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8-1 faithless

 遂に、ライブが翌日に控えた。

 まだ練習出来たのではないか、妥協があったのではないか、固くなった右手の指を見ながら考える。

 部室の中で、白いプレベのボディを撫でる。

 部屋の奥では弦についた汗をクロスで拭くレインとアヤ。

 前日は、演目を全部流すだけで終わった

 ぼんやりと二人を眺めていると、ミヤが隣に座る。

「緊張してるね?」

 タオルを首に掛けて顔をのぞき込んでくるミヤ。

 その手にはスティックケースが下がっている。

 自前のドラムセットを持たないミヤは、スティック以外に持つものが無いので、もうやる事がないのだ。

 やがてムスタングを入れたケースを抱え、アヤが隣に座る。

「弦はいつ替えた?」

「二週間前」

 ベースの弦はギターのそれと違って、ある程度使ったものでないと音が落ち着かないのだ。

 高音が大きく出るばかりで、低音の抑えが小さくなる。

 それに、ギターと違ってそうそう切れたりしない。

「今度のハコは慣れたとこだから、ドラムにも問題ないし」

 バスが響く感じだから気をつけないとね。

 そう言ってミヤは笑い。

「マーシャルは別に借りなきゃ」

 アヤはいつも通りの調子。

「さて、諸君」

 レインはレスポールをすっかり仕舞い込んで、皆に向き直る。

「今回は」

 頑張ろう。とかそういう事を言うのかな。

 ベースのネックを軽く握る。

「楽しもう」

 レインは笑って、言った。

 今まで、修行僧のように、ライブをこなしていた彼女が。

 僕が今まで見てきたフェイスレスのライブはとてつもなく張り詰めた空気で、楽しんでいる、とは思えなかったのだ。

 その彼女が、今、笑って言った。

「このメンバーなら、やりたいことができる」

 全員を見渡して、彼女は言うのだ。

「ありがとう」

と。

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