8-3
重い扉を開くと、さして広くはない部屋に出る。
奥は一段高くなっていて、ドラムセットやアンプがその空間の半分近くを占領している。
「おはようございまーす」
ミヤが率先して挨拶をすると、既に着いていた他のバンドのメンバーや、スタッフの人が挨拶を返してくれる。
最後のバンドが来るのを待ちつつ、ざっと周りを見る。
思い思いの服装。
思い思いの曲なのだろう。
ガチガチのパンクらしい人も見える。
その中に見知った顔を見つけた。
pulseの、メンバー。
目が合う。
ボーカルの彼女は、ひらひらと手を振ってくれる。
近付こうとして、ただならぬ視線を感じた。
後ろから。
レイン。だった。
振り向き、その視線を辿ればその先にpulseのベース。
「カイリ」
そのレインの声はさながら地を這う蛇。
「彼らとは知り合い?」
余りのレインの気迫に首を縦にも横にも振れないまま固まる。
「バックステージパス配りまーす」
最後のバンドが到着したらしく、スタッフさんの声が響いた。
レインは少し何か問いた気そうな顔をして、しかし何も聞かずにバックステージパスを受け取りに行った。
「彼がユウキだよ」
ミヤの言葉に、愕然とした。