4.夢分析されたら何と言われることやら
※本文の体裁を修正しました(2030.2.9)
コボルト&ワイバーンの団体様ご退場の後。
児童様たちの遊具 (になっている)なう。
「ねーねーおじちゃん、次はぼくの番!」
「だからおじちゃんじゃない! おにーさんと呼びなさいってば!」
そう言いながらも、頭の上に乗っけてた子を降ろして、せがんでた子を代わりに乗せる。
「ねー、次はあたしー!」
「あ、ずるい! 次はおれだぞっ!」
「はいはい、慌てないの。順番だから、ね?」
胸元の下(俺的には足下)でもめ始める子供たちを、アイリさんがあやしてくれていた。
遊具と化していると、何故かアイリさんの機嫌がいいんだよなー。
「ケンタさん、次の子、いいですか?」
「いいっすよ!」
ええ、いいですともっ! アナタのそんな笑顔が見れるなら! 遊具にでもオモチャにでも何でもなりますとも、ハイ!
「ふふふ、人気者ですね、ケンタさん」
「そうっすかねー?」
子供を入れ替えながら、ほくほく顔のアイリさんに返す俺。
人気者といえば、そうかも。ここのところ、討伐後に子供に囲まれ続けてる。
魔物に襲われてるのを助けてるのと、見た目が厳つくない(どうやら、本来のゴーレムはもっとゴツいらしい。俺はその方が良かったっ)らしく、妙に懐かれているのだ。
んで、そのころからアイリさんの機嫌も妙にいい。
子供好きなのかな?
「……ケンタさんが優しい人で良かった」
……はイ?
今の何? ナンデスカ? もしかして、俺の好感度上がってたりするんデスカ?
「ア、アイリさん、今――って、あ!」
「危ないっ!」
しまった、キョドって手から子供が落ち――。
と思ったら、宙に浮いた!?
そのままゆっくりと降下。
「ちょっと、気をつけてくださいよ。子供が怪我したらどうするんですか?」
魔法でフォローしてくれたエリカがため息を吐いた。
「お、おう。すまね」
「全く……。ちょっとモテたぐらいで調子に乗らないでくださいよ」
「う、うっせー! 乗ってねーっつの! 大体、子供にモテても嬉しくねーわ!」
「子供だけじゃないみたいですが?」
「へ?」
「隠れてないで、出てきなさい」
エリカの声に合わせて、鳩が豆鉄砲食らった顔の俺の横に、すっと現れる姿。
「うおっ!?」
びびったあっ! 誰か居たの!? いつから!?
「隠蔽術式ですね。魔法使い……でしょうか?」
エリカの語尾が曖昧になる。
珍しいな?
「ん? オマエでも分かんねーの?」
「いわゆる魔法使いの使う術式とは違うような……。もしかして理法使いでしょうか?」
「理法使い?」
「あなたの世界融合の際に生まれた、元々の魔法とは別の系統のものです」
「そんなの出来たの!?」
「世界自体が改変されたようなものでしたからね。しかも、唐突に発生したのではなく『元からあった』ことになっています」
「マジで!?」
「ですので、この世界の常識となっていますが……あの世界召喚で当事者でもあった私は『書き換えられてない』ので、知識だけ追加されたような感じですね。正直、今一つピンとこないのです」
「マジか……」
ややこしいなぁ。
つか、あの世界召喚→融合の副作用にそんなのがあったんだ。
「で、良かったですね? ちゃんと女性にもモテてるみたいですよ」
「はい?」
言われて、改めて新登場キャラに注目。
見た目は占い師っぽい。フード付きのマントまとってるけど、隙間から覗く服は、なんかアラビアンナイトっぽいっつーか、踊り子っぽいっつーか。
あ、ちょっと、つか結構エロくね?
スリットから見える足、色っぽいッス!
胸もアイリさんに引けを取らないッスね!
そしてウエスト細っ!
「フードを脱ぎなさい。失礼でしょう」
エリカに言われて、おずおずとフードを外す。
そこから現れた顔、いや、お顔。
美人じゃーん!!
キレイなおねーさまキタ―――(゜∀゜)―――!!!
おねーさまなのにおずおずとした困り顔、ギャップもイイッス!
「で、わざわざ隠蔽術式まで使って近づいて、何をするつもりだったのですか?」
あれ? エリカの言葉にトゲがある?
あ、そうか。警戒してるんだ。
そりゃそうか。姿隠して近づいてるんだもんなー。
「私の近衛兵に危害を加えるおつもりなら、最悪、国家反逆罪もあり得ますよ?」
「重いな!? っつか、『私の近衛兵』って何だよ!?」
「あ、間違えました。『私の魔導具』です」
「って格下げかよ!」
「だって『動く石像』ですから。ゴーレムは王国の兵器で、つまるところ備品ですね」
「まさかの物扱い!?」
「ええ。登録上は『私の所有物』です」
「人権もない!?」
「あ、あの、そんなつもりはないんですっ」
さんざん脱線しているところを、おねーさまが軌道修正してくれた。
単に返答が遅かっただけ、とも言うが。
「た、ただ、サインを……」
もじもじと恥じらうおねーさま。
え、ナニ、ホントに俺のファン的な意味なの?
……ぬふっ(゜ω゜)
「ふっ、いいっすよ」
「あ、ありがとうございます。それじゃ……」
エリカが「あ、ちょっと!」と口を挟むのを、片手で制する。
すすすっと近寄るおねーさま。
……って、俺の差し出したもう片手をすり抜けて?
俺にサインした?
「って、そっちかよ!?」
俺がサインするんじゃないんだ!?
ツッコミはガン無視で、俺の体をおねーさまが頬ずりしながらなで回わす。
「ああ……この冷たい体……固い、固いわぁ…この曲面から平面へ繋ぐ角の美しさ……うふふふふふふふ……」
は、はいい?
ナニこの人?
何にすんごいウットリしてんの?
「あー、ソッチの方でしたか」
エリカが拍子抜けした声を出した。
「え? 何、ソッチってどゆこと?」
「あなたの世界にもいたでしょう? 特定の対象に興奮する性癖の人」
「……あ。それって、もしかして……」
「『フェティシズム』でしたっけ?」
「ちょーっと待て、んじゃこの人って」
「ゴーレムフェチですね」
おおいっ!?
「そんなんアリかよ!?」
「あら? あなたの世界でも色々なフェチの方がいるのでしょう?」
「特殊すぎるわ!!」
いねーよそんな人っ!
ゴーレム自体いなかったけどなっ!
こっちの会話など耳に入ってないみたいで、ひたすらウットリとなで回すおねーさま。
「ああ……この無駄のない平面と曲面の組み合わせ……ミニマムで構成された造形美……素敵、貴方のようなゴーレムは見たことないわ……」
……ダメだ、分っかんねー。
しかし、ドン引きなはずなのに、何故か嫌悪感がちっっっとも湧かないんだよなぁ。
何でだろ?
「分かりますか? 見る目がありますね、貴女」
「もちろんですとも……うふふふ」
意気投合してやがる!?
あかん、こいつらダメな人同士だ。
と、エリカが咳払いを一つした。
「それはそうとして……先ほどのサインは何です?」
あ、そういやサインされたんだったっけ。
「ああ、あれは好感度アップの確率を高める理法です……」
オイ待て、何つった今?
「ちょ、エリカ、何ソレ?」
「理法は、簡単に言うと『確率を操る』魔法なんですよ」
「確率を操る?」
「例えば、油に火をつけるとします。魔法なら、火の精霊に力を借りて火をつけますが、理法では、『油が発火する』確率を上げて火をつけるんです」
「何だそりゃ?」
「精霊などの力に頼らず、対象を直接操る。魔法とは全く別物なんですよ。だから属性とか関係なく万物に働きかけられますが、必ず成功するとは限りません」
凄いんだか凄くないんだか、よー分からんなぁ。
「それに、魔力の消費も激しいですし。ただ、相応の力量と魔力量があれば、100%まで高めること、確実に成功させることも可能です」
「んじゃ、凄いのか……な?」
「もしあなたが使えば、都市一つの住民を突然死させることも、昼を夜にすることも100%成功するでしょうね」
「凄いなっ!?」
つかヒドいなソレ!? 何でもアリになるじゃん!
……あれ? そうすると、今の俺って?
「……さっき『好感度アップの確率を上げる』って……」
「はい。あなたは今、彼女への好感度がとても上がりやすくされているわけです」
「おおいっ!?」
心を操られてるのかよ!
「いいじゃないですか、ちょっと洗脳されるぐらい」
「よくねーよ!!」
洗脳ダメ、ぜったい!!
「知りませんよ。あなたがサインさせたんですから」
いやいや、そんな意味とは知らなかったから!
知っててさせたわけじゃないですから!
って、待てよ? サインが問題なんだったら。
「じゃあ、コレを消しちまえばよくね?」
「まあ、そういうことですね」
「ちょ、ちょっと待って! それは許してください!」
会話の流れに危機感を感じたおねーさまが慌てる。
……色っぽいおねーさまが、俺にすがりついて懇願している。
あ、何かイイ。イイわ、コレ。
ゾクゾクする……ぬふふっ(゜ω゜)
じゃなーーーい! 違うから、洗脳されてるなうだから!!
「いや、洗脳されてるとか言われるとさー、嬉しくないじゃん?」
「そ、そんな……何でもしますからっ!」
おねーさん涙目。
……何でも? 何でもっ? 何でもおおおっ!?
ぬふふふふふっ(゜ω゜)
って、ちっっっがーーーう!! 消えろ煩悩ぉっ!!
無言で頭を抱える俺を見上げていたおねーさまが、ポツリとつぶやいた。
「……わ、分かりました。それがお望みなら……」
へ? 何も口走ってなかったハズだけど……。
と、急に景色が歪んで? 遠ざかってくぅぅぅ!?
じょ、上下左右全部がベージュ色の空間になった?
その中に俺浮いてる?
薄いピンク色の霧みたいなのが辺り一面に……何か、甘ったるい匂いがする……。
「よぉこそ、夢の世界へ。ご主人様♪」
すんごい艶っぽい声がっ!?
振り向くと、おねーさまがあおおっ!
布地少ねぇぇぇ!
肌色率高ぇぇぇ!
タトゥーみたいなのがエロかっけー!
悪魔みたいな羽もかっけ……え?
「あ、あれ? おねーさん……です?」
「ああ、申し遅れましたわね。わたくし、ルクルファルナと申しますの。ファルとでもお呼び下さいませ、ご主人様」
しっとりとお辞儀するファルさん。
何か、さっきと雰囲気がまるで違うんですけど?
「あのー、ファルさん?ってさっきまでとは、何か……」
「ファルとお呼び下さいな♪ わたくしは貴方様のド・レ・イなのですから♪」
「はいいいっ!?」
超色っぽく言われて声が裏返っちまったっ。
何ソレどゆこと!?
お、俺の唯一の取り柄のスキャン実行っ!
名前:ルクルファルナ・アシュリアム
種族:半魔族 (ハーフサキュバス)
職業:理法使い Lv61
階級:無し
(中略)
アビリティ
・魅了(対象への軽い精神干渉)
・夢魔の加護(特定領域内でのステータス・アビリティ上昇)
New!・魔神王の奴隷
(全ステータス・アビリティ上昇)
(魔神王のHPとMPを限定的に流用可)
(魔神王のアビリティを限定的に借用可)
※上記全て魔神王が許可する限りにおいて有効
ホントだ!?∑(゜□゜;)
つか、ハーフサキュバス!?
「人間じゃなかったの!?」
「半分は、ですわ。でも、貴方様のおかげで能力は純粋なサキュバス並、いえそれ以上になれましたわぁ♪」
「俺の……って、確かに新アビリティがついてる」
「わたくしとしては“性”の文字が足りませんけれど♪」
「それはヤメて!?」
公開できないアビリティ名称になっちゃうじゃん!
違うから! 俺そんな人間じゃないから!
「あら? そういうことをイメージされたでしょう?」
「頭の中覗いてたの!?」
「す・こ・し・だ・け♪」
いやああああああぁぁぁ!!!
恥ずか死ぬぅぅぅ!!!
「それじゃあご主人様、ご奉仕いたしますねぇ♪」
つつつーと寄って、つつつーと指を這わされるぅ。
……けど、だからどうとも感じない。
モアイ(形のゴーレム)だもんなぁ。で、金属製だもん。
意味ねー(T_T)
「ふむ。では、これでいかがかしら?」
また頭の中を読まれた?と思ったら、俺の姿が――。
「戻ったぁぁぁあああっ!?」
真っ裸かよ!
「ここは夢の中ですから、姿も自由ですのよ♪」
「何故に真っ裸!?」
「あら、わたくしサキュバスですもの♪ でも、そのお姿だと、わたくしの方が興奮できませんわね……」
股間を押さえる俺を前に、首を傾げるファルさん。
「……よし、では、こうしましょう」
何かを思いついたファルさんが、指をパチンと鳴らした。
「きゃあっ!?」
「な、何ですか!?」
唐突にアイリさんとエリカが登場。
「アイリさんにエリカ?」
「その声は、まさかケンタさ――って、きゃあ!」
「アナタ何で裸なんですか!?」
声で俺と分かってもらえたのは嬉しい。
しかし真っ裸を見られるのは嬉しくねえっ!
「お二人にご奉仕していただきましょう♪」
「何を!?」
「奉仕って何です!?」
パニクる二人に、ファルさんがにやりと笑う。
「ちょ、何、そんなんアリなの?」
「だ・か・ら、夢の中なのですよぉご主人様♪ 全てはお望みのままですよ?」
サキュバスのウインク。
……マジでか。
……そっかー、夢だもんなー。
……リアル並みの再現度の夢で、好き放題かー。
……ぬふっ、ぬふふふっ(゜ω゜)
「あらぁ、そういうのがお好みですの?」
にやにやしながら、ファルさんがまた指を鳴らした。
「きゃあ!?」
「ええっ!?」
アイリさん体操服姿! 何故かおへそが見える半袖!
エリカ制服姿! 不自然に短いスカート丈!
ぬっふぅおぅ!\(゜∀゜)/
「コスはいくらでも選べますわよ♪」
アイリさん→ナース
→チャイナ服
→裾短い浴衣
→ビキニ!
エリカ→ミニスカポリス
→ゴスロリメイド服
→巫女さん
→スクール水着!
二人の衣装が次々切り替わるぅっ。
イイっ、イイねっ!
ぬぅっふぅおおおぅぅぅ!!
\(゜∀゜\)(/゜∀゜)/
「ほらほら、お好きなのをどうぞ♪」
アイリさん→踊り子
→童貞を殺すセーターのみ(胸元開いてるやつ)
→下着にガーターベルト&ストッキング!
エリカ→彼シャツ
→童貞を殺すセーターのみ(背中全開のやつ)
→ニーソックスのみ!
けしからんっ! 大変けしからんですぞっ!!
ぬぅふあっほおおおぉぉおぅっ!!!
\(゜∀゜\)(/゜∀゜/)\(゜∀゜\)
……って、あれ?
アイリさんが顔真っ赤の涙目でにらんでますけど?
エリカがゴミを見る目で冷たく見下してますケド?
スゴい迫力で、マジリアリティ感じるんデスケド?
ドユコトデショウカ?
「あら? ご主人様の正妻に愛人でしょう? だから喚んだんですけれど?」
「喚んだ? じゃあ、も、もしかして……」
「はい。お二人とも、本物の精神ですけれど……まずかったのかしら?」
ア―――(。△。)―――!!!
アイリさんがぷるぷる震えながら、ゲンコツを握りしめる。
「ケ、ケンタさんの……」
「ち、違うんです! これはその……おっ!?」
う、動けねぇっ?
夢の中まで正妻アビリティ発動するのっ!?
「バカぁーーーーーー!!!」
横っ面にめり込む鉄拳!
吹き飛ぶ俺!
アイリさんの俺への好感度、暴落なう……(T△T)
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