7.既知との遭遇!③
そーだったっ、この結婚の呪い(って何じゃそら)、離れたら即死のペナルティあるんだったあっ!
逝っちまったサブシステムが緩和してくれたおかげで、100mまでの距離は大丈夫だけど、さすがに魔界まで100m以内ってこたーないわなー。
まずい、まずいって! この交換条件って死刑宣告じゃんよ!
「な、なあバアル、さっきの条件、もうちょーーーっとだけオマケしてくれたりは……」
「あれが最大の譲歩です」
おずおずと言ってみたけど、やっぱダメだったっ。即答で斬り捨てられたあああ。
「あまり夜更かししないでくださいね……ゴーレムだからって心は人間なんですから、やっぱり良くないと思うんです……」
いかんいかん、アイリさんがどんどん突っ走ってるっ。
そっちはダメだってアイリさんっ、それバッドエンドだからっ!
誰か止めてえええっ!
「冗談じゃありません、お断りです」
俺の苦悶にエリカが応えてくれたっ!?
「私は死ぬのは真っ平御免です。そんな条件で勝手にまとめないでくれますか?」
「えりかあああぁぁぁ」
毅然とした態度が女神に見えるぅっ。
「は? お前が死ぬだと?」
首を傾げるバアル、ってそうか、その辺のことコイツ知らないんだもんな。
割り込むチャーンスっ!!
「そ、そーなんだよバアル、ちょっとイロイロあってな、エリカとアイリさんは俺から離れると死んじまう呪いがかかってるんだよ」
「ほう、それは素晴らしい! “王国の魔女”が死ぬオマケまで付くなら申し分ありませんね」
ココで今日イチの笑顔かよ! そのキラキラ爽やかフェイス控えめに言ってもブン殴りたいっ!
「いやいや、エリカはともかくアイリさんまで死んじゃうっての!」
「『私はともかく』?」
おおっと失言っ! 後ろに敵が増えたっ、殺気が冷てえ!
「じゃなかった! えっと、そーだ、王国から魔界に通勤でこの二人は例外とかさ、もうちょっと色つかねーかなっ!?」
エリカの冷ったーーーい視線から逃げるように交渉。
とにかく、二人が死なないようにしなければっ!
「汚らわしい人間を我らの地に通すなどと……」
「そこを何とか!!」
とにかく押すっ! 横で「だから勝手に話をするなと……」「ケンタさん……」とエリカとアイリさんが言ってるが、かまわず押すっ!!
通じろっ! 魂の叫びぃっ!
「……その二人と一緒ならば良いのですね」
「そう!!」
お? 折れる? 折れてくれるのバアルくん?
さっすがソウルメイト、ありがとう友よ!
「ならば殺してアンデッドにしましょう」
「何っでやねーーーんっ!!!」
さらっと本末転倒しやがったよコイツ!
ことごとく逆行ってんじゃねーよ! お前はアレか、ボケか? ボケ担当キャラなのか?
「アンデッドなら人間ではありませんから問題ありません」
「問題しか見当たらねぇわ!!」
んだよその謎のアンデッド押しは!?
「ですが、私の死霊術ならば、その鮮度を保ったままでアンデッドに出来ますが。魔神王様に絶対服従、言いなりに出来ますよ?」
「……言いなり?」
バアルの提案、つか誘惑。
「その二人にご執心ならば生き人形にしてしまえば良い。そうすれば全て貴方様の思うがまま、思う存分欲望を満たせるではありませんか」
「……生き人形……」
さも当然と言わんばかりのバアルに、「何を寝ぼけたことを」とエリカが吐き捨て、「そんな……」とアイリさんが顔を覆う。ファルさんだけが、「まあ、魔族的にはアリな考え方ですよね」とうなずいていた。
言いなりの生き人形ねー。何を言われても眉一つ動かさず従ってくれるってさー。つまり、さっきのファルさんの夢みたいなこと、いやそれ以上のことでも、全部まるっとさらっとOKなんだろーねー。
「いかがですか?」
……ふっ。
「……フザケてんじゃねぇぞテメエ」
俺のマジトーンでバアルの顔に意外そうな表情が浮かんだ。
「ま、魔神王様? 何かご不満な点がございましたか?」
「しかねーわっ!!」
吐き捨てる俺。バアル以外のみんなもきょとんとした顔になった。
「あ、あの、ご主人様的には理想的な話では……?」
ファルさんがおずおずと言った。あの夢の一件をふまえてのことだろうね、俺の妄想を直で覗いてそう思ったんだろうねー。
俺の中の何かが決っ壊ぃぃぃっ!!
「ちっがーーーう!! 生き人形だあ? 言いなりだあ? んなもん論外だっての!!」
俺の叫びに、エリカの目が丸くなり、アイリさんの顔が輝く。
「い、意外とマトモなことを……」
「ケンタさん……っ」
アイリさんの感涙を背に、俺が叫ぶっ!
「そーじゃないんだよ、そーじゃないんだってば! 生きてるからいいんじゃん、意思があるからいいんじゃんよっ! ちょっとイヤって感じが漂って、かつ恥じらってるのがいいんじゃん!!」
「「「……はあ?」」」
エリカ、アイリさん、ファルさんの一言ハーモニー。
「エロ恥ずかしい格好させられて、嫌がって顔赤らめてるからグッとくるんでしょー!? ちょっと涙目だったり困った顔だったりするのがそそるんでしょー!? 言いなりだの生き人形だのじゃ萌えねーじゃんかよっ!!」
「……この男は……」
「……ケンタさん……」
って、あれ? エリカとアイリさんとの距離が開いた気がする?
……ああっ、言い過ぎた!?
「い、いや、無反応がイイっていう意見を否定してるわけじゃないよ? そういう趣味嗜好の方がいることは理解してるし、自由だと思うんだけどさ、俺の好みとしては違うってことだけで……」
「ソコじゃないです」
俺の弁明をエリカが一撃で斬り裂く。そして、パニクる俺にファルさんが感心したように言った。
「ご主人様って、ちゃんと素養がおありだったんですね」
「そ、素よっ、何の!?」
どもっちまった俺、俺をっ、ファルさんの視線が這うぅぅぅっ。
何かそのうっとりな視線イヤあっ!!
「うふふ……先が楽しみですわぁ」
「ファルさん認定っ!?」
ゴーレムフェチのアナタが言う!?
「いやああああああ!!!」
頭を抱えて俺絶叫っ!
あの濃ゆいキャラ&フェチのファルさんが俺を……俺、へんた……いや、いやいやいや違う違う、俺はノーマルだ俺はノーマル変態じゃない変態じゃないよ変態じゃない……。
「いえ、ちゃんと育てればいずれは花開きますわ……」
って声にで出てたっ? ファルさんがにっっっこりと微笑んでるぅぅぅっ。
「どんな花か楽しみですわぁ」
「育成しないでっ!?」
ヤメて!? そんな育成シミュレーションいらないから! その育成ゲー断固拒否るから!
俺がパニクる中、取り残されてたバアルが咳払いを一つした。
「んん……少々理解しかねますが、魔神王様としては、その二人に自我があることをお望み、ということでしょうか?」
「そ、そう! その通り!!」
何か話のノリが全然違うけど、いや違うからコッチに乗る! アッチだとヤバい、ファルさんがスタート押しそうでとにかくヤバいから回避一択!
うっとり目と冷たい目とどん引きの目から逃げてバアルへアピールっ。
「そーなんだよっ、自我大切、生き人形ダメ絶対!」
「なるほど……」
腕を組むバアル。
お? ついに魂の叫び通じた? つか、もうリアルに叫びまくってるんだからソウルフレンドとか関係なく通じるよな? これで通じなかったらバカ確定だぞ?
「では、自我を持ったアンデッドにしましょう」
「こぉんのおバカあああああああああ!!!」
思わずブリッジ並に仰け反って叫ぶ! モアイなのに俺!
ダメだバカだ、話が通じないタイプのバカだコイツ!
「任せて下さい、きっとご満足いただけますから」
自信満々なツラしてんじゃ――って、ちょっと待てお前、何片手かざしてんだよ? そこに浮かんでる魔法陣何? 何をしようと――
「ちょっと!」
「きゃあ!?」
エリカとアイリさんの悲鳴に慌てて振り返る。二人の足元にも魔法陣が浮かんで、光があふれて、エリカがもの凄い速さで防御陣を展開して、でもアイリさんはーー
って待てやゴルアっ!!!
バチンッ!!!
二人の足元の魔法陣が砕ける。エリカのは防御陣で相殺、アイリさんのは単純に消滅。
目を丸くするバアル。
「ぬっ!? 魔女はともかく、ただの人間までがレジストするだと?」
「……俺が貸したんだよ」
「貸す?」
“魔神王の威光”をなあ。神聖属性以外の魔法ダメージ軽減、一定レベル以下の魔属性攻撃無効化、全状態異常無効化の三重効果で無効化されたんだよお。
つーか、テメエ……。
「おいバアル……テメエ、二人をアンデッドにしようとしやがったな?」
エリカがレジスト出来たから、俺の貸し出し(つか押し付け)が間に合ったからいいようなものの、マジでリアルでガチでやろうとしやがったなテメエ。
「いや、私はご期待に応えようと……うっ!」
少しだけ慌て気味のバアルをにらみつけると、バアルが
気圧されたようにたじろいだ。
何かに押されるように後ずさるバアル。
「きゃあっ!?」
「ご、ご主人様!?」
「ちょ、ちょっと! 落ち着きなさい! さっきのバアルよりも魔力ダダ漏れてるわよっ!?」
アイリさんとファルさんの前に回り込んだっぽいエリカが何か言ってるけど、聞っこえねー耳に入らねー頭に入ってこねーなぁぁぁああん?
「殺すぞ?」
お前なんかダチじゃねえええっ!!!(#゜Д゜)凸
続けてupの準備(作業)中→しました。