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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

底のない湖

作者: 底無気有

「ニナ!!」

俺は湖の前で佇む彼女の名を叫んだ。

「………」

しかし彼女はそのまま湖に体を沈めた。

「ッ!!行くな、ニナ!!」

俺も後に続いて湖に飛び込んだ。

この湖は底がないと言われている死の湖。彼女がなぜここに来たのかは分からないが死ぬ気であるのは間違えない。


俺は急いで彼女に向かって泳ぎ、ついにニナの腕を掴んだ。

「(良かった……これで)」

安心してしまったせいか掴んでいた手が少し緩み、その隙に彼女は俺の手を振り払った。

「(ニナ!!!!!)」

限界は近付いていたが、それでも俺は彼女に向かって手を伸ばした。彼女の口から出てくる泡を掻き分け、足を絡め取ろうとする海藻をちぎって下へ下へと泳ぎ続ける。

泡の数が少なくなった頃、ようやく彼女はこちらを向いてくれた。その顔は、息ができなくて苦しむでもなく、もうすぐ死ぬので嬉しいというわけでもなく、ただ俺の顔をジッと見ていた。


「???」

無表情で眺め続けられるとさすがに不思議に感じて、眉をひそめた。

「ふふふ……」

そんな俺を見て、彼女は白い泡を出しながら笑った。

泡がそこら辺に充満した頃、彼女はまた温度の無い瞳でこちらを見た。


「ばーか」


ここは水の中。死の湖と呼ばれる所に彼女が飛び込んだので俺は助けようと後に続いた。だから決して彼女の声が聞こえることは無い。しかし彼女の口の動きでそう言っているように感じた。

例えば俺の名前が若山(わかやま)であだ名が『わか』としよう。そしたら今付き合っている彼女が最後に彼氏の名前を呼ぶという涙無しでは見れない感動シーンになっただろう。だが現実はそんなドラマチックなものではない。ニナが俺の彼女であるが俺の名前が若山というものではない。

では、彼女はいったい何がしたいのだろう。


俺はそろそろ限界で無意識に体が空気を得ようと動いたら、ニナが俺の足を掴んだ。

「!?」

いきなりの事で焦っていると、ニナはそのまま俺の足を下へ引っ張り、顔を俺の耳元まで近付けた。



「   貴方のことを      」



「え?」

彼女の言った言葉が信じられなくて、俺は思わず聞き返した。


バシャン…


「!?」

顔に冷たい水がかかったので目を開けると…。

「いい加減に起きなさい!!」

目の前には般若の顔をしたニナがコップを持って立っていた。

「え!?ニナ?」

「今日は大事な会議があるって言っていたから起こしたのになかなか起きなくて困っていたのよ!」

段々と意識が覚醒してきた。

そうだ。ここはニナと一緒に住んでいる家だ。ということは…さっきのは夢か……。

「あー怖かった〜〜」

「は?」

「いやいやなんでもない」

ニナの目が据わったので慌てて言葉を付け加えた。

「じゃあ私は先に仕事行くからね?」

「いってらっしゃい」


さっきまで見ていたのは夢。あんな事実は無いんだ。


俺は思考を切り替えるために洗面所に向かった。














「あとちょっとの辛抱よ、ニナ。

あと少しで家族の命日。

あいつが殺した娘の顔を覚えてなくて本当に良かった。


……な〜にが少年法よ!!子供に厚生の機会を与える?

犯罪は犯罪よ!それ以上でも以下でもない!

殺人者は…一生殺人者のままよ!!



……絶対に貴方のことを許さないから」


私はスマホのメモに書いた計画を確認した。





「『死の湖』って意外とここから近くて良かったわ」

よろしければ、適切なタグ(ジャンル)を教えてください。


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