TS娘と幼馴染の話
どうも、俺は三島遥という、17歳の男子高校生だった者です。
なぜ過去形なのかと言えば、実は1月ほど前に俺の身に奇跡のような出来事が起きたからなのです。
端的に言えば"性転換"。ラノベ的には"あさおん"という超常現象を体験してしまったわけです。女になった当初はとにかくてんやわんやして、諸々落ち着いたのが1月経った今になります。
ここで、この1月の間のストーリーを面白おかしく話すことができれば良いのですが、それはまたどこかで。
では、本日の話に入りたいと思います。
今日は父親が仕事、母親は飲み会、妹はお泊まり会ということで、家に俺一人しかいません。俺一人ではチャーハンしか作れないのですが、今はチャーハンを食べる感じの腹ではありませんでした。かと言って外食するための金は無いので、私が取れる手段は1つしかありません。
それは、"幼馴染に飯集ろう作戦"です。
◇◇◇
「……で、家に来たと…?」
玄関の隙間から怪訝な顔を覗かせるのは、我が幼馴染である新垣朱莉です。毎月2回は告られる程の美少女ですが、その度にうんざりした表情を見る側としてはくたびれたOLにも見える、同い年にしてはちょっと大人びたJKです。
胸はあんまり無いです。
「もぎとるわよ、あんたの肉塊」
おっと、マジトーンで凄まれました。
幼馴染に故か、朱莉は俺の脳内を読み取る超能力があるみたいで、だいたい胸をからかっているときはすぐさま殺気を向けられます。チビりかけたのは内緒にしておいてください。
まあこれは反省して、本題を告げました。女になったから身につけた上目遣いでのおねだりを駆使すれば、一晩の飯を集るなんてのはちょろいもんですよ。
「っ、わ、わかったわよ…。……くっそ、あざと過ぎるのに…なんでこんな可愛いの…?」
朱莉が最後の方なんかブツブツ言ってましたが、毎回おねだりに敗北するのは朱莉なので、負け犬の遠吠えは耳にする価値はありませんね(笑)。
早速家にあがり込み飯を待ちます。かなりクズい行動だと思いますが結構な頻度でこういう事はあるので、朱莉もいつもの事みたいに受け入れてくれます。
悪態をつきながらも俺のことを受け入れてくれる朱莉に、正直淡い恋心も抱いていますが、気持ちを伝える前に女になるという出来事に遭い、こんな半端な人間に付き合わせる事もないとこの気持ちに蓋をすることにしました。
さあ、湿っぽい話は置いといて出された飯を頂くことにします。
どうも今日は朱莉の家も誰もいないようで、この飯は朱莉作ってくれました。
うまい飯をかっ食らい、お礼に皿洗いをするのがいつもの流れです。そして何故か女になってから、朱莉がエプロンを着けるように指示するようになりました。不都合は無いのでいいんですがやたらフリルが着いてて少し恥ずかしい気持ちはあります。
洗った食器をしまうついでにコーヒーを淹れておきます。
匂いで気づいたのか朱莉が近付く気配を感じ、首だけそちらへ回します。
「コーヒー、淹れてくれたの?」
思ったより近くに来ていた朱莉に驚きながらも、日頃のお礼だからと告げてとびきりの笑顔と共にコーヒーを差し出します。
俺は飲めませんけど、朱莉はブラックが好きなので差し出したのはブラックコーヒーです。
コーヒーを受け取った朱莉は、何故だが神妙な顔でコーヒーを見つめ、ついに一口飲みました。しかし、直ぐにカップをテーブルに置くと真剣な目つきでこちらを見つめ、そして近づいてきて──
「んむっ?!」
目の前いっぱいに朱莉の顔が見えるほどの近さ、唇に柔らかい感触が当たると熱くて苦いコーヒーの味がじんわり広がりました。
まさかこれは、もしかしなくても…。キ、キス!?
「はんっ、ちゅうぅ」
なんの脈絡もなく急に奪われてしまったファーストキス。酷く混乱すると同時に、夢にまで見た朱莉とのキスは簡単に俺の心に喜びを齎しました。
状況をおぼろげながら把握し、俺は強張った唇から力を抜くとその僅かな隙間にねじ込むように朱莉が舌を挿入してきました。
うねりうねりと朱莉の舌が俺の口内を掻き回し、ピチャピチャといやらしい水音を立てます。抵抗するように俺の舌を押し返し突き出すと、それを待っていたと言わんばかりに朱莉の舌に絡め取られます。
まるで内臓を引きずり出されるような感覚。思わず腰が抜けてしまうほど、心地よい電流が体を奔っていきます。
「んっ、ぷは、…おっと」
唇が離れると同時に崩れ落ちた俺の体を支える朱莉。上気した頬は普段よりも段違いに艶かしく、情欲に駆られギラついた瞳には顔を真っ赤にした俺の顔が映り込んでいました。
荒くなった息を少し整えながら、酸欠でふわふわとしながらも急に何でこんなことをしたのかと、問いました。
「何で、か…。いや、その…、っ!ぶっちゃけると、私、あんたのことが…っす、好き、だったのよ…!」
え?と、一瞬思考を放棄したあと、じわじわとその言葉が脳みそに染み込んできて、急速に体の熱が高まったのを感じました。
まさか、両思いだったなんて。突然の告白に、心臓がバクバクと脈打つのを感じます。
「あんたのことは、ずっと好きだった!…でも、それは、あんたが女子になってから、気付いて…。私、もう手遅れなんだって思って、ずっと、我慢してたの…」
そうか、朱莉も同じだったんですね。
俺が女になって、結ばれることは無くなってから遅過ぎたって気付いて。それで、我慢したんですね。
朱莉も同じ気持でいてくれたんだと思うと、少し寂しくも嬉しい気持ちになりました。
でも、朱莉の気持ちを知った今、俺はここで黙ったままではいられません。俺だって、朱莉のことが好きなんです。女同士になってもそれは変わらなかったから。
だから、伝えよう──
「…え?な、何それ…私のこと好きって…。ほ、ホントに?」
顔を真っ赤にした朱莉に、俺は微笑んで頷きます。
目を潤ませて今にも泣き出しそうな顔に、思わず胸がきゅんとしたので、今度は俺から顔を近づけました。
「!…んっ、ちゅっ」
啄むような軽いキス。だけど触れた唇から全身に行き渡るようにじんわりと暖かな気持ちが広がっていきます。
俺が顔を離すと、朱莉は頬に涙の跡を残しながら俺の顔を追いかけてきます。
そして、再び交わる2つの唇。
「んっ、好きっ、は、はるかぁっ、ちゅぅ、すきぃ…!」
俺は朱莉の頭を撫でながら、それを受け入れます。
朱莉は覆いかぶさるように体を沈めて、2人で台所の床に座り込みました。足とお尻にひんやりとした冷たさを感じると、逆に朱莉の暖かさが際立つように感じます。
そのまま、お互いを抱き締めながら俺たちは幸せに浸っていました。
本当はR18な話にする予定でしたが、思っていたよりもピュアピュアになったので、こんな感じになりまひた。