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プロローグ「鈴木海」


 芳醇な酒と中世ヨーロッパを連想させるサクサクっとしたバケット、あとはなんだろう。とても気持ちのいい夢だったのだけど今はっきり思い出せるのは提出期限間近の未完のレポートと東から太陽が出てきているという事実だけだ。それを真実と信じるのには多少時間を要した。なぜなら本日10時きっかりが徹夜漬けで仕上げるはずだったレポートの提出期限だからだ。要するに彼は動揺し焦ったのだ。寝てはならない時に眠くなり、眠りたい時に寝れない、若者の性と言ってもいい。そしてタチの悪い事にそういった時にいい夢を見たりとても素晴らしアイディアが生まれたりするものだ。昨夜彼は思いついてしまったのだ1年とちょっと想い続けている彼女の名前を聞き出す方法を。

僕の名前は鈴木海<スズキカイ>本当にこれでもか!というくらいごくごく普通の男子高校生。学校に行って月曜日はジャンプの自分の好きな漫画だけ立ち読みし店員に睨まれるとすぐに帰路に着く。友達は多くもなければ少なくもない家庭環境も悪くは無いし悩みも多分人並みだった。ここのだったという過去形が重要なのだ。今僕は人生史上最強最悪の悩みを抱えている。それは正に「恋」だ。小中と数回そういった機会があった。だが僕はなぜだかその当時色恋沙汰には全くの無関心だった。今ではこれほどに「愛」だの「恋」だのを求めていると言うのに。

1度目は公園のブランコで告白された。女の子が色々前座を述べ「〜好きなんです」と告げられ僕はまだ続きがあるものだと思い黙って待った。だがその「〜好きなんです」には「。」がついていた。それに気づかない哀れな僕は15分ほどの沈黙を耐えようやく自分のターンだと悟った。そこからは良く覚えてはいないが1時間ほど女の子とブランコで沈黙の武闘会を開いて告白されたはずの僕がなぜか振られた。ブランコが恐怖になった。

2度目は中学三年生の時一緒に同じ高校を目指し同じ予備校で勉学に励んだ女の子。

断わった事に罪悪感を抱きその塾を辞め志望校に落ちた。ちなみにその子は前期入試で合格した。

そんなこんなで16年間ためにためた僕の恋の芽は高校1年の桜が散った頃に開花したのである。

 第一志望に落ちた僕は第二志望の高校へ行く事になった、家から学校までは京阪電車を利用して丁度30分程度である。僕の16年間閉ざされ錆び付いた恋の扉を一瞬でこじ開けた彼女とはその通学途中のとある雑貨屋で出会った。

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