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6.既知との遭遇!②

「で、結局、何しにきたんです? バアル」


 腰に手を当てて、ロコツに面倒くさそうに言うエリカ。


 襟元とか直しながら、バアルが咳払いを一つ。


「知れたこと。魔神王様をお迎えにあがったのだ」


「へ? 俺を迎えに……って、ドコに?」


「もちろん、魔界です」


「はい!?」


 魔界ってホントにある――って、そういう世界か。

 何で俺なんかを迎えに――って、魔神王だからか。


 驚いたそばから納得しちゃったよ。


「あー、そりゃそうか。そっすよねー」

「却下します」


 って、俺の声にエリカがかぶり気味に重ねてきた?


 ……え?

 ナニその反応?

 盗られちゃイヤ的なのだったりする?

 独占欲とか、嫉妬とか混じっちゃったり?


 ……ぬふっ(゜ω゜)


 カワイイとこあんじゃんよ、「この人を盗らないでっ」なんてさー♪


「私のオモチャ――もとい魔導具を勝手に持ち出さないでください」

「って待てやゴラァ!!」


 ものっすごい格下げ扱いを言いかけなかったかテメエ!


「てめ、この、オモチャって言ったよなぁオイ!!」


「あーもー、別にいいじゃないですか、あなたは私の私物なんですから」


 メンドクサそうに言うんじゃねえよ!


「私物て!」


「蒸し返しますねぇ、だから、登録上あなたは私の所有物なんですってば」


「ヒト扱いしろよ!」


「ゴーレムなのに?」


「テメエがゴーレムに設定したんだろーがよっ!!」


 あーもーヤダぁこのヒト話が通じねーっ!


「な……なんだ……と……?」


 あ、バアルがぷるぷる震えてる。

 顔がひきつってるよ?


「私物だの、あまつさえオモチャだのと……ふざけるのも大概にせんか貴様ぁっ!」


 うおっ、イケメンが激昂しはった!


「偉大なる我らが王に何たる侮辱! 人間の分際で不敬の極み、身の程をわきまえよムシケラがあっ!!」


 い、イケメンから爆風みたいなんが吹いてくるっ!?


 変身したり惑星ぶっ壊したりする戦闘民族かオマエは!?


 まあ、俺には何とも――って、いかんっ! 俺はともかくっ!


「「きゃあっ!」」


 とっさにアイリさんとファルさんの前へ移動っ。


「あ、ありがとうございます、ケンタさん」


「いえいえ、ここはタンク役の出番っすよアイリさん」


「すみませんご主人様……ああ、こ、こここの後頭部から首につながるわずかなS字曲面はぁぁぁ……ハァハァハァハァ」


「ってファルさんアンタ何してんの!? パート違うから! ここシリアスパートだから!!」


 興奮のスリスリする場面じゃないっしょ! まじめに話を進めてくんないかなあ!?


 エリカは……やっぱ大丈夫か。ちゃんとレジストしてやがら。


「おーエリカ大丈夫かー?」


「目もくれずに放置しておいて、何を今更」


「悪い悪い、どーせ大丈夫だと思ったからさ。で、あの人、結構強いんじゃね?」


「そりゃあ、あなたの代理を務めるぐらいですからね。ステータススキャンしてみたらいかがです?」


 そだな、ちょっくら拝見っと。


  名前:バアル

  種族:上級魔族

  職業:魔法使い Lv97

  階級:魔神(魔神王代理)

  HP: 9981

  MP:14890

  攻撃力:5129

  防御力:4207

  素早さ:3932

  賢さ :7088

  運  :   0

   (以下省略)


 Lv97っ!?∑(゜□゜;)


 け、結構強えじゃんっ! エリカよりステ上じゃんよ!


 ……ん? あれ?


「魔法使いなん? アイツ」


「そうですよ?」


「えー? すっごい肉弾戦っぽい雰囲気だしてね?」


「魔法力がダダ漏れてるだけですよ、アレは。まあ、確かに、肉弾戦もイケますけどね」


 なるほど。ラスボス感満載だわ。


「で、どーすんのさ?」


「追い返しますよ、いつも通り」


 いや、余裕かましてるけどLv97――って、いつも通りって言ったか? 今。


「やり合った経験ありだったり?」


「何度か」


「戦績はいかほど?」


「全戦全勝です」


「マジで!?」


 アレ相手に不敗!? やるなぁエリカ。


「毎回毎回、懲りもせずに……全く、女々しいったら」

「き、貴様が毎度卑怯な手を使うからだろうがあ!!」


 ちゃんと聞いていたらしいバアルが割り込んできた。


「何を人聞きの悪い」


「待ち合わせ場所にうっすら浄化魔法仕込んだ上で遅刻したり、肉弾戦の決闘でゴーレム大隊を投入したりしといて何を抜かすか!!」


 って卑怯だなオイ!


「……エリカ、ちょーっと汚くね?」


「“誓約”通りにやってますよ、失礼な」


「“誓約”? 何ソレ?」


「あいつの信条らしいんですけど、戦いはルールをきっちり決めた決闘にすべき、だとか。公正な勝負で決着する主義だそうで、毎回毎回、予め分厚い誓約書を送りつけてくるんですよ、破ったら即死の呪い付きのを」


「まーた、生真面目な奴だなー」


 つか、悪魔らしくねえなぁオイ。中世の騎士真っ青じゃね?


「その誓約の重箱の隅をつつくように、毎度毎度抜け穴を突きおってからに! 一度たりとまともに勝負したことがなかろうがあ!!」


「だから、誓約書は守ってますってば。不備がある誓約書を作る方が悪いんでしょう?」


 ……うーん、エリカの方が悪役に向いとるな、こりゃ。


 しかし、そうなると、だな?


「じゃあエリカ、ルール無しの無制限一本勝負なら、実際のトコどうなん?」


「……」


 おや? いつもの憎まれ口がない?


 表情も固いぞ?


 ってことは、マズいのかマジで。


 余裕のないコイツ、初めてかも。いっつも、さんっざんこき下ろしてくれてるもんなあ、コイツは。


 いっつもいっつも、なー……。


 ぬふっ(☆ω☆)


 何か、ちょっと、慌てるエリカを見てみたくなってきた♪


 たまには、いい気味じゃね? ちょっとイタい目にあって反省してもらってもバチは当たらないよねー♪


 ファンタジー世界観なんだしー♪

 スライムに服溶かされるとかー♪

 触手に捕まるとかー♪


 よっしゃ、いっちょ頼むぜソウルメイトよ♪


 絶賛激昂中のバアルに念を送るっ。


「もはや手段は選ばん! 切り刻んで首と心臓だけ残し、魔石に埋め込んで、永遠に呪詛を吐き続けるアイテムにして貴様の王国に叩き込んでくれるわっ!!」


「って、おぉぉぉいっ!?∑(゜□゜;)」


 ちょ、おま、違うだろおっ!?

 俺そんなエグいの送ってねえだろおっ!?


「む? 違いましたか王よ。では、獄炎と回復をかけ続けて、焼かれる苦しみを永遠に与えますか? 苦し紛れにもがくさまは、さぞ滑稽な踊りで、王の気も少しは晴れることかと」


「うおおおぉぉぉぉぉぉいっ!?∑(゜Д゜;)」


 だから違ぁーーーう!! そのエグい発想から離れろよオマエっ!


「ふむ、何かお望みの刑がおありですか?」


 若干冷静さを取り戻したバアルが首を傾げる。魔力ダダ漏れも止んだ。


 よ、よーし俺、落ち着け、落ち着いて話をまとめよう。


 このままじゃ、ホントにガチの魔王ルート直行だ。


 大丈夫、俺はデキる男! やればデキる子だもんっ!


「い、いや、な? バアル、そこまでしなくてもいいんじゃないかな?」


「は? 何をおっしゃいます? この者のやり口に対してなら相応でしょう?」


「あー、うん、まあ……」


 エリカ、普段何をしでかしてきたんだよオマエわっ!?(゜△゜;)


「大体、毎度毎度卑怯な手段ばかりなのですから、因果応報ではないですか?」


「それは、まあ、ねぇ……」


 確かに、卑怯っぽいんだよなぁエリカは。( ̄_ ̄;)


「先ほどの話からすると、王も、此奴には好き放題されているのでは?」


「う、うー……ん」


 はい、好き放題されてます……(´;ω;`)


「王への待遇とはとても思えません。我が国であれば、何不自由無い生活をお約束出来ます」


 え? そうなの?

 ぐらっときたっ、ソコ詳しくプリーズっ。


「ぐ、具体的には?」


「全ての権限と財産は王にあります。衣食住はもちろん最高級、王としての勤めはありますが、勤務規程に則って、残業無しの週休二日に有給は年間40日。余談ですが、健康保険や年金など各種福利厚生も完備です」


 超ホワイトぢゃん!!(゜□゜ノ)ノ


 ホワイト通り越してるよ!


 もうホワイトゴールドだよ、キラキラ輝いてるよ!


 ……かたやブラック王国。

 ……かたやホワイトゴールド魔界。


 あ。


 心の中の天秤、すっごい傾いちゃったよ今。


 ブラックよりホワイトゴールドだよねえ? 当たり前だよねえ? 


「チッ!」


 って、これ見よがしの舌打ち!?

 エリカが超見下した目で見てやがるっ。


「まったく、そんな簡単に釣られないでくださいよ、ダメ男が」

「いやいや、普通の反応だろーがよっ!」


 ダメ男とは失礼なっ。条件比べれば、冷静かつ公正かつ客観的にホワイトゴールド一択だろうが!


「ケ、ケンタさん……」


 震える声が後ろから――って、アイリさんっ!?


「魔界に行かれる……んですか?」


「いや、まあ? その、あれですよ、うん」


 そ、その揺れる瞳ヤメてっ、すっごい胸が痛むからあっ!


「そうですよね……魔界の方が幸せそうですよね……でも、ケンタさんが王様になるんだったら、人間との争いもなくなりますよね?」


「あ」


 そっか、そーじゃんよ!


 戦争やめちゃえばいいんじゃん、俺が!


 アイリさんナイス!!


「もちろん――」

「そんなワケないでしょう」


 言い終わる前に、エリカがきっぱり否定しやがった!?


「エリカ!?」


「試しに訊いてみましょうか? どうですバアル?」


「知れたこと。人間など害虫以下の存在、駆除するに決まっている」


 おおいっ!?(゜□゜;)


「いや、バアルさあ」

「人間との共存などあり得ません、王よ」


 即断で否定って、何だよその強烈な嫌悪感わっ!? そこまで嫌わなくてもいいだろー!?


「“王国の魔女”を見れば人間の本性など知れたものでしょう!! こんな外道ども駆逐以外にあり得るものかあっ!!!」

「テメエのせいかエリカあああっ!!」


 またオマエのせいかよっ!


「またですか、人聞きの悪い」

「明らかにオマエへの恨みじゃねーかよ!」


 テメ、ポンポン危機を量産すんじゃねえよ!


 あ、あかん、この調子じゃあバアルを説得出来る気がしねえっ。でも、このチャンスはどうにかして活かしたいっ。


 ええいっ、言ったらあっ!


「バアル! 交換条件だ! 俺が魔界に行く代わりに、人間の駆除駆逐ナシ! 戦争もナシで、人間とは相互不干渉だ! どうだ!?」


 上司(王)に言われて、さすがにバアルも困惑しとる。


「し、しかし王よ……」

「しかしもカカシもねえっ! でなきゃ俺は絶っっっ対魔界に行かねぇぞ!? さあどうだっ!?」


 反論を突っぱねるために一気にまくし立てる俺。つか、ここはゴリ押ししかねぇっ!


「……分かりました。では、相互不可侵ということで。ただし、人間が一匹でも我らが領土に踏み入れようものなら宣戦布告と見なしますよ?」


 ゴリ押し通った!?


 よっしゃーーー!!\(゜∀゜)/


「OKOK! さんきゅーバアル。アイリさん、やったっすよ俺!」


「……はい、ありがとうございます。ケンタさん」


 ……ん? 何か、笑顔が神妙なんですけど、どしたの?


「ゴーレムだからって、無理はしないでくださいね。傷は直っても汚れはとれないんですから、ちゃんと体は拭いてください」


 あ、あれ? 俺、何かトチった? 変なフラグが立ちそうな雰囲気なんですけど?


「王様だからって無茶はしちゃダメですよ? みんなが幸せになるように、人の意見もちゃんと聴いてくださいね?」


「えーっと、アイリさん?」


 雰囲気に圧されてキョドってきた俺を、ファルさんがつついてきた。


「ん? 何?」


「あの……ご主人様が魔界に行かれて、人間は立ち入り禁止ということは、奥様方とは離ればなれになりますが……」


 まあ、それはそうなんだけど……。


「その、先ほど夢の世界へお招きした際に気づいたのですが……奥様方と、呪いのようなものでつながっていませんか?」


 うん。エリカが結婚の呪いかけやがったから……。


 ……離れたら即死の……の……。


「のぉわああああああああああああっ!?」


 めっちゃ遅れて気づいたっつか思い出したあああっ!!!


 ダメじゃん、死んじゃうじゃんよ!!!

“面白い”ってムズカシイ……。

よければ続きもご覧くださいませ。

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