第17話 無謀な逃走
17話目投稿しました!
次回が最終話だと思います!
明日12時頃に投稿します!
皆が寝鎮まる時間、私は今彼女の部屋に来ていた。
組織の人間に今日だけ一緒に居させてくれという願いが通った。
彼女の部屋に来た時にはすっかり眠りについてしまっていたが。
隣で気持ち良さそうに眠る彼女の頭を撫でる。
彼女の笑顔は奪わせはしない、絶対にだ。
私は彼女を抱きかかえ、部屋を出る。
廊下の電気は消えており真っ暗だ。
隣の部屋に入り、彼女を机の上に寝かせ、棚に入ってある大量の資料や本等を床に散らばらさせ、その後、ライターで資料に火をつける。
つけられた紙はパチパチと燃え始め部屋の中は一瞬で焦げ臭くなる。
何枚か火をつけ、彼女を抱えなおし部屋から出る
ここからは時間との勝負だ。
エレベーターを使う。しかし2階までだ。
1階に降りてしまうとそこはエントランスホールだ。
私はエレベーターに乗り込むと2階のボタンを押す。
頼む、誰も目の前に居ないでくれ……
チンッと音と共に扉が開く。
辺りには誰もいない。
ホッと胸を撫で下ろし、エレベーターから降りて階段まで向かう。
階段をできるだけ静かに降りる。
下から話し声が聞こえる。
こちらに向かって来る、不味い。
だが、そろそろだ。
私は素早く1階に降りてそのまま地下へ向かう階段を駆け下りる。
「おい? 誰か居るのか?」
私が地下に降りたのが気付かれたのかこちらに近付いてくる。
ジリリリリリリ!
警報器の音が研究所内に鳴り響く。
「なっなんだ!? 火事か!? 一体どこから!?」
男達の声は離れていった。
そのまま私は地下に繋がる扉の横で身を潜める。
扉は暗証番号式だ、もちろん番号は知らない。だが、
「クソ! 一体どうなってるんだ!!」
扉が開かれ組織の男達が出てくる。
避難に必死でロックをかけるのを忘れている。
これも賭けだった。もし駄目だったら正面玄関から出ようと思っていたが大丈夫だったようだ。
私はまたあの忌々しい空間へと足を踏み込む。
廊下を走り、研究室に入る。
急いで外に出たのか書類や器具が床に散らばっている。
ガラス張りの部屋の中に入りダストボックスの前に辿り着く。
底は暗く、落ちて無事でいれるか分からない。
震える脚に力を込め、中に入ろうとする。
「紀見塚さん」
その声に反応しパッと振り向く。
そこには赤井姫乃が私に黒光りする何かをこちらに向けて立っていた。
「紀見塚さん、その生物をこちらに渡して下さい」
一歩づつ近付いてくる。
「渡してくれるのであれば今回の件は黙っておきます。さぁ、こちらに」
「もし、渡すとする……そしたら彼女はどうなる? チカはどうなる!? 明日行われる事はチカが望んでいるのか!?」
私は叫ぶ。
想像するだけでイライラする。
「望んでいる、と言ったら?」
「……なんだと?」
望んでいる? 何故? チカは私に助けを求めてきた、あの手紙に書いてあったではないか!
「私は貴方達に死んで欲しくないんです。ここから逃げてしまったら組織の人間は地獄の果てまで貴方達を追いかけます。平穏な生活はもう二度と送れなくなるんですよ?」
「ッ……!」
「お願いです、お願いします……私は死んで欲しくないんです。明日の行為が彼女の幸せでは無いのは分かってます。でも、それでも、死ぬよりかはまっしでしょう? お願いします、チカちゃんは貴方が良いなら大丈夫だと言っているんです……彼女の気持ちを利用しているというのは分かってます、でも、でも……」
「赤井さん、最初はチカの事を助けなければと思って逃がそうと考えていました。でも、今日彼女と話して分かったんです。私はチカの事が好きだ。人間だとか種族なんて関係ない、彼女が望んでいるから逃さないとかそういうのじゃない。私が嫌なんだ! チカの事を何も知らない男にチカを渡すのが!」
「……」
「だから、チカが望んでいたとしても私は絶対に許さない」
彼女は黙って聞いていた。
そして、少しした後口を開く。
「チカちゃんをお願いします……」
「任せて下さい」
私はチカを抱え、ダストボックスの中に入った。
凄まじいスピードで落ちて行くのが分かる。
チカを離さないようにしっかりと抱きしめた。
ドスッ! 大きな音が聞こえた後、私の意識は飛んでしまった。