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15.超絶ぼっちな僕、ギャルゲーで勝負する①


 正式に部員となった美雲さんとともに、再び部室に舞い戻った僕。正直若干の気まずさはあるけれど、気にしない方向で行こう。

 正式に美雲さんが部員になったことを告げると、小鳥部長が立ち上がった。


「うむ! ではこれから新生文芸部の始動じゃ! 早速部活っぽいことやろうぞ!」


 小鳥部長はとても盛り上がっている。

 うーん、空気を読めなくて申し訳ないが言うしか無いな。


「その事なんですが小鳥部長。実は厄介な事になっていまして」

「なんじゃ幸村。どういうことじゃ」

「美雲さんから教えてもらったんですが、実は僕たち抗議を受けているらしくて」

「抗議ぃ? どこからじゃ」

「虹ぺろです」

「あやつらか。そんなもの無視すればよかろう」


 事はそんな簡単ではなくなっていた。

 実は虹ぺろは総勢30名ほどいる巨大同好会なのだ。その勢力にも関わらず今まで認められていなかったのは、単純に活動がイマイチ分からず実績がなかった故だ。それに付け加えれば、前生徒会長が超堅物だったためらしい。


 だが今回、彼らは僕ら文芸部も実績がないということをあげて、自らの方が部活に相応しいと、僕たちに部活をかけた『いくさ』を挑んできたのだ。


 今の人気者生徒会長の織田さんは、虹ぺろに上手くおだてられたらしく、その戦を許可してしまったらしい。


 ちなみに、


「織田会長は佐々木さんに『知らない』と言われていたことを今でも根に持っているようだよ」


 そう美雲さんが言っていたので責任はおそらく佐々木さんにある。


 ところで学校の制度のような呼び方の『戦』だが、そんな制度は一切無い。単純に虹ぺろの連中がそう言っていたので、生徒会も使っているだけらしい。


「それで、その『戦』とやらは何をするんじゃ」


 話を聞き終えた小鳥部長は、意外にも冷静にそう言った。


「それは私たち生徒会も詳しく聞かされていませんが、どうやら『ゲーム』で勝負するようです」

「げーむ、じゃと?」

「ええ。同じく同好会の『スーパークソゲー愛好会』が、ゲームを用意してくれるらしいです」

「そんなの私たちが不利だわ。同好会同士で不正し放題じゃない! インチキよインチキ!」


 有里香がムキーッとした顔でそう言った。


「それに関しては大丈夫だと思う。私も『スパクソ』の部員と話したけれど、彼らはゲームに関しては真剣だ。嘘をつく事はしないだろう」


 美雲さんはそう言う。スパクソってまた名前の略称か。略すくらいなら最初から短くしておけばいいと思うのは僕だけだろうか。


「ゲームの詳細はまだわからないって事なのね。まぁいいわ。それで、その戦とやらはいつ行われるのかしら」

「文芸部に部員が揃った次の週の月曜日って言っていたよ」

「来週か……がんばるぞい! 文芸部は守るのじゃ!」


 というわけで小鳥部長の檄でその日の部活は終わった。

 みんな誰も言わなかったけれど、ゲームとか出来るのだろうか。僕は中学校の時にモンスターをハントするゲームしていたあたりが限界なんだけれど。


 あれよあれよと日々は過ぎて、あっという間に戦当日になってしまった。

 僕たちは試合会場として空き教室を貸してもらった。スクリーンを設置して、ゲーム画面をそこへ投影する手はずのようだ。


「結局何も対策できなかったな……」

「仕方ないわ。そもそも何のゲームかもわからない以上対策しようがないもの」

「やるからには、勝つわよ!! うおっしゃぁ!」

「ふふふ、私のゲーム力を魅せる時が来たようじゃのう!」

「私はあまりゲームは得意じゃないのだけど、大丈夫かな」


 各々言いたいことを言いながら、空き教室に入る。するとそこには設置された観客席に多くの男子生徒がおり、ゲーム機のある教卓付近には6人の男子がいた。


 観客席は二つの同好会の部員が座っているんだろう。ちなみに全員男子のせいか、佐々木さんたちが入ってきた途端彼らはモジモジしはじめた。


 6人の方は知っている顔はアニオタの三村君だけだが、見た感じお揃いの美少女が描かれたTシャツを五人とも着ているので虹ぺろの部員だとわかりやすい。そのTシャツを着ていない余った一人がスパクソの部員だろう。


「ひぇっひぇっ。よく怖気付かずに来たな! 我こそが虹ぺろの部長、剛田である!」


 部長気持ち悪い笑い方をしているな。


「こうなった経緯は嫌という程わかっているだろうから早速『戦』を始めようではないか! スパクソの部長、加賀美君、お願いする!」

「はじめまして、加賀美です。今回君たちにやってもらうゲームは、『恋愛ゲーム』、すなわち『ギャルゲー』だぁぁああ!」


「「「うおおおおおお!!!」」」


 異様な盛り上がりを見せる観客席。

 れ、恋愛ゲームか、厳しいな。


「今回やってもらうのはグッドルートエンド率30%、トゥルーエンド率驚異の1%! クソゲー界隈ではもはやクリアさせる気があるのかと話題になったこのギャルゲーだ、『君と見たあの太陽をもう一度』だ!」


 よくわからないが難しいということだけはわかった。


「ルールは簡単だ。会話を進めていき、途中で現れた選択肢を選ぶ。そしたら交代、次の人が会話を進め選択肢を選ぶ。また交代。この繰り返しで先にグッドエンディングを迎えた方の勝利だ!! バッドエンドは何回迎えてもオーケーだ! だが誰かの操作中にアドバイス行為は禁止する!」


 なるほど、リレー方式でゲームを進めていくのか。

 スパクソ部長は、説明を終えると二台あるゲームをそれぞれ起動した。

 スクリーンに二つの画面が映し出される。そよ風に髪をなびかせる少女がスタート画面だ。


「私が最初に行くわ。女の考えは女に任せなさい」


 佐々木さんは頼もしいことを言っているが、この人に世間一般の考えがわかるのだろうか。

 虹ぺろも部員が出てきた。


「ぬふふふ、ぼ、僕に勝てると思ったら大間違いだ! 美少女攻略は僕たちの十八番だ!!」


「「「うおおおお、クッキー氏ぃ!!」」」


 よくわからんがクッキーと呼ばれているらしい彼も、ゲーム機の方へと向かう。

 そして、運命の戦が、


「では、ギャルゲー戦、開始ぃぃ!!」


 始まった。


スパクソ部長、加賀美。縛りタイムアタックが好き。


ポイントありがとうございます!

そろそろ毎日更新も辛くなってきましたがみなさんの応援のおかげで続けられます。

これからもよろしくお願いします!

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