2−2
「やぁ、来たね」
レインはサングラスを持ち上げて言った。
短い丈の白いジャケットとチェックのスカート。
健康的な太ももが目に入る。
目をそらすと頭ひとつ下にアヤの小柄な体躯。
黒いワンピースに黒いブーツ。
白い肌が浮かぶよう。
「待ちましたか?」
時計を見ると十分前。
「まだ来たばかり」
アヤが細い声で言う。
「ミヤ少し遅れるって」
久々に来た駅なので場所が不安だったのだ。
「どうしますか?」
んー、とレインは唇の下に指を当て、考える。
「とりあえず、マックにでも入ろうか」
駅の横のマックには休日ということもあり、まだ食事時間でもないのに結構席が埋まっていた。
「コーラを三つ」
適当に飲み物と促されるままフライドポテトを買って三階の、駅と道がよく見える席に陣取る。
「そういえばレインとアヤはどんな曲を聞くんですか?」
レインはポテトをつまみながらそうだね、とつぶやく。
「お姉ちゃんは意外とヴィジュアル系聞いてる」
アヤの奇襲。
真剣にレインは慌てる。
「いやいや、クイーンなんかも好きだよ」
それを言ったら、と意地悪い笑みを浮かべるレイン。
「アヤはアニソン聞いてるじゃないか」
「別に、音楽に貴賤はないもん」
少し拗ねるアヤ。
「あとはハードロック系だね」
ミスタービッグだのツェッペリンなどの話で盛り上がる。
「ミヤさんはどんなのを?」
そうたずねるとレインはにやりと笑い、ケータイを取り出す。
「ぽちっとな」
通話ボタンを押した途端、後ろから聞こえてくる音楽。
戦え、何を……
「人生を」
ぼそっとアヤ。
「……筋肉少女帯ですね」
「何がわるい!」
いきなり後ろからトレイでひっぱたかれる。
「痛ッ、何も言ってないですよ」
ミヤが横に座る。
「おまた。何の話してたの?」
レインが説明するとミヤはハンバーガーを口に運びながら笑う。
「あぁ、そういう」
というかまだ昼には早いと思うのだが。
朝食?
「いや、間食」
「ミヤさんって意外に健啖家なんですね」
ん?とミヤ。
「つまり大食漢ってことだね」
と、レイン。
「誰が大食漢か!」
「痛い。言ったのはカイリじゃないか」
ぎろり。とミヤ。
「混雑してまいりましたのでお席のご協力を……」
店員の救いの声。
「さて、行きましょうか」
「な、逃げたな」
三十六計逃げるになんたら。
そのままトレイを返して外へ逃げるのだった。