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9.既知との遭遇!⑤

 俺とエリカが改めてバアルの方へ視線を戻すと、あちらさんの準備も完了目前だった。


「おー、いるわいるわ」


 さっきまでよりもさらに増えて、もう一面ゴツいので埋め尽くされとる。ざっくりスキャンしてみると――オーガゾンビLv45、トロールゾンビLv63、ツインヘッドタイガーゾンビLv66、ロックドラゴンゾンビLv78……などなど、ゲームなら中ボスぐらいになりそうなのもズラズラ並んでやがら。


「5000ぐらいはいそうですね」


 エリカもバードウォッチングさながらの目つきで眺め回してる。


 うーん、スキャンの応用で個数カウントとか出来――た!? このスキャン便利だなぁ。


 えっと、総数5288体か。おお、すげーなエリカ大体合ってるぞ?


 5000オーバーvs4。まあ、普通なら絶望通り越して笑うしかない戦力差だわな。


 別の意味で笑うけど♪


「じゃあケンタさん中心、私とアイリさんは右翼、ルクルファルナさんが左翼で。ケンタさんは私たちと距離を保つように」


「おうよ」


 エリカの手早い分担決めに俺はうなずいたけど、アイリさんとファルさんがおろおろしてた。


「私、足手まといなのに……」

「わ、わわわ私が左側のをですか?」


 無理もないっちゃ無理もないか。アイリさんなんかモロ一般ぴーぽーなんだし、ファルさんだって現実のガチバトル向きじゃなさそうだしなぁ。


 しかぁし、今は違うのだよ。


「だ――」

「大丈夫ですよ。アイリさん、貴女は今この世界最強の盾なんですから。私の前で堂々と立っていれば、相手は勝手に自滅してくれます。ルクルファルナさんも現実世界で夢魔の能力を全開で使える上にバフまでかかるんですよ? あの程度の相手に遅れをとる理由は皆無です」


 い、言おうとしたセリフをっ……いやそれ以上に理路整然とエリカに言われちまった。


 何か悔しいっ。二人とも「そ、そうでしょうか」とかさ、俺が言ってもそんなあっさり納得してもらえなさそうなところがさらに悔しいっ。


 とかしてる間に、バアルの準備が整ったらしい。向こうから高笑いが聞こえてきた。


「ふはははは! いかがですか、我が死霊軍団は!」


 あ、確かに実体化が完了したっぽいな。うーん圧巻だのー。


「召還が終わるまで待っていただけるとは随分と余裕がおありのようですが、そう容易くいくとは思わないでいただきたい!」


「「「「……あ。」」」」


 ホンマやっ!∑(゜□゜;)


「……こほん、ふん! 万全で挑んで叩き潰されれば貴方とて諦めもつくでしょう!? 身の程を思い知ってもらおうと思いましてね!」


 咳払いしてから声を張り上げてるけど、オマエも「あ」って言ってたからな? ひきつり笑いになってるからなエリカ?


 つか、ちょーっと確認したいんだけどバアルくぅん?


「おーい、俺ってお前の上司じゃなかったっけー? 上司に大軍けしかけるってどーなのさー?」


「恐縮ながら、魔神王様は少々混乱されているかと存じます! まことに遺憾ながら、全力をもってHPを削らせていただき、しばらく封印させていただきます!」


 ちっ、状態異常認定に逃げやがったか。混乱って俺アビに状態異常無効あるんだってのよ。


「万一亡くなられてもご安心を! 私の死霊魔術でアンデッドとして蘇れますので!」


「いっぺんデッド沼から上がってこいやオマエはっ!!」


 何がお前をそこまでアンデッドに駆り立ててるワケ? お前の脳内選択肢わデッド一択なの? 他にもあるでしょーが、俺TUEEE系ルートとかキャッキャウフフ系ルートとかさあ?


 言ったろーがよ、俺の萌えはさあ、無駄に露出しまくりのメイド服なのに下着着てなくて羞恥に悶えるアイリさんとかさあ、温泉で素っ裸で屈辱に耐えながら俺の背中を流さないといけないエリカとかさあ、Pコートの下はエロ下着だけなのに夜の公園でコート脱ぐよう命令されて身悶えするファルさんとかさあ、そーゆーのなんだよおっ!


 どーせゴーレムだから意味ねえけどなっ!!(゜Д゜#)


「ってアホかあ! ゴーレムがアンデッドになるかーい!」


「なりますよ?」


 ツッコミ入れたら横からツッコまれた!?


「ウソぉっ!?」


「普通のゴーレムは無理ですが、貴方は魂がありますからね。まあ、機能停止したゴーレムが再起動するようなものですが、魂が束縛されますからバアルの奴隷化ってところでしょうか」


 俺のファンタジー常識が覆る上に、物騒なことを付け加えるエリカ。


 アイツの奴隷だと? じょーだんじゃねぇわ!


「それではお手向かいいたします魔神王様!!」

「ジョートーだよ、こいやゴルァ!!」


 バアルと俺の怒号を合図に、アンデッド軍団が駆けだした。怒濤の勢いでこっちへ迫ってくる。


「それでは打ち合わせ通りに!」

「おうよ!」


 ノリノリかつ機敏なやりとりしたのは俺とエリカだけ、アイリさんとファルさんは「えええ!?」と動揺丸出しだったけど、それでも左右へと散り出した。


 アイリさんにはエリカが付いてるからいいとして、問題はこっちだよねー。


「ファルさん! 領域、領域展開して! それだけでいいから!!」


「えええっ、ど、どうすれば――」


 あ。(゜∇゜)


 どーすればいいんだろ? 俺も分かってないわ。


「と、とにかく夢の世界イメージして、それをガッと広げる感じで! 自分の周りに!」


「えええ!?」


 土壇場で慌てる俺とファルさんのやりとりの間に、ゴツいアンデッドさんたちがガンガン突っ込んでくる!


「大丈夫! 君なら出来るっ!!」

「はいいいぃぃぃっ!!」


 どっかで聞いた無責任丸投げセリフみたいな俺の言い方、だけど素直(必死?)にファルさんは応える。


 ドドドドドドドドッ!


 エンカウントまで数m、つまりあと一歩、つか目前の距離っ!


「ええーいっ!!」


 両開きの引き戸を思いっ切り開けるみたいに、両手を広げるファルさん!


 ド――――


 アンデッドどもの足音が止まった。


 というより消えた――つか地面ごと消えとるっ。ファルさんの周りに現れたピンク空間内のアンデッドが宙に浮いて、急に消えた地面に戸惑って足をバタつかせとる!


 それを見下ろすように浮いてるお方が一名。


「なるほど、こういうことですのね♪」


 キターーー! エロかっけーファルさんキターーー!


「まさか現実でこの姿になれるとは……さすがはご主人様から賜ったアビリティ、素敵ですわぁ♪」


 妖艶に微笑むファルさん。うーん、やっぱエロいっすねー、眼福眼福♪


 その微笑みに壮絶さが混じるっ!? 目がコエェッ!


「ここでなら思いのままですけれど……腐ったナマモノは趣味じゃありませんの。目障りよ、燃え散りなさい」


「ギィイエヤアアアァァァ!!!」


 ファルさんの一言で、浮いてるアンデッドが一斉に発火して、んでドンドン燃え尽きていく!


「ホーッホッホッホっ! 自然発火率極大、鎮火率極小の夢の世界よ、存分に味わいなさいな!」


 高笑いと共にファルさんがピンク空間を一気に拡大。半径50mぐらいかな、俺のすぐ近くまで広がってきた。


 ピンク空間に巻き込まれたアンデッドたちが速攻火葬に処されていく。つかスゴいな、相当数が瞬殺じゃん。


 えっと、数は――5288→4917って、今の一連で300以上狩ったの!? エグいな!?


 ……そんなスゴい火力なんだろうか――


「ってうおおっ!?」


 怖いもの見たさでちょっと手を入れてみたら、見事に燃えた! この金属ボディでも何故か火がついてガンガン燃え上がったよ、マジかー。


「おっと、気をつけて下さいなご主人様。この夢空間は不燃物でも枯れ木並みに燃える設定ですのよ?」


 ファルさんがさらりと微笑みながら言ってるけど、何そのご都合空間っ? 領域創造ってチート並みかよ!?


「オッケー了解よっく分かった! だから、もちょっと距離とって! 危ない、危ないから俺が!」


「はぁい♪……先ほどの妄想、ちょっとステキでしたわよ? ご主人様♪」


「へ?……ナ、ナンノコトデショウ?」


 カタコトになる俺に、ファルさんがにやっと意味深に笑う。


「コートの下は首輪にリードだけというのもそそりませんこと?」


「……ノゾイテ、オラレタ、ノデショウカ」


「うふっ」


 イヤあぁあぁあ!! 恥ずか死ぬぅぅぅっ!!!


「では行ってまいりまぁす♪」


 投げキッスしてからファルさんがゆっくりと離れていく。と同時にアンデッドを巻き込んで上がる火柱。


 何か、移動要塞が範囲殲滅してるみたいなイメージだな。あっちの方がよっぽど魔王っぽいんですけど?


 カッ!

「ギエエエェェェァァァ!!!」


 ファルさんに気を取られてたら逆の方、右翼方向が光って断末魔が響き渡ってきた。


 驚いて振り返ると、エリカとアイリさんの周りにぽっかりスペースが空いてる。エリカが何か呪文撃ったんだろうなコレ。


「ふむ。これはいいですね。MP消費は半分程度、魔法発動までの時間も短縮、何よりさして集中しなくても容易に発動させられるとは」


 超冷静に分析しとる!? ココ戦場よエリカちゃあん!?


 案の定?アンデッド第2陣がエリカたちへ突っ込んでいく。というのに、エリカは「ということは複数の呪文を同時に発動させやすくなるわけで……」とブツブツ考えこんでやがる。


「エ、エリカ様っ!?」

「今なら同時発動だけじゃなく組み合わせて、複合させた……」


 没頭するエリカに焦るアイリさん。って、拳圧ぶっ放したら二人を巻き込みそうだし、かといって俺に群がる奴らが邪魔で駆けつけられねえっ!


 それ以前に“魔神王の威光”貸しっぱだから手間取るっ。素のステだけってのは結構キツいなコレ!?


 はよ帰ってきて働けや悪徳大神官――ってマジやばい間に合わねえ!


「ちょエリカあああぁぁぁ!?」

「ダメーーー!!」


 俺とアイリさんの叫びがハモって、アイリさんがエリカを庇うように抱きつく。


 ドドド――ドゴオォッ!!


 アンデッドの群が弾け飛んだあっ!? アイリさんにぶつかったそばから、片っ端に吹き飛ばされてるぞ!?


「あ、あら?」


 きょとんとするアイリさん。突進かまそうとしたツインヘッドタイガーゾンビは逆に吹っ飛ばされ、オーガゾンビやトロールゾンビが振り降ろす一撃ははね返って、いや倍返しになって――って。


 あ、そっかコレ新アビだ。


「……だから言ったでしょう? 貴女は最強の盾なのだと」


 エリカが平然とのたまう。ちょっとモゴモゴと聞き取り難いけど。


 うん、分かるけど、知ってましたけど、いや正直言いますゴメン忘れてて慌てましたハイ、ケドどっから来てるのさその度胸は?


「しかしこれは……推測を上回りますね……」


 だろ? だよね? 俺がアホなだけじゃないよね? しかし声が聞き取り難いなぁ、何かに埋もれてるみたいだぞ?


「思った以上のサイズ、着やせするタイプでしたか……」


 ん? サイズに着やせ? 何言ってんだエリカの奴――ってうおおおぉぉぉい!?


 むむ胸っ、アイリさんの胸に顔を埋めてやがるよアイツ!


「ちょ、ちょっとエリカさ――ぁんっ!」

「その上この柔らかさ……何ですかこのふわっふわは」


「そこ詳しく!!」

 そんな場合じゃねえだろ!! 


 って、しまった本音と建て前間違えた!


「服の上からでも分かるこの張りと柔らかさ……手が埋もれる……一体何を食べればこんな凶器が出来ると、まったく……」

「あっ、やめっ、こんなところで、ぁあんっ」


 あぁんのやろおぉぉぉなぁにを揉みまくってやがんじゃあああっ!


 代われえええぇぇぇ!!щ(゜Д゜#щ)


「不公平です不平等です理不尽です不条理ですこのこのこのこの」

「ふあっ、や! ダメ、んぁっ、そこは、はぅんっ!」


 マッサージ機エリカの手揉みモード「強」スイッチオン、さらに「そこもっと」スイッチもオン。コンプレックスからか一心不乱の揉みまくり。揉まれまくるアイリさんの体がビクンビクンって……。


 何故俺はエリカじゃないんだあああぁぁぁ!!(血涙)


 唐突ながらここで客観視すると、次々と弾け飛ぶゴツくてグロいアンデッドの中心地で、繰り広げられる美少女同士のイチャコラの図。


 ……。


 俺の緊張感は旅に出たようです。


 ドゴンッ!!


「あだっ!?」


 惚けてたら横っ面に衝撃がっ? って、フルスイング終了後のトロールゾンビの姿が目に入る。


「んにすんだよ!」


 も一回振りかぶろうとしているツラに拳骨、吹っ飛ばしたった――そばから腕(金属製のムチみたいなトコ)をツインヘッドタイガーゾンビに噛みつかれ、ロックドラゴンゾンビに頭突きを食らい、オーガゾンビが群がってくる。


「このっ、おどれらあああ!!」


 頭に来て正拳乱打、取りあえず群がってくる奴らを軒並みぶっ飛ばす。


 にしても、オーガ相手にも一発ずつ、ロックドラゴンには3発ぐらい叩き込まないと倒せないとは……。素のステだけってのは意外とキツいなっ。アビの効果って大きいんだなチクショウっ。


 殴っても殴っても次から次へと湧いてくるイメージ、何気にジリ貧っぽい。数が多いってんだよおおう!?


 言ってる間にまた団体さんにのしかかられてう、埋もれるっ、腐った肉の間だからアイリさんの「ケンタさん!?」って叫び声が……。


 大口叩いといて、格好悪ぃなあ俺。


「やれやれ、手の掛かる人ですね、全く……」


 エリカが何やら言っとる……どーせ悪態吐かれてるんだろーなー……。


「術式“清き祈りの泉”を三重展開、三角形の頂点に配列、もっとも単純な魔法陣にて結合――よし」


 何かややこしいセリフが? 何だありゃ?


「complex magic、清き祈りの海(An ocean of holy-prayer)!!」


 エリカんところが眩しい!? んで光の波、いや津波が押し寄せて――


「ゥゲギァアアアアアアア!?」

「あんぎゃあああああああ!?」


 響き渡るアンデッドと俺の絶叫! この津波熱いっ、何かすっごく熱いんですけどーーー!?


 と思ったら、急に何ともなくなった。それどころか、とぉっても暖かくて、なぁんか気分良くなって、すっごいハッピーな感じ……ふわふわする……おそらにういてるみたいでちゅ……したにもあいぞうが……って待てやモアイ像が下!?


 成仏しかかっとるがな俺!


「殺す気かエリカああああああっ!!!」


 ダッシュで体に戻って(どうやったかは自分でもよくわかりませんっ)叫ぶ俺、あっぶねえ消えるとこだった!


「足手まといに手を貸して文句を言われるとは。割に合いませんね全く」

「無差別攻撃をオーダーした覚えは無いっ!」


 ああ殴りたいっ、あのヤレヤレ理不尽な話ですって顔した外道大神官を張り飛ばしたいぃぃぃっ!


 しかし何だ今の呪文? さっきエリカがやったのよりも格段に強力だぞ? 2倍、いや3倍以上の範囲がきれいさっぱりと……1000匹近くは消したんじゃないかコレ。


 向こうでピンク要塞もガリガリ削りまくってるみたいだし、えっと数は……2471体? もう半分いってるの? しかも秒でどんどん減ってるし、えっげつねぇなー。


 ……つーか、俺が一番役に立ってなくない?


 嫁と愛人と奴隷がスゴすぎる。俺、おんぶにだっこ状態じゃない? こういうの何て言うんだっけか。


 その、あれだ……そうそう。


 ……ヒモだね★(゜∇゜)

各話ごとにオチをつけるつもりだったのに、ちょっと続けることにしたら……まだオチない(爆)

オモシロイのを目指してますが、実際、書けてる人ってスゴイなーと思うですね。

ま、めげずに続き考えまーす。

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