10 thee end?
屋上から階段を降りる最中に、声が聞こえた。
「待って!」
カイリの物だ。
上に残してきたレインの事が頭をよぎる。
息を殺して、会話に耳を傾ける。
「何で?口封じ?」
「違うんだ、さっきのは……」
おお修羅場ってると内心にやにやする。
「違うって、何が?だってカイリはお姉ちゃんが好きなんでしょう?」
「そうだけど、でも」
「でも?」
おお歯痒い。
「アヤの方が好きだ」
言った!いささか声が大きすぎるような気がするけど。
少ないとはいえ生徒は居ますよ?
「ほら、アヤのギターの音の方が僕好みだし……」
ずっこけた。
物理的に。
「この甲斐性無しめ……」
つい呟く。
そっと覗いてみると、顔を赤くしたアヤちゃんが身を翻したところだった。
「……勘違いだったのはわかった」
まあ、そうだよね。
こんな甲斐性無しだもんね。
「私も、カイリのベース好きだよ」
小さく消えるような声で、アヤちゃんが言って、去る。
カイリも暫く立ちすくみ、やがて、追うようにして去る。
「レイン。まだ可能性は残ったよ……」
私は、ようやく降りてきたレインにそう言うので精一杯だった。
精神的に。
もうすぐ、夏が来る。
身を焦がし、燃える夏が。
僕達がどこまで行けるか分からない。
でも、みんなで何処までも行きたい。
アヤとレインとミヤと。
四人ならば、何処までも行ける気がした。
そんな、季節のお話。