11.超絶ぼっちな僕、ポスターを作る
適当な紙とペンを用意して、とりあえず全員が各々のポスターデザインを考える事になった。
ポスターか……あまりこういうのは得意ではないんだけれど、まぁやるだけやってみよう。
「ふっふっふ、私の天才的デザインセンスを見せてやるのじゃ……」
ぶつぶつと呟きながら小鳥部長が何か描いている。
僕は何を描こうかな。まぁとりあえず無難に『文芸部』と上の方に書こう。
ポスターだからな、何か宣伝したいし……よし、『読書好き、集まれ!』って書いて……果たして僕らは読書好きなのか? 僕は漫画の方が好きだし佐々木さんは官能小説とか読んでるし、小鳥部長は痛い小説書いてるけど……まぁいいか。
『求む!新入女子部員』とでも真ん中に書くか。男子も欲しいけれど、佐々木さんがNGだからな。まぁ後は『アットホームな雰囲気です』『友達を作ろう!』。こんな感じかな。
若干嘘も入ってるけどポスターなんてそんなものだろう、たぶん。後は余ったスペースに本の絵でも描こう。
そして僕のポスターは完成した。
その後みんなが完成するのを待った。
「じゃ、一人ずつ発表しましょうか」
佐々木さんがそう言って、僕の方を見た。なら僕から発表しよう。僕はポスターをみんなに見せる。
「こんな感じかな。無難な感じにしてみた」
「全然面白みがないじゃない! 幸村、あんたセンスないわ!」
「女子部員と限定しているところに九条君のいやらしさを感じるわ」
「アットホームを求めて来られてもこの部活では生きていけないと思うのじゃ」
全部批判だった。佐々木さんのに関してはもともと君が言っていたことを取り入れたんだけどな。
「まぁ男子部員はいらないけれど」
佐々木さんはさらりと付け足してそう言った。じゃあなんで批判したのさ。
「じゃ、次は私のじゃな!」
ウキウキでそう言った小鳥部長。見せたポスターはびっしりと文字が書かれていた。
まず一番上には、
『だからみんな、読んでしまえばいいのに…』
とデカデカと書かれている。
この時点で嫌な予感がしているが、そこから下には、
『失望の本』
『脆弱な作者』
『偽りの友情』
『病的な付き合い』
『自我の秘匿』
『残酷な教室』
……などなど、それ以後もそんな感じでずらーっと、紙を埋め尽くして書かれていて、途中『では、あなたは何故、部活に入らないの?』と大きめに書かれたかと思えば、最後に『THE Literary Club』と一番下にデカデカと書かれている。文芸部という事だろう。
「ふぅ、どうじゃ? センスに溢れておろう」
「そりゃ溢れてるでしょうね。だってこれ『エ○ァンゲリオン』のポスターのパクリじゃないですか!」
「エ、エ○ァなんて知らぬのう……」
なんて白々しい。
「ていうかこれ誰に部活入ってもらいたいわけ? よくわかんないわね」
「まぁ来るとしたらビデオカメラ持ったオタクのメガネ男子とかでしょうね」
有里香と佐々木さんの反応もあまり良くないようだ。
「次は私のポスターを見なさい!」
そう言って有里香が見せたポスターはシンプルなものだった。紙いっぱいに上手くも無く下手でもない微妙な絵が描かれているのだ。
ちなみに絵の内容は何故か本を崇めている人間が四人いるだけ。そして吹き出しで『文芸部、楽しいよ』と書かれていた。
「有里香、今まで君が言ったことがブーメランとなってそのまま君の頭に突き刺さっているよ」
「な、なんのことよ」
「『全然面白みがない』のと『誰に部活に入ってもらいたいのかわからない』かな」
「う、うっさいわねー、ポスターなんて作ったことないんだから仕方ないじゃない」
「それにしても絵が下手じゃのぅ」
「全く。あなた達ふざけているとしか思えないわね。明日もう一度ここに来なさい、私が本当のポスターというものを見せてあげるわ」
「いや今見せてよ」
佐々木さんはポスターを見せた。
だがそこには真ん中に小さい丸が一つ描かれているだけだ。他は白紙のまま。
「何よこれ、ちっちゃい丸が描いてあるだけじゃない」
「前衛的すぎて意味がわからん作品の典型のようじゃ」
「佐々木さん、これ意味あるの?」
僕たちの攻撃を受けても、佐々木さんはひるまなかった。
「わかる人にだけわかればいいのよ」
さては何も考えていないなこの人。
「意見がバラバラですけど、どうしますか小鳥部長」
「うーむ、そうじゃな。こういう時は一つずつ意見を合体させていくのじゃ!」
それは駄目になる典型的なやつでは……とは言えなかった。全員が全員自分の作品が最高だと思っているので全く譲ろうとせず、喧嘩のような話し合いになったがなんとか作品は完成した。
まずポスターの一番上には僕のから採用された『文芸部』というデカデカとした文字。
そして中心には有里香から採用された四人の人間の絵。だが彼らが崇めているのは本では無く、謎の丸。そう佐々木さんの描いていたあの丸だ。
丸を崇めている人間たちの背景には、部長が書いていた『失望の本』『脆弱な作者』等々が所狭しと並んでいて、一番下には『アットホームな部活です!』と書かれていた。
「アットホームなわけあるか!!」
僕のツッコミが部室に響いた1日だった。
とはいえ初めて部活っぽい事したな、と少し嬉しいのは秘密だ。
Air/まごころはどこに?
ポイントありがとうございます!
引き続きよろしくお願いします!




