4−1 MIYA
「送り狼したって?」
ミヤのその言葉に僕は飲んでいたお茶を盛大に吹いた。
「うわ、きたなっ」
ミヤにちょっとかかったようだけどそれより。
「んなっ、なんで知って、じゃなくてそんな事してません!」
にやりと笑うミヤ。
「そんなに必死になると余計あやしいぞ。カイリくん?」
面白がっている。絶対面白がってるぞこの人。
「別に何もありませんしたってば」
がちゃり。と部室のドアが開かれる。
「なにやら楽しそうだね」
といいながら入ってきたのはレイン。
その後ろについてるのはアヤ。
「もう大丈夫なの?」
あの後アヤは週末まで学校には来なかったのだ。
「うん」
小さく、少し恥ずかしそうに頷くアヤ。
にやにやするミヤは見ないふり。
「迷惑をかけたね」
レインがそう言って定位置につく。
「ちょっと危ないかな、と思ってたんだ」
ちら、とアヤを見るレイン。
「今回みたいな無理はしないようにね」
「そうそう。昔から喘息なのに無茶するから」
とはミヤ。
「というか自分で気づかないんだよねコンディション」
そうか、喘息だったのか、と少し納得。
二人の間で縮こまったアヤは目線が合うと恥ずかしげに目をそらした。
「んじゃ、久々にやろうか」
レインがレスポールを取り出す。
「カイリも個人練習だけでつまらなかっただろう?」
意味ありげに視線を投げるレイン。
「じゃ、行くよ」
ミヤがカウントをとる。
「一発目から」
レインが言う。
カウントが切れると同時に叩きつける三連譜。
けれど何故だろう。
アヤと合わせたあの日の感覚は、まだ遠かった。