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8.既知との遭遇!④

 後ずさったバアルに詰め寄るみたいに、前へ一歩。


「こぉんのバカ野郎がぁ……」


 ガチにらみ利かす俺の目に、バアルの顔がひきつった。それに気付いたらしいエリカの声が後ろから届く。


「ちょっと、待ちなさい! それ以上は――」

「やかましゃあああ!!!」


 エリカを一喝で遮る。俺以外の声で「くっ!」とか「きゃあっ!」とか聞こえた気もするけど、知ったこっちゃねぇわ。


 コイツはぶちのめす。コレ確定。(#゜Д゜)凸


 圧されてたバアルが「か、かくなる上はっ」とか言って後ろへ、遠くへ飛び退いて何やら始めた。魔法陣っぽいものが次々と浮かんでくる。


 お? やろうってのか? ジョートーだよゴラァ!


 俺が指をゴキゴギ鳴らしてる合間に、エリカの「ちっ!」って舌打ちが混ざった。


「待てって言ってんのよ――Judgment ray!!」


 唐突に視界が真っ白に――ってあ熱ゃゃゃーーーっ!?


「ぁぁぁーーーって、いきなり何すんだよっ!?」


「待てって言ってんでしょ! あたしたちまで威圧してどーすんのよアンタはっ!?」


「へっ!?」


 エリカへ怒鳴り返したら、その周りも目に入った。


 青ざめて必死の形相のエリカの後ろに、アイリさんとファルさんが抱き合いながら震えてる。


「あ、あれ? どしたの?」

「アンタのダダ漏れ魔力に当てられたのよ!」


 きょとんとしてたら、エリカが勢いよく怒鳴ってきた。


「このおバカ!」


 普段と、あの人を小馬鹿にしたような丁寧な口調とは違う、同級生のツレに言われるみたいに怒鳴られた!?


「いやいや、だって許せんでしょ!? 二人を殺そうとしたんだぞアイツ! アビリティ貸すの間に合わなきゃアイリさんアウトだったし、大体お前には“魔神王の威光”貸せないんだぞ!? めっっっちゃ焦ったんだからな!?」


 不本意な罵倒に面食らいながらも反論する俺。


 ったく、好き放題に言いやがって。ちゃんとレジストしてくれて本っ当に助かったわ、いやマジで。心臓止まるかと思ったわ(心臓ないけどな)。おま俺がどんだけ心配したか少ーしぐらいは分かれってのっ。


「……心配、してくれたの?」


「当ったり前だろーがよ!」


 何当たり前のコト言ってんのコイツは? 他に何があるっつーんだよ、頭でも打ったか?


「そう……ありがと」


 何だか分かんないけど、妙にしおらしくエリカが小さく言った。


 ん? 目線合わさないし、何か髪いじってるし、ちょびっと顔赤い? マジで具合悪いのか?


 まさか、レジストしきれてないとかないよなっ!?


「おいおいっ、マジで大丈夫――」

「だ、大丈夫だからっ!!」


 顔をのぞき込もうとしたらエリカに思いっ切り引かれながら叫ばれた!? 


 えー、そんな引かんでもいーじゃんよー、心配したのに引かれるのってダメージ大きいんですけどー(´;ω;`)


 凹む俺を、きょとんとしながら見るアイリさん。その横で、ファルさんがわざとらしくため息を吐いた。


「あらあら。そっちは素養無いみたいですわね」


「素っ!? ナニソレっ!?」


「何でもありませんわ。うふふ……」


 俺があからさまにキョドるのを楽しそうに眺めるファルさん。ちょっと何? 何なのその含み笑い? この上まだナニかあるとでもおっしゃるの!?


 その意味深な笑顔ヤメてっ! 怖い、怖いからっ!


 うろたえる俺を見て、アイリさんの表情が緩んだ。「もう、ケンタさんったら」とかつぶやいて小さく笑う。


 うん、その方がイイっす、やっぱり可愛い子は笑顔じゃなくっちゃ!


 と、すーーーはーーーと聞こえた。エリカが深呼吸しとる。


「おほん。とにかく、貴方のせいで状況は悪化しました」


 おおっ、いつもの口調に戻――


「ったとたんに言うことソレかよ!?」


 デフォ毒舌なの何とかならんのかお前はっ?


「見ての通り、厳然たる事実ですよ」


「はあ? 何を――って、うおっ!?」


 エリカが指す方へ振り返って、びっくり。


 バアルの周りにイカツい影が湧いてきとる! まだ黒一色だけど、見るからにマッチョっぽいのやらトゲトゲしいのやら人型じゃないのやら、どれもこれもバアルよりデカいし、数も100や200じゃねえしっ!?


「何じゃありゃ!?」


「アイツの得意は死霊魔術、アンデッドどもを大量に扱えるんです。貴方が追いつめるものだから、呼び出せる限りのアンデッドを片っ端から召還しまくってるんですよ」


「マジか?」


 そーいや死霊術がどうとか言ってたもんなぁアイツ。それにしてもすんごい数じゃね? 単位がよー分からんのだけど、小隊とか中隊を超えて大隊とか言う規模になってねーかコレ。しかも大体が俺(の体、モアイ像)並の大きさなもんだから迫力あるなー。


 で? だから何?(゜Д゜)凸


 怒りの炎、再着火。ブチギレは冷めたけどキレてはいんだぞ? ああん?


「アイツの術は異様にコスパ良いんですよ。真正面から浄化魔法でぶつかったら、アイツの魔力を半分も削らないうちに私の魔力が先に枯渇します。こうならないために、毎度毎度挑発してこちらのペースに引きずり込んでいたのに……」


 ブツブツ言うエリカ。その顔がマジだ。なるほど、コイツなりに苦労しとったんだな。


 けどな、今回はんなこと考えなくても良くね?


 改めて指をゴキゴキ鳴らす俺。


「んじゃ、俺がテキトーに散らすからフォローよろしく」


「話を聞いてないんですか貴方は! 私ではあの半分も削れないと言ってるんです!」


 影の群れを指してエリカが怒鳴った。


 うーん、ありゃ余裕で4桁いってるな。半分削っても3桁になりそうにない。うん、全然ないな。まあ多いわな。


 でもな?


「いや、半分ぐらい俺でイケるんだろ? そーゆー身体なんだろ、コレ」


 そう言って自分をバンバン叩く。この世界で最硬のガタイでレベルカンスト、そーゆー風にしたのお前じゃねーかよ。


 つか、多少ぶっ壊れよーと知るかっ。ヤツは一発ぶん殴らんと気が済まんのじゃっ!


「何を言ってるんですか! 貴方、今、アビリティをアイリさんへ貸し出してるじゃないですか!」


「だーかーらー、アビ抜きのステでもイケるだろっつんでんだよこの身体なら。俺がやれるだけやって、残りはお前が仕留めればいいじゃんよ」


 エリカがまーた怒鳴り始めやがった。つか、余計なこと言うんじゃねえってば。


 俺の心配的中。アイリさんの顔が見る見る青ざめてく。


「……足手まといですね、私……」


 あー、ほらもー、アイリさんが気にしちゃったじゃん……って、何だよ慌てた顔して、お前も言ってから気付くなよエリカ。


「あ、いえ、アイリさん、そういう訳ではなくて」


 わたわたするエリカにため息吐いて、なるべく軽い口調でアイリさんへ笑いかけた。


「あの程度相手に足手まといも何もないっすよ、アイリさん。だいじょーぶだいじょーぶ」


「ウソですっ、そのぐらい私にも分かります!」


 アイリさんが泣き顔で訴える。


 うーん、マジレスすると、余裕かどうかは分からんのだよね、確かに。いやだってさ、相手さんがどのぐらいか分かんないんだし。ちょいとググって敵キャラの攻略情報調べられるわけじゃないしねー。


「ケンタさんにこのアビリティを返せば――」

「それはダメっす」


 不穏なこと言い始めたんで、アイリさんを遮る俺。


「だって!」


「アイリさんを危険にさらすなんざ論外っす」


「それじゃケンタさんが!」


「俺よりアイリさん優先っすよ。アイリさんが無事ならそれでイイっすから」


「ケンタさん……」


 アイリさんの目から涙がこぼれ落ちる。


 いやいや、フツーに考えてレベルカンストのゴーレムと一般人なら、心配すべきは一般人でしょ? どう考えてもそれが当たり前だと思うんですけど。


 だ、だからね? そんなに感動されると、ちょ、ちょっと恥ずかしいっつーか、ですから、ね?


 何となく照れくさくなって、エリカへパスっ。


「だ、大体さ、このガタイ破損しても修復出来るんだろ? なあエリカ?」


「え、ええ。それはもちろん可能です」


「ね? 俺的にはアイリさんが安全な方が全力だせるから、ね? この身体を信じてよ、絶対大丈夫だからさ」


 つか、俺としてはまだ不安なぐらいなんだよなぁ。“魔神王の威光”って、何か不完全な防御アビリティなんだよね。このガタイを前提にしてるからか、純粋な物理攻撃とかへの耐性が付いてないっぽいし。


 かといって、攻撃力や防御力を貸しちゃったら俺がただの置物、正真正銘のモアイ像になるだけだ。こんな異世界の戦場で観光名物になってどーすんだっての。


 異世界の戦場に鎮座するモアイ像……。


 虚空を見つめる超然たる瞳……。


 うん、意味なさすぎてもう意味不明ダヨネ★


 俺としては、こう、もっとガッチリガード出来るのが欲しいところだよなー。いっそ悪さしようとしたら倍返し的なのがあればなー。


 その瞬間、アイリさんが淡い光に包まれた!?


「な、何今の?」

「きゃあ!?」

「あら?」

「こ、これはまさか!?」


 驚く一同の中で、エリカだけ何か心当たりがありそうなリアクションだ。


「ちょ、おま、何か知ってんの?」


「……これは、アビリティの付与か変化ではないかと。昔、私が精霊の聖域などで授かったときと似ているんです」


「マジで!?」


 とにかくステチェック、確認!


  名前:アイリ・キャロル

  種族:人間

    (中略)

  アビリティ

 Version up!・魔神王の愛妻

   (魔神王のHPとMPの上位管理権限)

   (魔神王の全ステータスへの強制干渉)

   (魔神王の全ステータスの完全流用可)

   (魔神王のアビリティの無効化)

   (魔神王からの攻撃の完全無効化)

   (同種の下位アビリティ所有者への限定的干渉)

 New!(あらゆる攻性干渉の完全反射及び等倍の追撃)


 何か増えとるっ!∑(゜□゜;)


 いや、コレ、さっき俺が欲しいと思ったのそのままじゃんっ。何、俺ってアビリティの改造まで出来んの?


「……アビリティが進化してますね」


 同じく覗いてたらしいエリカが唖然とした。


「って、こんなことあるの?」

「ありませんよ、普通は」


 びっくりして訊いたらエリカに即答された。


 だよねー。んでも、願った通りのアビが付いたってことは、俺が願えばOK的な感じだったり?


 おっしゃ! んじゃ、アイリさんへの貸し出しをコピーに変更! ついでに俺のアビにもこの反射プリーズっ!


 カモーンっ!!щ(゜▽゜щ)


 ……。


 あれ?


 何も起きないぞ? 何か条件でもあんのかな?


「何をしてるんですか?」


 急に黙った俺に不審そうな目を向けるエリカ。


「いや、さらに進化しないかなー、と」

「そんな都合良くいくわけ無いでしょう」


 またもや即答ってお前な……いや、そりゃそうか。そんなご都合主義行き過ぎなわきゃあないわなぁ。


 ちっ。イケるならエリカの魔法ブーストとか効率化もと思ったんだけどなぁ、魔法のコスパがどうとか言ってたし。ファルさんも、あの夢の中の姿を現実でも出せたら戦闘でも頼りに出来そう――


「はあっ!?」

「ええっ!?」


 って、思ったそばからエリカとファルさんに光がっ? ウソぉっ、まさか!?


  名前:エリカ・リリーディアナ=グランヴィル

     (中略)

  アビリティ

   ・精霊王の盟約(全状態異常激減)

   ・四神獣の加護(防御力大幅上昇)

   ・天空神の祝福(幸運値大幅補正)

   ・世界樹の恵み(低速自動回復)

 Version up!・魔神王の寵姫

   (魔神王のHPとMPを流用可)

 New!(使用魔法の効果増幅及び使用MPの効率化)


  名前:ルクルファルナ・アシュリアム

     (中略)

  アビリティ

   ・魅了(対象への軽い精神干渉)

   ・夢魔の加護(特定領域内でのステータス・アビリティ上昇)

 Version up!・魔神王の夢魔

   (全ステータス・アビリティ上昇)

   (魔神王のHPとMPを限定的に流用可)

   (魔神王のアビリティを限定的に借用可)

 New!(精神世界を現実の一定範囲内で領域として創造)

    ※上記全て魔神王が許可する限りにおいて有効


 出来たしっ!?∑(゜□゜;)


 何で? どして? 法則性がまっっったく分からんのだがっ!?


 ……だがしかーしぃイッヒッヒッヒ。


 理解が追いつかないっぽいアイリさんとファルさんと違って、エリカはニヤリと笑いかけてきた。


 わぁお、わっるーーーい顔してるぅ♪って多分俺もだけどーーー♪


 悪党顔×2。


「……やるかぁ」

「……やりましょうか」

続けてup作業中・・・→しました。

は、話が長引いて終わらないっ。

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