5-4
「久々!」
ミヤがそう言って真っ先に飛び込む。
貸しスタジオである。
小綺麗で、しかし四人で入るには狭い小部屋。
「久々に大音量でできるな」
レインはにやりと笑ってギグケースからレスポールを取り出す。
部室には流石に無い、アンペグを見て、僕も何だかんだうきうきとしている。
「お姉ちゃんはいつでも大音量だと思う……」
アヤもムスタングを手早くチューニング。
短い間に随分と使ったプレベを労るように触れながら、ペグを回してチューナーで調弦。
一瞬、かくっと遊びがあるので、ちょっと回すのに癖がある。
どすどす。と、ミヤがお気に入りのパールの赤いバスドラを踏み鳴らす。
僕はグラフイコライザの使い方がいまいち分からないので、イコライジングのボタンを押す。
アンペグは便利。
「さてさて、みんな準備はいいかな」
アヤはそのまま直で繋ぐので、早くに終わっている。
軽く弦を爪弾く。
腹に響く重低音。
「オーケー、です」
満足気に頷くレイン。
振られるサイドポニー。
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
ミヤがスティックを打ち鳴らし、カウントを数え、
雪崩込むサウンド。
ほとんど即興で叩きつけ合う、レインのレスポールとアヤのムスタング。
きらきらとしたサウンドが飛び抜けて走り出したと思えば、歪んだサウンドがその喉元に食いつく。
決まったコードを維持してプレベを爪弾く。
ドラム、ミヤと目配せしてスピードを上げる。
その土台の上で二つのギターは踊り回る。
駆け抜けて倒れ込んで、一瞬の空白。
再度ミヤがスティックを打ち鳴らす。
抑えられたバッキングのムスタングの上を、レインのボーカルが歩く。
空白の間に、ピックアップのセレクトと、トーンの絞りをしている。
常時トーンを全開にしている僕とは大違い。
好きなサウンドで曲をやるのが一番。とはレインの言。
歌が切れる。
叩きつける。
ほとんどプリングのように力強く弦を弾く。
ピックが二対のギター弦をかき鳴らす。
ハイハットが煌めく。
高く高く、音がぶつかり合う。
音が切れた時、その空白が耳に痛かった。