どすこい
フンフンフフーン。
鼻唄混じりで東野は学園へ登校した。
ズザッ。
強面の数人のヤンキーが東野の行く手を阻んだ。
「兄ちゃん、金貸しな」
「持ってません!」
ぴゅー。
東野は逃げ出した。
ヤンキーたちが一拍遅れて追いかけてくる。
どうしよう?
「だ、誰かー助けて!」
すると、一人の女生徒が横から現れて、ヤンキーたちを蹴散らした。
「ありがとうございます。あのう」
「たいしたことしてないから。じゃっ!」
その勇姿を目に焼き付けて、東野は彼女のことを考えた。
「彼氏は…いないだろうなぁ」
はああ、とため息をつく。
「なんだ東野?恋患いか?」
「ちがわい!」
東野から事情を聞いた友人は、絶対、お礼をするべきだと言いはった。
「彼女もお前のこと必要としてると思うぜ?」
「なんでだよ?」
「まだうら若き乙女なんだぞ。お前が恋愛を教えてこい」
「なんでだよううう!」
昼休み。ズルズル引きずられて向かった先は道場。彼女はここにいる。
「早乙女さん!」
「はい」
「東野と付き合ってやってください!」
「…。一本試合してもらえるかしら?」
「なんの試合?!!!」
悲鳴を上げる東野を道場にあげて、友人はそっと見守っていた。
「どすこい!」
一突きでふっ飛ばされる東野。
「無理。無理。絶対無理!」
「早乙女さん。東野のこと頼みます」
じゃっ!と友人は去っていった。
「大丈夫?」
「は、はひ」
「じゃあ、入部手続きしてね!」
彼女は巨体を揺らしながら、にっこりと東野に手を差し伸べた。