2.淀○長治さん、映画解説で有名なお方です
※本文の体裁を修正しました(2030.2.9)
Estrald Kingdom BIOS ver.1.1.2
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Nottel(R) Penpensuru(TM) 128 MHz Processor
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Start the OS "kobinata kenta"
・・・・・・
Good morning!
NANCHATTE♪ wwwwww
「って、何じゃ今のわぁっ!!」
目の前に表れていた画面にツッコミ入れたところで、風景が一気に変わった。
召喚に使われた、王城の聖堂だ。
「おはようございます。貴方に馴染みのありそうな目覚ましにしてみたんですが、お気に召しませんでしたか?」
「ねーよ、あんな目覚まし!」
ありゃパソコンの起動画面ってやつじゃないか(知らねーけど)? 起きてるのは俺じゃなくてパソコンじゃんよ!
……って、ちょっと待て。
「おい、まさか、俺が俺じゃなくてアプリだとか言わねーよな? このモアイ像にインストールされたプログラムとか言わねーよなっ?」
「Hey♪ Yo♪ 旦那、アンタは間違いなく人間だYo♪ 心配すんなYo♪」
唐突にラッパーが割り込んで……いや、俺の体から声が鳴ってるっ?
「な、ななな何だあ!?」
「ああ、それはサブシステムですよ。貴方が魔法を使えるように、魔法の情報を書き込んだ疑似人格を召喚の際に加えておきましたから」
エリカがさらっと答えた。
「……何故にラッパー?」
しかも、なんちゃって感がハンパねえんだけど……。
何か、ツレの悪ふざけにしか思えねえ。
「貴方の知識の中から適当に選出されてるんですよ?」
「そういうことだぜ旦那♪ おいらは旦那の鏡だYo♪」
なんかゴメンっ!
「それより、現状の確認をしましょう」
エリカが話を戻す。
そう、一つには。
「えっと、まず君はエリカだったよね? この王国……えっと……」
「エリカ・リリーディアナ=グランヴィル、エストラルド王国です。貴方が機能停止、じゃなくて気絶する前にお伝えしたとおり、この世界は救われました」
そう、意識が飛ぶ前に、「私、エリカが、エストラルド王国を代表してお礼申し上げます」とかナントカ聞こえた……。
って、ちょーっと待てや。
「おい、今、機能停止とか言いかけなかったか? 人間には使わないよな、その言い方?」
「話の腰を折らないでくださいよ」
「いや、ソコ大事だろっ!」
「だからYo♪ 旦那は人間だってばYo♪」
「おまえも腰を折るんじゃねえっ!」
エリカが面倒くさそうに手を振る。
「はいはい、貴方は人間ですってば。話を進めますよ?」
「お座なりだな!?」
俺のツッコミをスルーして、彼女は続けた。
「えー、言ったとおり、世界は救われました。世界召喚が成功しましたので。ただ、成功しすぎました」
「……は?」
「気合いが入りすぎたのでしょうか? この世界の他、2つほど別世界も召喚されてしまって……」
「ダメじゃん!? って、世界消滅!?」
やっちまったの俺っ!?
「落ち着いて。消滅してないでしょう? 完全に合体したんですよ。融合と言いましょうか」
「そ、そうなんだ?」
「ええ。世界のルールが変わったりしたようですけど、人的被害はごくわずかですみましたし」
世界のルールが変わったって、マズくね?
「って、誰か被害にあったの?」
「はい、国王と重鎮たち程度です」
「国王っ!? って大丈夫なのかよ!?」
エリカが「はあ、まあこんな感じですかね?」と言いながら空中に遠隔視魔法陣を描くと、王の間が映し出された。
王様:「ぼくっちは“ね”」
重鎮:「ぼくっちは“こ”」
みんな:「にゃぁっふーーー!!!」
「とまあ、これをエンドレスで繰り返してます」
なんっかゴメンっ!!!
座ったままで微動だにせず、ガンギマりの目で叫んでる……。イタい、イタすぎるっ!!
「ま、所詮お飾りだから問題ありません」
「ダメな王様だったの?」
「王国史上最高の名君と謳われていましたね」
「大問題じゃねーか!」
頭を抱える俺。
「別にどうってことありませんよ。大問題なのは、貴方です」
「へ? 俺?」
あの惨状よりも問題なの? 俺?
「“魔神王”のステータスで、運が-9999なのは知ってますよね?」
アンタが決めたんだけどな、ソレ。
「-9999はもはや大災害レベルの呪いと変わりません。このままでは、次から次へと不幸が降りかかり続けてしまいます」
「マジで?」
「それも、貴方個人レベルではなく、王国全土を巻き込むレベルで」
「マジで!?」
ドォォォォン!!
そのとき、爆音と地響きが鳴り響いた。
「な、何だあぁぁぁっ!」
「……王都の近郊に隕石が落ちたみたいですね」
エリカが遠隔視魔法で見ながらつぶやく。
「マジでぇっ!?」
「と、このように、災害級の不幸が起きてしまいます。ですから、ー9999を相殺する必要があるのです」
うん、洒落にならんのは良く分かった!
「どうすんのさっ!?」
「そこで、お入りなさい」
後半は振り返って手を叩きながら言うエリカ。
扉が開いて、入ってきた……んだけどぉうおっ!
ウエディングドレスっ!
カワイイっ!!
胸でけぇっ!!!
「はい、貴方のお嫁さんです」
「マジでぇぇぇっ!?」
「マジです。婚姻によりステータスの一部、運を共有化させて、相殺するんです。攻撃力や防御力は無理ですが、運であれば不可能ではありません。その代わり通常より強力な婚姻……」
エリカが何か言ってるけど、聞っこえねー。
いや、だってカワイイんだものっ。
エリカがキレイ系だとすると、この子はカワイイ系、アイドル顔負けだよ!?
しかも、胸元が、ドレスの開いたトコがまぶしいっ! エリカなんぞ足下にも及ばんっ!
『Hey良かったな、旦那♪ 旦那の世界で言うところの、EカップだYo♪』
サブシステムが頭の中だけに語りかける。
『マジで!?』
『マジマジ、正確にはEとFの境目だYo♪』
キタ―――(゜∀゜)―――!!!
地獄から天国ぅぅぅ………って、あれ?
泣いてね?
「あの、どしたの? えっと……」
「アイリさんですよ。アイリ・キャロル」
「ああ、キャロルさん泣いてるんだけど……」
「そりゃそうでしょう、伝説の魔族の王と結婚するんですから。普通の反応ですよ」
ダメダ―――(。△。)―――!!!
俺、魔神王だったぁぁぁっ!
「ですが、この子ほどの幸運持ちはいません。“地母神の祝福”で運5278、生け贄にはもってこいです」
「生け贄言うなよっ!!!」
慌ててキャロルさんへと話しかける。
「あ、あのねキャロルさん? イヤなら無理にすることないんだよ? 結婚なんてさ」
「い、いえ、私が結婚しないと、お父さんもお母さんも生きていけないから……」
……ん?
「ちょっと待った、ソレどういうこと?」
「私が結婚しないと、お父さんは最果ての海で蟹工船で、お母さんは鉱山で死ぬまで強制労働だって……親戚はみんな税金5倍にするって……」
ヒドいなオイっ!
「ちょ、誰がそんなこと言ったのさっ!?」
「え、大神官兼宮廷主席魔導師さまが……」
「大神官って?」
キャロルさんがちらりと見る。
エリカが口笛吹いてやがる。
「テメエかぁぁぁ!!!」
「し、しょうがないじゃないですか、緊急避難ですよ」
「聖職者がパンピー追い込むんじゃねぇよ!」
「だよねー♪ だってYo♪、運なら大神官サマの方が上だYo?♪」
割り込んできたラッパー、って待った! その一言、聞き捨てならねぇ!
「マジか!?」
「マジマジ♪ スキャンでステータスみるかい旦那?♪」
ちょっと何をとか何とか言うエリカを無視してスキャン。
名前:エリカ・リリーディアナ=グランヴィル
種族:人間
職業:賢者 Lv87
階級:大神官兼宮廷主席魔導師
(中略)
運 : 6694
アビリティ
・精霊王の盟約(全状態異常激減)
・四神獣の加護(防御力大幅上昇)
・天空神の祝福(幸運値大幅補正)
・世界樹の恵み(低速自動回復)
「……テメエ、さては……」
「な、何ですかっ」
「我が身かわいさに身代わりにしやがったな!?」
エリカがさすがに若干ひるんだ。
「なあ、お前、神官なんだよな? 善の側のシンボルだよな? 善良な一般人追い込んで心痛まねぇの?」
ここぞとばかりにチクチク攻める。
いや、オイシイ話だけどさ、俺そんな鬼畜になれんわ。さすがに。
……オイシイ話だけどさぁぁぁっ(血涙)
「いえ、いいんです。みんなが幸せになるんだったら、私……」
いい子じゃん! ほらぁいい子じゃんよ!
「なあ、健気でいい子じゃねーか、それを、天下の大神官様が? 追い込んで? 犠牲にするワケだ? それってどうなの?」
チクチク継続。と、目をつむって耐えていたエリカの目がカッと開いた。
「じゃあ、私と結婚するんですか? 彼女との結婚は認めないと!?」
エリカと視線がカチ合う。
「…………」
「…………」
うなずく俺たち。
「承認スルッッッ!!!」
「イエッサーーッ!!!」
「ええええええぇぇぇっ!?」
手のひら返してゴメンっキャロルさんっ、でも、これ一択っすよっ。
エリカだけはないわー、マジないわー。
「……承認しましたね?」
エリカがにやりと笑った。
ん? 何かイヤな予感が。
脳裏によぎる一抹の不安。しかし、エリカはすでにブツブツと詠唱に入っている。
何か、悪寒がするぞ? 変な魔力?みたいな渦も見えるし。そもそも、結婚て魔法でするものじゃなくね?
「おっと、旦那、こいつはヤバいYo?♪」
「って、何が!?」
サブシステムに問いただす暇なく、詠唱完了。
「……祝福と呪いあれ! 墓場までの挙式(Ceremony is Cemetery)!!」
光と闇が乱れ舞う。
「……って、何だ今の不吉なセリフはっ?」
しかも、左の薬指にイバラの刻印が指輪みたいにっ?
禍々しいなオイっ!
「Yo旦那♪ 今のは神聖魔法と暗黒呪法の複合魔法だYo♪ ぶっちゃけ、呪いをかけられたんだYo♪」
「んだとぉぉぉっ!?」
「ふふふ、その通りです。呪いを編み込んで、婚姻を強化しました」
ゼーハー言いながら何言ってんだよ!?
「何してんのっ!?」
「これで運はほぼ相殺されます。その代償として、アイリさんは貴方から5m以上離れれば死んでしまいますが」
「何してくれちゃってるワケぇぇぇっ!?」
ゼーハーしながら、何言ってんのコイツわっ!?
「おま、呪いって、結婚ってそーゆーもんじゃねーだろ?」
「何がです? 祝福だろうが呪いだろうが、結局同じことじゃないですか」
「違うだろっ! もっとこう幸せな、愛情とか、その、何だ……」
あ、言ってて恥ずかしくなってきた。
エリカが冷たい目で舌打ちする。
「ちっ、夢見る乙女かよ。童貞はこれだから」
「悪かったなあああぁぁぁっ!?」
ああっ、肯定しちまったぁっ!?
「えええぇぇぇ……そんな、私……」
「大丈夫ですよ、それ以上のことはあり得ませんから」
顔を覆って泣き出すキャロルさんを慰めるエリカ。
「え……?」
「ん、どゆこと?」
俺とキャロルさんが首を傾げる。
「だって、貴方ゴーレムじゃないですか。人間の彼女をどうにかできるとでも?」
ア―――(。△。)―――!!!
俺、モアイ像(形のゴーレム)だったぁぁぁっ!
「どうしてもと言うんだったら、つけてあげましょうか? 男性器。でも、その体に人間サイズですから……」
ププッと笑われる。
「お粗末でしょうねぇ?」
「想像するなよおおおぉぉぉ!!!」
思わず股間を押さえ……ってそれすら無かったわ(T_T)
『Hey旦那♪ どうにかしたいのかよ?♪』
『したくねぇ! いや、したくないわけないけど! したいけど! したくねぇ!』
『いや、つけるつけないじゃなくってYo♪ 現状をどうにかしたいのかYo?♪』
内緒話モードのサブシステムに、はっとする。
『……どうにかできんの?』
『おうYo♪ もちろん、無茶するから代償はデカいケドYo♪』
考えるまでもない。
手でも何でも持ってけドロボー!
……結婚はもったいないけどなぁぁぁ!!!(血涙)
『やってくれ』
『OK♪』
「……術式への強制介入開始……呪法部分へアクセス……術式対象リライト……限定的コンプリート……」
「ちょ、ちょっと何を……?」
俺の体から鳴るサブシステムの声に、エリカが慌てる。
「術式改変! 再婚式(Bridal again)!!」
輝く魔法陣。
「な、何てことするんですかっ!」
エリカの薬指にイバラの刻印が出現。
で、俺とキャロルさんのが心持ち薄く、マイルドになった気がした。
「ヒャッハー! 呪いの対象にアンタも加えてやっ……たぜベイべー!」
「何、どゆこと?」
「大神官サマに……も結婚してもらった……んですよ~♪ ハァァァ~分散したから死ぬ距離も~100mまで伸びましたァァァ~♪」
グッジョブ……なのか? いや、さっきよりマシか? キャロルさんの自由度は増したしな。
……つーか。
「なあ、サブシステムよ、お前どしたの? さっきからロック調になったり演歌調になったり、安定しないケド?」
「無理し……たからYo♪ シス……テムがほとんどイカレちまった……ぜベイべー! だ……からもう消……滅するの……さァァァ~♪」
代償ってオマエだったの!?
ノイズまみれの声が最後の一言を振り絞った。
「それでは、みなさん。さよなら、さよなら、さよなら」
ブツっと切れる。
「ちょ、淀川○治さんで締めるなよ! 俺ら世代には伝わりにくいだろ!!」
「誰それ?」
「えっと、誰ですか?」
「ほらな!?」
読んでいただき、ありがとうございます!
よろしければ、次の話もどうぞっm(_ _)m