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「振られちゃったね」
ミヤが話かけてくる。
背後に立った彼女に、答える事もなく、私は煙草を取り出す。
口にそれをくわえた所で、後ろから抱きしめるように手が回される。
その手にはライターが握られている。
頬に僅かに髪の感触。
有り難くその火を使わせてもらう。
同じようにフィリップモリスをくわえたミヤが言う。
「フェイスレスの失恋担当だもんね」
レインは。
そう言って笑うミヤ。
ユウキくんといいさ。
と続ける。
「ユウキは違う、奴はただの従兄だ」
失礼な事にミヤは笑う。
「そういう事にしといたげる」 少し、大人気なくも腹が立った。
「まぁ、おまえの恋は成就しようがないけどな」
少しだけ、廻された腕に力が籠もった。
「酷いなーそういうこと言うんだ」
少しだけ拗ねたような声。
背中に感じていた熱が離れる気配。
「私はずっと好きだからね」
リナ。
そう言い残して、ミヤは降りて行く。
タバコを投げ捨て。
私は一人、心中に合わない真っ青な空を見上げた。
吸い込んだ煙は、いつもより苦い気がした。