4−2
「それじゃ、また明日」
分かれ道で、レインは言う。
アヤは何か言いたそうだったけれども目線が合うとふい、と踵を返す。
「またあしたー」
と僕の横で手を振るのはミヤ。
ミヤの帰り道はまだ一緒の方向。
「さて、と」
「?」
ミヤは腰に手を当て、人差し指を僕の鼻先に突き出す。
何?
「ちょっと付き合いなよ、後輩」
というと僕の手を取ってずかずかと歩き出す。
連れて行かれたのは某有名ファストフード。
おごるよ、と言うミヤにジュースだけ頼んで卓につく。
「んでさ、アヤちゃんとはほんとに何もなかったの?」
ため息をつかせてもらう。
なんかしつこくないかな、この話題。
「何もありませんでしたよ」
「ふーん、そう」
何か思うところがありそうに茶色の前髪を弄るミヤ。
「ま、いいか。んで本題」
今までのは本題じゃ無かったのか。
悪気のない笑顔を見てると突っ込み難い。
「どうだった?奇しくも個人練習になったわけだけど」
何を言ってるんだか、と思うところだろう。
けれども、彼女は全て知っているようだった。
「そのレベルには無いとは分かっているのですが」
と、臆病な僕は予防線を張る。
「何を練習すれば上手くなれるか分かりません」
皆と一緒にやっているときは楽しくてしょうがないのだが、一人アンプの前でやっているとどうしてもそんな気持ちを抱くのだ。
「不安なわけだ」
ハンバーガーを食べながらミヤはにっこりと笑う。
ちなみに間食らしい。
細いとは言わないが無駄の無いこの体のいったい何処にそれだけ入るのだか。
「目つきがやらしいぞ、カイリくん」
ミヤがじろりと見てくる。
「誤解です!?」
慌てる僕。
「はは、冗談だよ」
空になったトレイで頭をはたかれる。
「いいとこ、連れてってあげる」
そう言って立ち上がるミヤ。
僕は急いでジュースを飲み干して追いかけなきゃいけなかった。