究極の税制
――税制局包括税部第一課勤務を命ずる
それが幸太郎が受けた辞令だ。
(包括税部?なんだそれ)
そう思った幸太郎は、その場で人事課長に問うた。
「包括税部というのは聞いたことがありませんが。なんなんですか、包括税部って」
人事課長は面倒くさそうに、
「仕事の内容は包括税部にいって訊きなさい」
「しかし、部がなにを所掌しているかぐらいはあらかじめ知っていないと」
「設置されてから間のない部でね。きみのような優秀な成績で入省した者が配属される部だよ」
と人事課長は言ったが、幸太郎の問いには答えていない。
「とにかくあちらにいってみなさい」
「いやいや。そもそも包括税部ってどこにあるんですか。それすらぼくは知りません」
「庁舎の北東の階段を降りていきなさい。そうすればわかる」
人事課長は面倒くさそうな顔のままで言い、再び「優秀な成績で入省した者が配属される部だ」と念を押すかのように言った。
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