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“pulse”
それが彼女達のバンドの名前だった。
サンプル楽曲を聞いてみると、想像していたよりもハードなロックが流れる。
見た目で勝手にポップスだと思っていたのが、どちらかといえばパンク。
けれどもそのスキルは確かで、切り裂くようなボーカルに合わせられるベースは隙を見てはフィルインを入れ、ギターはダウンピッキング主体ながら時折鋭いカッティングを見せる。
パンクではない。
けれどその根底にそんなものを感じるサウンドだ。
いつの間にか夢中で聞いていた。
ため息を一つ吐いてヘッドフォンを置く。
パソコンの画面には彼等のサイト。
楽器屋で見た男性はどうやらベーシストのようだ。
ダブルのライダースを着て、サンバーストのプレベを提げた姿は渋いクールさを感じさせる。
あの女性はやはりロングスカートで、緩やかにウェーブした髪も合わせて清楚な印象。
その姿からは想像できない鋭い声で歌う。
そしてフェンダージャガーを提げたギタリスト。
皮肉気な笑顔のよく似合った、如何にも、なバンドマン。
そしてドラム。何か諦観したような虚空を見る目が印象的。
黄昏色とフェンスの背景がよく似合うバンドだった。
ふと気になってライブの日時へと画面をスクロール。
そして気付く。
この日時は、僕らのライブの日ではないか。 ……この人達と対バンするのか?
僕はまた、ボーカルとギターとベースとドラムがぶつかり合い、戦うサウンドへと沈みこむ。