第11話 開発
11話目投稿しました!
もっと長く文章が書きたい……
20時頃に12話目投稿出来ると思います!
もし無理なら明日の7時頃に投稿します!
目を覚ますと薄暗い部屋の中に居た。
さっき殴られて意識を失ってそれで……
辺りを見渡すとこの部屋には自分の寝ているベット以外何もなく、窓もない。
「ここは?」
「目が覚めたか」
外から聞き覚えのある男の声がした。
「お前にはやってもらう事がある」
どういう事だ? やってもらう事だと?
「お前にはある薬を開発してもらう」
「薬、だと?」
「それにはあの生物についての事を説明しなければいけないな」
「……チカの事か?」
「チカと言うのはあの生物の名前か? まぁいい、あの生物は食屍鬼と呼ぶ」
食屍鬼?
「そうだ、君にはあの食屍鬼の細胞を使って人間を食屍鬼にする薬を開発して欲しいのだ」
「は……? ふざけるな!! 何故そんなものを作らなければならない!? 」
「別に作らなくても構わない、ただ、命は大切にしたほうが良いと思うぞ?」
命、その単語を聞くと血の気を引くのを感じた。
死にたくない。
「そうだ、今から我々で試作品として作った薬の試験を行うのだ。ついてくるがいい」
扉が開かれ、私を殴りつけた男が入ってくる。
「さぁ来い」
私は大人しく男について行く。
部屋を出ると廊下があり、このような部屋が隣に幾つも並んでいた。
「ここは研究所の地下だ、薬の開発が終わるまで日の光を浴びれると思うなよ。」
「……」
少しすると頑丈そうな分厚い扉が見える。
「ここだ」
男はそう言うと、扉の横のパネルの様なものを操作する。
扉は重々しい音を立てて開き、薄暗かった廊下に部屋の光が射し込む。
中は様々な器具が揃う研究室だった。
しかし、一つおかしな点があるとすれば、部屋の奥にチカの部屋の様にガラス張りの部屋がある事だ。
そして、その部屋の中には一人の男性が、柱に縛り付けられているというところだ。
その顔に見覚えがある。
あの男性は原崎学院大学の心理学部主任教授、佐江之里友次だと分かった。
佐江之里さんは私の方を見ると、一瞬安堵の表情を浮かべ私に何か叫んでいる。
しかし防音なのか全く声が聞こえない。
「彼は私の知り合いなんです。少し話をさせて貰えませんか?」
「いいだろう」
私は男の了承を得て部屋の中に入る。
「紀見塚さん!? なぜここに!? 助けて下さい!!」
「落ち着いて! それはこちらのセリフですよ、何故あなたが?」
「自転車で転倒して腕を折ったんです、それで病院に入院する事になって……おかしいとは思ったんですけどそのままベットで寝てしまって。気付いたらこんな所に!」
困った事になった。
どうする、どうすれば彼を助ける事が出来る。
頼んでみるか? いや、それは無理だ。変わりに実験体になるかと言われるのがオチだ。
ならどうする、
必死に頭を回転させ彼を助ける方法を考える。
「そろそろいいか?」
あの男も部屋へと入り、私の肩を掴み、下がらせる。
「お願いします!! 解放してください! 私が居ないと家に中学生の娘を一人おいてしまう事になるんです!! お願いします! 家に帰らせて下さい!! この事は誰にもいいません!」
「おい、コイツを黙らせろ、鬱陶しい」
男はそう指示すると職員は猿轡を咥えさせる。
「ーー!!!」
佐江之里さんはどうにか縄を解こうと身体を左右に動かし暴れる。
「やれ」
底冷えするような声で職員に命じる。
職員は薬の入った注射器を佐江之里さんの首元に突き立てる。
「んーーー!!」
液体が体内に入っていく。
私はその光景を黙ってみている事しか出来なかった。
脚が震え、喉が引きつり声が出ない。
もし、もし勇気があれば辞めろと言えたかもしれない。
しかし、あの注射器の針が自分に向かうかと思うと勇気が湧かない、心の中の私が必死に抑えつけている。
少しすると、
「ンーー!!!! ンーー!!!」
佐江之里さんは先ほど藻掻いていた時と比べ物にならないぐらい震え始める。
10秒程震えたあと、白目を剥き、彼の足元に黄色い液体が滴り始めた。
「チッ、そう上手くはいかないか。おい、後片付けをしておけ」
職員達は拘束を解き、二人がかりで運び、部屋の端にあるダストシュートのような物に滑り落とした。
「おい、分かったか? 早めに薬を開発しろよ。お前が失敗する度にあいつの様な犠牲者が生まれるのだからな。」
考えたくない、聞きたくない。
そんなの、私が殺すようなものではないか……
でも心の中で安堵してしまう自分が居る。
自分じゃなくて良かったと。
私は物語の主役のような逆境を跳ね除ける様な力は無い。
無力な私は、人の死を何とも思わないこの男の言う事を聞くしか無いのだ。
生きる為に、罪の無い人の屍を積み上げて。