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三連休その三

「す、すげぇ」


あのお母さんでさえ黙っている。

他種族を見るのは初めてなのかな?


一言で言うと、映画の世界だ!

もう想像をはるかに上回る凄さ!!!


ショーウィンドウには興味を引きつけられる物が沢山あったけど、全部買い物済ませてからゆっくり見ることにした。



ここはモールのどの階よりも人口密度が高い。色んな種族がいるから、人と呼べるか分からないけどね。



「まず教科書買わないと」


プリントには御丁寧に地図が描かれていた。


「えーー、今がここだから、一番近いのが……ここだ! ローエンの書店? ありきたりな名前だな。お母さん行こう」


「あんた場所わかってるの?」


「大丈夫さ! なんせ私の守護神が道を示してくれるから!」


ふふん、ドヤッ!


「あら、そう? じゃあ守護神ちゃんに頑張って貰おうかしら」


凄いニッコニコだ! やだ、何か、怖い。





母の笑顔を背に目当ての書店を目指して歩く事数分。



あ、ショーウィンドウに人形が……うっわ! 怖っ!!


今めっちゃ睨まれたよ!! あの人形こっわ!

あれ? 今笑った? 何あの笑み。


「ヒィィィ!!」


件の人形は口角が上げると耳まで口が裂けた。


これは夏の怪談話に投稿できるレベルだわ。




「小春、着いたよ」


「もう、着いた? 早く入ろう!!」


もう一刻も早くあの人形の視線から逃れたい!!




戸を開けると透き通った鈴の音が響き渡った。


「へい! らっしゃい」


店の奥からくぐもった声が聞こえる。


程なくして奥から人が出てきた。

背が凄く高い。私の2倍はあるかも……ちなみに私は160cmです。決してチビではない!

そして、額の少し上に立派な角が一本!


鬼?


「おう! お嬢ちゃん見ねぇ顔だな。新しく越してきたのか? おりゃローエンってんだ。この店の主人してるもんだから宜しくな!」


えっと、言葉は通じるんだよね?


「えっと……ローエンさん、私……」


えっ、何て言えばいいの? どう接すればいいの?


「あー、お嬢ちゃんもしかして新参者か?」


し、新参者?


多分それだろうから、やや控えめに頷いた。


「おーそりゃ失礼した。悪りぃな。いきなりこんなデカ物が迫って来ちゃって。初めてだよな」


ローエンさんは優しい鬼です。


「い、いえ、大丈夫です。私はただびっくりしただけなので」


「じゃあお嬢ちゃん教科書買いにきたのか」


「はい、そうです」


「どれ?」


「えっと、とりあえず、薬草学と魔法薬学と占い学です」


「うっしゃあ! ちょいと待ってくれ」


そう言って、店の奥に消えて行った。


ふぅ、緊張した。


「お母さん、やばいね」


「そう? 楽しそうじゃない?」


肝っ玉だねぇ!

もう慣れたのかな? だとしたら、凄いよ。

私はまだ当分かかるかな?


「お嬢ちゃん、ちょいと手伝ってくれ」


ローエンさんが本を沢山抱えて来ながら言ってきた。


「あ、はい」



頑張って運んでるんだけど、重い!!! とにかく重い! これは絶対、明日筋肉痛になるな……

こんなの毎日背負って通学してたら肩がお亡くなりになるわ。心配だな。




「それはここに置いといてくれよ。ありがとな!」


ローエンさんがガハガハと笑いながら言った。


「んじゃ今から説明するな。

まずこの5冊が薬草学のだ。薬草は種類が多いから覚えるの大変だと思うが、頑張れよ! あと薬草はどんどん新種が見つかるから、時期を見て先生に更新して貰えよ」


5冊か……


「んで、こっちの3冊が主に魔法科で使われるもんだ。前にチラッと見たけど、呪文がびっしり書いてあったんだ。おりゃ魔法は使えんがな。えっと、下級、中級、上級になってるから」


辞書並みの厚さの本が、さ、3冊……


「で、こっちの3冊が魔法薬学のだ。調合は間違えるとヒデェことになる時があるから気をつけろよ。薬草学の実践、応用みたいなもんだ」


え……もしかして、魔法、暗記ゲー?


「最後の1冊が占い学のだ。これはよくわからんが、1冊しかないから大切に使えよ」


イエッサー!!


「何か質問あるか?」


「えっと…………無いです。多分。はい」


「そうか。じゃこれ家まで魔法でとばすから住所ここに書いてな」


カウンターの下から一枚の紙と羽ペンを取り出した。

これは完全に映画の世界ですね。




カリカリとした、最近のペン類では到底聞くことができない音を私が生み出してる。うん、感動……


「あの、できました」


「おう。ありがとな。これにこの液を垂らしてっと」


ローエンさんが説明書らしき紙を片手に何やら始めた。

顔が険しい。

苦手なのか?


「あっれー? なんも起こんねぇぞ。おかしいな。この液のはずなんだけどな…………しまった。こりゃただのインクだ! お嬢ちゃんすまねぇ! すぐ探してくっから、ちょいと待ってくれ!」


言ってすぐお店の奥に消えた。

おいおいローエンさん、あなた大丈夫ですか? 店主としていろいろ危なくないか?


待つこと5分程……


意気揚々と透明な液体が入った小瓶を手に戻ってきた。


おいおい! ちょっと待て。

さっきの液体真っ黒だったぞ。間違えようがない色をしてたぞ。本当にローエンさん大丈夫なの?


「お嬢ちゃん待たせてすまねぇ! すぐやるからな! な!」




今度は本物だったみたいで、1滴垂らすと紙がいきなり光りだした。更に驚くことに、何と紙がしゃべった!!


『こちら、グレゴ魔法郵送センターです。本日のご利用誠にありがとうございます。案内の音声に従って下さい。それでは、まずお荷物に付属のスタンプを押してください』


「これか!」


ローエンさんがカウンターの下から変なマークのスタンプを取り出した。漁ったせいで、辺りにホコリが飛び散る。


スタンプのインクが本に染みないか心配だったが、それは不要だった。

押したらマークが光り、そしてすぐに消えた。


『完了致しましたら、こちらの紙に先ほどの液体をもう1滴垂らしてください。お荷物はこちらの紙に書かれた住所に責任を持って飛ばします。なお、郵送の取り消しはこちらの紙を破って頂ければ大丈夫です。音声案内をもう一度再生される場合は液体を2滴垂らしてください。

それでは、音声案内を終了します。本日のご利用誠にありがとうございました』


「2滴な……って、違ーーーう!! 1滴だ! 危ねぇ」


ねぇ、本当に大丈夫なの?



郵送は静かに始まった。

スタンプを押した順に本が光っていき、最後の本が光るとそれらは紙と一緒に細かな光の粒子となって跡形もなく消えた。


「綺麗だね、小春」


うん、確かに凄く綺麗だった。神秘的に見えたが、彼らの世界では普通なのだろう。





「ローエンさん、お代はいくらですか?」


すると、ローエンさんは目をパチパチさせて


「お嬢ちゃん知らねぇのか?教科書類は魔法協会から無償で与えられるんだぞ。ただし最初の1冊目だけな」

と言った。


日本でいう税金の教科書みたいなもんか。


「それは初耳でした。なんか得した気分です! ありがとうございました」


「おうよ! また本買いにこいよ」


ローエンさんの陽気な声を背に書店を出た。





























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