5.既知との遭遇!①
※本文の体裁を修正しました(2030.2.9)
……m(_ _)m……。
はい、みなさまお察しの通りっす。
土下座なう。
五体投地のイキオイで。
いや、胸像型モアイなもんだから、ガチ五体投地の図。
したがって、これ以上の土下座はあるまいっ!
顔面を地面に埋めつつ、俺は謝った!
「すんません、マジすんませんっした!」
しかし、二人には通じない!
「知りませんっ!」
「クズが」
アイリさん、激おこ。
エリカ、ゴミを見る目。
だが、これ以上の土下座は俺には出来ない――いや、誰にも出来まいっ。
ひたすら誠意を見せるしかないのだ!
俺の言い訳!
「マジすんません! いや、本心じゃないっす! 気の迷いっつーか、何っつーか、本心じゃないんですっ!」
しかし、エリカに(言い訳の逃げ先に)回り込まれた!
「気の迷い? 願望を映した夢がですか?」
「そ、それは……っ」
逃げられない!
エリカの追撃!
「サキュバスの見せる夢は、本人の願望。本心ですよね?」
ぐふっ!
その通りですっ。
俺に2500の(精神的)ダメージ!
金縛りを受けた! 俺(の口)は動けない!
「そ、そ……っ」
エリカの攻撃!
「『何でも思いのまま』とか言われて、好き放題ぶちまけてくれたんですよねえ?」
ぐはっ!
バレてるっ。
俺に3800のダメージ!
俺は動けない!
「い、いやっ、そ、その……」
エリカの攻撃!
「楽しそうでしたねえ? いえ、これからお楽しみのはずだったんですよねえ? あの格好で、私たち二人に、イロイロさせるつもりだったんですよねえ!?」
ぐはあっ!!
読まれてるぅっ。
俺に4500のダメージ!
俺は動けない!
顔真っ赤&涙目のアイリさんの攻撃!
「ケ、ケンタさんの、不潔ぅっ!」
ぐふぅはあおぉっ!!!
痛恨の一撃!!!
俺に12700のダメージ!!!
おれはしにました…………。
その俺の側から、オドオドした声が上がった。
寄り添うように座っているファルさんだ。
「お、奥様方、そのぐらいでもう……」
「奥様じゃありませんっ!」
「ちょっと黙っててくれるかしら?」
二人がフォローを一蹴。
ファルさん、夢の中と現実で性格が違い過ぎだわ。夢の中の、あの押しの強いエロかっけーお姉さまならともかく、超気弱モードの引っ込み思案お姉さんじゃあ、二人の剣幕に歯が立たねえ。
「あ、あの、年頃の男の子ですし、勘違いの不幸な事故ですから、そこまで……」
それでも、ファルさん、フォローありがと……。
って、諸悪の根元が何ぬかすんじゃい!
微妙に俺のせいにして責任回避すんじゃねーよ!
つか、言いながらチマチマ手を動かしてね?
「……ちょっと、ファルさん何してんの?」
「あ、ご主人様が私の夢を見る確率を上げようと」
「止めんかーーーいっ!!」
跳ね起きる俺っ。
どさくさ紛れに何してんのさ!
これ以上洗脳されてたまるかあっ!
「つか、どうせなら、俺が許してもらえる確率をあげてくんねーかなぁ!?」
「あ、それは大丈夫かと」
……はい?
がぶり寄る俺に、ファルさんがあっさりと言ってのけた。
こそこそ耳打ちタイム。
「どゆこと?」
「いえ、その、もう見てみたんですけど……9割以上の確率で許してもらえますよ?」
「そーなの!?」
この状況から、そんなあっさりと? うそぉ?
「はい。ご主人様がちゃんと行動すれば、ですけれど」
「ちゃんと行動?」
何そのフラグ? 何かあるってこと?
「何をこそこそと――ん?」
エリカの超冷たい声が、途中で途切れた。
で、目線を彼方へと向ける。
そして魔法陣を展開、それをにらみ始めた。
「ん? どしたのエリカ?」
「急速に近づいている者がいます。この反応は……魔族ですね」
「魔族っ!?」
ちょっとビビる俺。
「え、ちょっと待って、強そうな奴だったりする?」
「レーダーの反応からすると、大物ですね」
マジかよおっ!? こ、心の準備がっ!
エリカの魔法陣をのぞき込むと、アニメみたいに、『DEMON:Rank SSS』って字付きの赤い点が円の中に光ってて、真ん中へとぐんぐん近づいているっ。
……って、オイ。
「レーダーって、何でだよ」
「この方が距離感や数を把握しやすいじゃないですか」
「……本音は?」
「この方が格好いいじゃないですか」
「普通の魔法使えや!」
魔法使いだろーがよ! 科学かぶれしてねーで魔法らしい魔法を使えっての! この異世界(俺の世界ね)オタクが!
「遠視の魔法ですか? いいですけれど……もう来ますよ?」
「なぬっ!?」
言うが早いか赤い点が真ん中に重なって、空の上から何か降りてきたあっ。
「お初にお目にかかります、魔神王様」
超礼儀正しくお辞儀され……た?
「あ、えー、ども……はい……い?」
キョドる俺。
いや、だってさ、今まで無かったんだもんよ。こんな、羽は生えてるけど、どっかの貴族の執事みたいな、ばっちり決まってる人に丁寧に頭下げられるなんてさー。
特に、この世界に来てからなんかさー……。
思い出すとさー…………。
(回想中)
(つд;)
あ、涙出てきた。
じーんとしている俺のことなんざ眼中に無いエリカが、軽く舌打ちした。
「あなたですか、バアル」
「ふん、“王国の魔女”か。目障りな」
エリカの悪態に、イケてる執事さんが頭を上げて毒づき返す。
うおっ、イケメンじゃん!?
緩い天パが、スタイリストが髪をセットしたみたいにまとまってて、その前髪の下に切れ長の目が光っとるっ。鼻もスラッと、頬もシュッとして、口元も引き締まってやがるなぁオイっ。
いいよなーいいよなーイケメン様はよぉー。
ケッ。
何か、急に感動が冷めて、めっちゃ冷静になった。
いや、ヒガミではない! 断じてヒガミではなくっ!
「おー、コイツ、知ってんの?」
「“怠惰”のバアル。こんなのでも魔族の長の一人なんですよ、こんなのでも」
「へー、そうなんだ。ケッ」
露骨にコケにした言い方のエリカに、すっごい刺々しい相づちを打つ俺。
何か、優等生に絡む落ちこぼれ×2の図。
モアイじゃなきゃヤンキー座りしたいところだね。
「こんなのとは何だ人間の分際で! 仮にも魔界の行政を取り仕切る私に向かって!」
「おーおー、そいつぁー失礼しましたねー、すぅみぃまぁせぇんでぇしぃたぁー」
「大丈夫ですよ、自分で言ってるとおり“仮”なんですから。“仮”ですよ“仮”」
「いやー“仮”でもエラいんでしょーよ、俺らみたいなムシ風情がお話しちゃあいけねーんでしょーよ、ケッ」
「ま、魔神王様まで何ですかっ!」
エリカだけならともかく、俺にまで絡まれて慌てるイケメン。
ケッ、てめぇみたいなのがいるから、俺らが過疎るんだっつーの。
どーせカワイイ子食い散らかしてんだろーがよぉ。
そのイケメンでよぉ。
爆発しろリア充が!
エリカがこれ見よがしにため息を吐く。
「はあああぁぁぁ、一体何の用ですか? バアル。あなたみたいな童貞の相手をするほど暇じゃないんですけれど?」
「や、やかましい!」
なぬっ!?
今、聞き捨てならないコト言わなかったか!?
「ちょ、ちょい待ち! コイツが童貞!? マジで!?」
エリカがあっさりうなずく。
「マジですよ。コレ、重度の女性恐怖症なんです。しかも、エロ耐性はゼロを通り越してマイナス。ヘタレのフニャチンです」
「じょ、女性がはしたない言葉を使うんじゃない!!」
おおっ、バアルの声が裏返っとる! 顔が耳まで真っ赤だし!
マジだコレ、ガチ新品だわ。
エリカが悪ぅーい顔になった。
「はて、何がはしたない言葉なんです? ナニが?」
バアルに一歩詰め寄るエリカ。
「だ、だから、貴様が言った、その」
じりっと後ずさるバアル。
「教えてくださいよ? ねえ?」
さらに詰め寄るエリカ。
「だ、だ、だから、ふ、ふ、フ○×△……」
思いっ切り口ごもっとる! 女子小学生かオマエは!?
「ああ! フニャチンですかぁ?」
「だからはしたない言葉を使うなあああ!!」
……あー、こういうの、子供の頃見たなぁ。
何てこたぁない下ネタでイジるやつ。
そーかー、新品かぁ。
まっさらさらの新品かぁ。
そっかぁ…………。
あ、急に寛容さが沸き上がって、慈愛が溢れてきた。
いや、優越感ではない! 断じて優越感ではなくっ!
……マジで違くてさ……。
……新品同士っつーかさ……(´;ω;`)
エリカの肩に、俺は手を置いた。
「もう、それぐらいにしてやろうぜ……?」
「は? はあ」
きょとんとするエリカを横目に、残念なイケメンに、俺サムズアップ。
……分かるぜ、友よ。
「は? はい……?」
こちらもきょとんとするバアル。
だが、魂の奥底で通じているはずだっ。俺は信じているっ。
オレ、オマエ、トモダチ。。。(つ´ω`)つ
読んでいただき、ありがとうございます!
次の話も読んでいってやってくださいませm(_ _)m