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9.超絶ぼっちな僕、猫を見る


「で、誰じゃこいつ」


 小鳥部長が有里香を見てそう言った。

 有里香は男子生徒を追い払うことに成功し、暑そうにうちわをパタパタと仰ぎながら椅子に座っていた。


「有里香って言って文芸部の新入部員です」


 僕がそう言うと、小鳥部長はジロジロと有里香を見た。


「なんじゃ大丈夫なのか? 胸でかいし友達いそうな見た目してるし胸でかいし、本当に部員にしてしまってもいいんじゃろか」


 そういえば、有里香って友達とかいるのかな。

 そう思っていると、有里香は運動後の汗をかきながらも、堂々と答えた。


「友達ぃ? そんなものいるに決まってるじゃない! あんなものは作るものじゃない、勝手に出来るものなのよ!」


 なんかそれっぽい事を言っているが早くも怪しいなこの人。


「友達いる人がわざわざ嫌がらせの為だけに、別クラスに昼休み来ないと思うのだけれど。あなた一緒に食べる人がいなかったんじゃないの」

「うぐぅ!? そ、そんな事ないわよ……友達沢山いるわよ! この学校は私の庭だわ!」

「ふうん、なら御免なさい。あなたは部員になれないわ。ここは友達がいない人の集まりなの。庭に帰りなさい」


 一刀両断。昼休みの謝罪はなんだったのか。


「うぅ……そうよ、私だって友達いないわよ」


 折れるの早いな。


「なんか見てて哀れじゃなこやつ。入部させてやるか」


 小鳥部長がそんな事を言った。部長に同情されるって相当だな有里香。


「それにしても変なのを連れてきたのう。元々予定にあった宮本とかいう奴は……ん? 宮本? ん?」


 小鳥部長はそこで有里香を見た。

 そして、何かを思い出しかのように、立ち上がった。


「ああ! よく見ればお前その怖そうな顔、宮本有里香! 元々入部希望者ではないか!」


「「え?」」


 僕と佐々木さんは、同時にそう言った。

 有里香といえば、そっぽを向いている。


「ま、まぁそんな事もあったわね。過去のことよ」


 ま、まさか有里香、元々文芸部に入りたかったからあんなに手のひら返しが早かったのか。


「へぇでも意外だな。有里香って文芸部とか興味あったんだ。本とか読むの?」

「全然」

「え? じゃあなんで」

「人いなさそうだし……ここなら私も浮かないかな……って何言わせるのよ!」


 有里香は腕をぶんぶんと振り回している。

 ぼっち的思考回路で引き寄せられたんだね……。


「まぁよい。ぼっちなら話は別じゃ。有里香と言ったか。お前の入部を認めよう」

「ふ、ふん。当然よ」

「あー……ならそうじゃな。幸村、有里香と一緒に伊達先生に入部届けを出しに行ってくれ」

「えっ……伊達先生に、ですか」

「うむ、部員の誰かは付き添わないといけないのでな。頼んだ、私は嫌じゃ」

「いや僕も嫌なんですが……はぁ、仕方ないですね」


 僕は入部届けを伊達先生に見せに行く事になった。ああ、またポッキーゲームとかさせられるんじゃないだろうな。


「駄目よ」


 さっさと行こうとしていたら、佐々木さんが通せんぼしてきた。


「何だよ佐々木さん。駄目と言われても行かなきゃいけないんだけど」

「落ち着きなさい九条君。あなた前伊達先生に何されたか忘れたの?」

「覚えてるよ。だから行きたくないんだよ」

「え? 何それ。何されたのよ幸村は」


 有里香が不安そうにそう聞いてきたが、言ったら絶対に行きたくなくなるだろうから言わない。


「とにかく駄目ね」

「じゃあ佐々木さんが行ってよ」

「嫌よ」

「じゃあ僕が行くよ」

「駄目よ」


 無限ループってこわくね?


「じゃあどうすんのさ!」

「……仕方ないわ。3人で行きましょう」


 というわけで何故か三人で伊達先生の元へと行くことになった。職員室に入り伊達先生の机に向かうと、先生はいなかった。他の先生に聞くと、どうやら化学室にいるらしい。担当が化学だからだろう。


 化学室に行ってみると、先生は机で一生懸命になにかのプラモデルを作っていた。

 ちなみに今日は白衣を着ている。化学の先生だから珍しくはないのだけど、変な気分だ。


「伊達先生」

「ん? おお九条と佐々木か。悪いが今先生は忙しい」

「完全に趣味ですよねそれ、機動戦士的なプラモデルですよね」

「馬鹿者! プラモデルは趣味などではない! 私の魂だ!!」

「ちょっとよくわからないですね。校長先生に言いつけますよ」

「わかったわかった。で、なんの要件だ?」

「ここにいる宮本有里香さんが入部希望なので受理していただきたいです」


 僕が有里香を紹介しながら申請書を提出すると、伊達先生は有里香の事をジロジロと見始めた。


「おっぱいでかいなこいつ」

「なっ、何言ってんのよ。関係ないでしょそれ」

「何を言う。我が文芸部は胸の小さいものしか集めていないのだ」

「えっ」


 有里香はそう言われて、僕の胸と佐々木さんの胸をチラ見した。いや僕は男なんだから確認する必要ないだろ。

 有里香は確認した結果、何か納得したようだ。


「た、確かに」

「埋めるわよあなた」


 佐々木さんがどす黒いオーラを出している。


「有里香。当たり前だけど今のは伊達先生の冗談だよ。間に受けちゃ駄目だ」

「え? あ、そうなの……ま、まぁわかってたけどね!」


 有里香がこんなにポンコツだとは思っていなかったよ。


「それじゃ伊達先生、受理という事で。ありがとうございました失礼します」

「ちょっと待て九条。まだ入部試験が残っているぞ」

「でも先生はプラモ作りに忙しいようなので……」

「何言っている! こんなものは趣味だ! 顧問は仕事だからな、優先するさ」


 魂とはなんだったのか。

 すると有里香が僕に耳打ちをしてきた。


「ねぇ、入部試験って何? 聞いてないわよ」

「先生の気まぐれだよ。悪いけど付き合って」

「ま、いいけど」


 有里香は軽い気持ちで考えているようだな……。

 さて、何が出てくるか。


「じゃ今回は三人いるし……これ使うか」


 先生は机から箱を取り出した。箱を開けると、中には四つチョコレートが入っている。


「チョコレート?」

「ああ、要はロシアンルーレットだ。この中の一つに私が調合した特殊薬剤を使用したチョコが混じっている。要は宮本はその当たりを引かなければいい」


 それは当たりではなくハズレでは?


「大丈夫なんですかそれ。なんか悪い効果があるとか、ないんですか」

「大丈夫だ。私を信じろ」


 全く信じられん……。

 まぁでもやるしかないんだろうね。仕方ない腹を決めよう。


「私、運には自信があるのよ! 要は普通のチョコを当てればいいんでしょ! 余裕よ!」


 そんな感じで一級フラグ建築士のような発言をした有里香は、案の定普通じゃないチョコを引いた。


「あれ? ちょっと苦いだけで、なんもないわよ」

「ん? 失敗だったか。仕方ない、入部を認めよう」


 食べた瞬間こそ何も変化が無さそうだったが、先生が入部届けを受理して、僕たちが部室に戻った頃に、それは発症した。


「にゃにゃ〜にゃん!」


 有里香が四つん這いになって、四足歩行で歩き始めたかと思えばにゃんにゃんしか言わなくなってしまった。最初は全てをかなぐり捨てたギャグかと思ったのだが、どうやら本気のようなので、さっきのチョコレートで何かが起きてしまったようだ。


 本人に全く照れ要素がないところを見ると、心も猫になってしまったらしい。というかこんなもの作るなんてあの先生何者だよ。


「くくく……これは高く売れそうね」


 邪悪な笑みで有里香の写真を撮りまくっている佐々木さん。一歩間違えれば佐々木さんがああなっていた可能性もあるのか……それはそれでやばそうだな。


「うわっ」


 猫有里香が急に僕の膝に飛び乗ってきた。

 そして頭を僕の胸に擦り付けている。


「ゴロゴロ……」

「ちょ、ちょっと有里香……まずいって」

「九条君、変態ね。そんな鼻の下を伸ばして、この写真を見せたらあなたは社会的に終わりよ。同級生に猫プレイを強要する変態としてね」

「同時にこの部活も終わりを迎えると思うよ」


 僕は有里香を剥がそうとしたが、身体に触れてしまうのでどうにもそれもできなかった。


「なんなんじゃこの地獄のような光景は……」


 小鳥部長のその呟きがやけに僕の耳に響いた。

 その後10分ほどで有里香は元に戻った。そのあと何故か僕はボコボコにされたが正直納得いっていない。

 こうして騒がしい1日は終わった。



猫娘……

昨日から沢山ポイントが入ってました!入れてくれた方ありがとうございます

というわけで引き続き感想とポイント待っております

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