28/42
7-1 KAIRI
眠れない夜に、私はふとベランダへ出た。
身を切るような風に、身を縮めつつ。
いくら暖かくなったとはいえ、深夜は冷える。
片手に提げた深い青のムスタングを爪弾く。
夜明けに向かう歌。
ブラックバード。
何とはなしに彼の事を思いながら。
私の爪弾く旋律に、いつの間にか静かな、悲しげな歌が付く。
後ろを振り返れば、そこにお姉ちゃんがいた。
きっと、ギターの音で目が覚めてしまったのだろう。
いや、それだけではないかも知れない。
もの悲しげで、前向きなブラックバードのさえずり。
私達は二人して、夜明けを告げる深い青の空を眺めていた。