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16.超絶ぼっちな僕、ギャルゲーで勝負する②


 早速ゲームが始まった。

 二人ともゲームをスタートさせる。


「俺の名前は鈴木トシヤ。どこにでもいる高校二年生だ」


 テンプレのような出だしから始まった。このあとどうでもいい心理描写が続いたあと、学校へ続く道を歩いていく。どうやら遅刻ギリギリらしく、急いでいるようだ。

 早速選択肢が現れる。


『近道でダッシュだ!』

『いや、ここは諦めていつも通り歩こう』

『家に引きこもろう』


 なるほど、佐々木さんはどちらにするんだろう。ていうか最後の選択肢なんだよ。


「あなたが家を早く出ないからこんなことになるのよノロマ。ダッシュしなさい」


 佐々木さんはそんな事を言ってダッシュを選択した。そこでコントローラーが次の有里香に渡される。

 トシヤは近道を走ったが、これまた急いでいた女学生にぶつかってしまった。


「きゃっ。いったーい」

「あっ、わり! でも俺急いでるからごめん!」


 トシヤは軽く謝ってそのままダッシュを続けた。

 意外とトシヤ性格悪いな。そこは労われ。


「ちょっとトシヤ、そこは出会いのチャンスでしょう! 何やってんのよ!」


 有里香が怒っていた。

 そのままトシヤは遅刻すること無く学校に到着し、席に着くことが出来た。

 ホームルームが始まると、先生が転校生が来た事を発表した。そこでやってきたのは想像通りぶつかったあの女の子だった。


「初めまして、三井シオリです……ってああ!」


 シオリがトシヤの存在に気づいて、席の隣にさせられていた。

 その後話が進んでいき、順調にシオリとの関係も進んで選択肢が出たのだが、ここで僕たちぼっち文芸部にとって予想外の展開が起きた。


『シオリに会いに行こう』

『ヒカリに会いに行こう』

『今日は帰ろう』


 放課後の選択肢でこんなのが出た。

 ちなみにヒカリはトシヤの高校からの友達だ。


 一応ゲームのパッケージにも描かれている重要キャラではあるが、男だ。成績優秀スポーツ万能、そしてイケメン。冴えない主人公となんで友達なのかわからない完璧超人ヒカリ。気がきくし、こんな友達が僕も欲しかった……。


 有里香は当然、


「ヒカリ……! 私の友達! 今会いにいくわ」


 ということで恍惚の表情でヒカリを選択。もはや彼女の目には周りの光景が映っていない。

 その後小鳥部長に出番が回った。ここではトシヤの過去が明かされた。昔、小学生の頃大好きだったコウという友達に約束を裏切られたことがあること。今でもトシヤの心の中にはコウがいる。だから友達を信じることができていなかったけれど、ヒカリの優しさに触れてトシヤは友達とは何かを思い出していく。

 小鳥部長は、


「ヒカリ、いい奴なのじゃ……」


 とかなんとか涙目で言いながらヒカリに関する選択肢を選択。美雲さんの番では、人伝えでヒカリが小学生の頃はトシヤと同じ町に住んでいた事が判明。

 しかし何故か、ヒカリは小学生のことを話そうとしなかった。彼は小学生の時に嫌な思い出があったらしい。その事を問いただそうとする場面で、トシヤは友達とは何かに気づいて問いただすことをやめた。

 そんな選択をしていた美雲さんは、


「ヒカリ、君はもはや私だ……!」


 と意味不明な言動をしながらヒカリルートを爆進していった。いつのまにかトシヤとヒカリとシオリの3人が教室で一緒に話すようになっていた。


「あっちを見るでござる! 明らかにバッドルートなのに全然エンドにならないからこっちは幾らでもやり直せるでござるよ! ってあぁ!? またセカイちゃんに刺されたでござる!! ハーレムは無理でござるか!?」


 アニオタの三村君がこっちの画面を見て何やら言っている。どうやらあっちは何回かバッドエンドを迎えてしまっているらしい。


「くく、このゲーム、油断するとすぐにヒロインに刺されますよ」


 スパクソ部長は専門家のような表情でそう言った。油断すると刺されるってどんなゲームだ。


 さて僕の順番が回ってきた。

 あっちも進んでいないとはいえ僕たちなんてシオリ以外のヒロインがまだ一人も出てきていない。これは深刻だ。


 全く世話の焼ける連中だ。いくらヒカリが友達だからといってこれは勝負だぞ。しかも友達だってゲームの中の話だ。僕はもちろん勝ちに行く。コントローラを握った。


 その日トシヤはヒカリと帰りにゲーセンで遊ぶ約束をしていた。トシヤとシオリは日直の仕事が残っていたので、


「僕先に行ってるよ!」


 とヒカリはゲーセンに先に行っていた。

 そして日直の仕事も終わり、トシヤも変えより支度をしていると、


「ねぇトシヤ、一緒に帰らない?」


 なんとシオリが話しかけてきた。しかも立ち絵が頬を染めている。どういう事だ、何故ヒカリばっかり選択しているのにシオリからの好感度が上がってるんだ。


 シオリからなんて初めてだな。イベントだろうか。しかし今日はヒカリと帰りにゲーセンで遊ぶ約束があったんだけど、大丈夫か?

 まぁしかしこれでシオリと一緒に帰ればグッドエンドに近づくはずだ。

 教室で二人きりになるトシヤとシオリ。お互いに沈黙を貫いているようだ。そして選択肢が出る。


『シオリと一緒に帰る』

『断ってゲーセンに行く』

『一人で帰る』


 なんで『シオリを連れてゲーセンに行く』選択肢がないんだよ!! それで解決だろうが。


 だが、まぁこんなもの正解は決まっている。シオリと一緒に帰るだ。ヒカリとはまた別の日に遊べばいい。それだけの話さ……。

 それだけの、それだけの話のはずなのに……何故だ!? 僕はコントローラのボタンを押せない!

 本当にいいのか? 僕は、友達との最初の約束を破ってシオリと帰っていいのか?


「うああああああ!」


 僕は思わず叫んでいた。

 観客席の虹ぺろ部員がドン引きしていた。

 だけど僕にはおいそれと決める事は出来ない。友達を選ぶのか、部活の勝利を選ぶのか。僕はすがるようにして、佐々木さんたちの方を見た。


「答えなど無いわ、九条君。あなたが決めるのよ」


 佐々木さんは僕の事をお見通しのようだ。


「幸村よ、私は何を選択しても責めんぞ」

「そうよ! 行きなさい幸村! 誰かのためじゃない! あんた自身の願いのために!」

「君は心に嘘をつける人間じゃ無いよ。九条君。心に従った方がいいさ」


 なんか途中無責任な大人の発言が聞こえた気がするが……というか僕が責任を持つみたいな流れになってるけれど、実際他のみんなも流れ作ってたよね。なんで全ての責任が僕になってるんだ……いや待てそれすらもみんなは心配して……? なんだこれは孔明の罠だ!


 でも、そうだ、僕が決めなければ。


 僕に友達がいたなら……僕は、僕は友達を裏切れない!

 僕は『断ってゲーセンに行く』を選択した。シオリは悲しそうな顔をして帰っていった。

 トシヤはヒカリの元へなんでもない顔をして行き、楽しそうにゲームをしていた。


 お、終わった……もう駄目だ。でもこれでいいんだ、友情の笑顔を観れたんだから。いいんだよね? みんな。

 そう言ってみんなの方を見ると、


「あり得ないわね九条君。あなた一体何を考えているのかしら」

「普通に考えたらシオリと帰るじゃろーが!!」

「バッカじゃないの!? 本当いつまで経ってもガキね! ガキ幸村!」

「九条君、君の心は本当にそれを望んでいたのか?」


 全員鬼だ。



スパクソ部長。趣味、クソゲーを他人に無理やりやらせる事


ちなみにギャルゲー対決は次で終わります。


ポイントや感想は作者のモチベになってます!

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