカグヤの世話人だった老人が、一つ考えを出しました。
「それぞれに難題を解いてもらっては如何でしょう? とても難しい国の難題に直面させて、体良く断るのです。多少上手く行っても、完璧でなければ、適当な重役に就けさせれば体裁は保てまする」
「ほうほう……」
カグヤは老人の考えに膝を打ちました。そして、五人の婚約者候補にそれぞれお題を出しました。
「我が国は急行直下の厄災とも言える国難を抱えております。それらを解決するまでは、結婚どころではありませぬ。どうか、皆様のお力添えを頂けませんでしょうか?」
カグヤはしおらしく語りかけました。内心しめしめと思っています。
「一人はこの国に蔓延する疫病を、一人はこの国の農作物の不作を、一人はこの国の治安を、一人はこの国の経済を、一人はこの国の教育問題を、それぞれにお願い致したいのです…………」
カグヤと結婚してゆくゆくはこの国の王になりたい婚約者候補達は、それ位は出来なければ王になる資格無し、と張り切って出発致しました。
疫病問題を任された青年は、疫病の原因がネズミから来るウイルスであることを突き止めました。ワクチンを開発するまでには数年を要しますし、お金が無い人達はワクチンを買えません。それでは他の候補者達にカグヤを取られてしまいます。
そこで、青年は猫を飼うことを推奨しました。
猫がネズミを捕るので、次第にネズミは減っていきました。
「ふぇ……ふぇっっくしょん!!」
しかし、青年は猫アレルギーを発症してしまいました。
作物の不作問題を任された男は、不作の原因が土壌にあることを突き止めました。しかし土壌の質が各地で違うため、調査や改善等で数年がかりの大仕事になりそうです。それでは他の候補者達にカグヤを取られてしまいます。
そこで、男はや土壌の質に影響を受けにくい作物を推奨しました。
その間に土壌改良を進め、年々収穫高は上がっていきました。
「ありがたや、ありがたや……」
男は、農家達の支持を集め人気者になりました。
治安問題を任された中年は、治安低下の原因が国民の貧困や教育不足、そして街の汚さからくるものだと突き止めました。しかし一人で全てを熟すのは無理なので、残りの二人と協力して事に当たりました。
数年は掛かるだろうが、間違いなく一番の成果を上げられる。誰が選ばれても恨みっこ無し、と三人は互いに協力し合いました。
そして数年後、治安問題と経済問題と教育問題は同時に解決致しました。
全ての問題が無事解決した頃、五人の婚約者候補達はカグヤの前に姿を見せました。より一層美しくなり、魅力的な女性に成長したカグヤを見て、五人は息をのみました。
「この国が豊かになったのも、全て皆様のおかげで御座います。しかし、婚約者は一人だけ……何方様も皆が功労者でありますが故に、とてもとても私には選ぶ事が出来ませぬ」
カグヤのしおらしい演技も、数年で更に磨きがかかっています。
「どうか、皆様でお選び頂けませんでしょう?」
その言葉に、五人の婚約者候補者達は熱を上げました。
「私だ!」
「俺だ!」
「俺だ!」
「僕だ!」
「私だ!」
その様子を見て、カグヤは内心しめしめと笑いました。これもじいやの考えです。上手く行けばカグヤの手を汚すことなく、候補者達は自滅するでしょう。
誰もが譲らないため、争いは更に加熱していきます。
「「ならば戦争だ!!」」
それぞれの分野で支持を得た五人の候補者達は、ついに戦争を始めてしまいました。
そのため、国は荒れ、経済は滞り、教育は遅れ、作物は採れず、新たな病気が蔓延しました。
そしてついに、国は滅びました。
読んで頂きましてありがとうございました!
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