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18 治療

「患者は猫の母娘だ、先に防疫をしてくれ」

「ああ了解した」


 バイワートさんが片眼鏡の女性治療師さんにそう頼むと、馬車まで案内してネコミミ母娘――シアさんとリカレを診てもらう。


「君らを治療させていただくアリシーだ、今から治療魔法をかける、暴れたりすると失敗する可能性があるから動かないでくれよ……プリベンチオーネ」


「みゃっ!」


 ドアが開いた馬車へ半身を乗り入れたアリシーさんがスキルを使ったのだろう、ドアの隙間から僅かに光るところが見えた。

 リカレの驚いた声が聞こえたが、暴れはしなかったようだ。


「防疫はこれでいいが動けるか? おい、動けないようだから中へ運び入れてくれ」


 シアさんを御者の二人が治療院の中へ運び込み、診察台に寝かせた。

 診察台の隣に移動したリカレが不安そうな顔でシアさんを見つめているが、頭に手を置かれているお蔭か静かにしている。


「それじゃあ診察から始めよう、動かないでくれよ……イザーメ」


 シアさんを移動させている間に、青いレインコートのような両手両足まで覆う服へと着替えたアリシーさんが、リカレとは反対側に立つとスキルで診察を始めた。

 朝方、俺を診察したお爺さんと同じ治療魔法だ。


 アリシーさんの右手中指の中心部がぼんやりと光り、その光でもって診察台の上に寝かされたシアさんの頭から足へ、次いでリカレの頭から足へなぞっていく。

 終わるとアリシーさんの指から光が部屋に散らばり消えた。


 唐突にアリシーさんが、俺の方を振り向き口を半開きにする。

 どうしたんだと疑問に思ったが、


「あ? ちょっとアンタ何で生きてるんだ」


 何か酷い事言われた。


 お爺さんが使った治療魔法とは効果が違うようで、効果範囲拡大とか同じ魔法でも内容や効果を調整できるのだろう。

 髪の毛が生命維持をしてくれている事までは分かってなさそうだから、離れた場所への効果は低下していると考えられる。


「僕はもう治療師さんに診察してもらって大丈夫だと言われているので、今はシアさんを治療してあげて下さい」


「……ああそうだな、子供の方は問題無い、母親の方は喉を傷めたせいで食べ物がまともに食えなくなったんだろ、衰弱してはいるが喉を治して食事さえとれば回復するさ」


 アリシーさんが診察台の方へ向き直り

「トラッタメント」

 唱えると、右手薬指の中心部が青く光り喉へ吸い込まれる。

 青い光は首の血管を巡るかのように動き、数秒で消え去った。


 診察台に横たわるシアさんを見ると、幾分か表情が和らいでおり、呼吸も楽になった様子が伺える。

 効果はあったのだろうと一安心。


「スキルによる治療魔法は患者の体力も奪っちまうから今日はここまでだ、私もお腹がすいたしな、後は流動食を用意するから二人は治療院に預けていくといい、ところでアンタを診察した治療師は誰だい?」


「コーズさんという老齢の方です」

「何だ、うちの爺さんか」


 家族だったようだ。

 という事はお爺さんと一緒にいた少女は娘だろう、どちらも金髪に青い目をしていて鼻筋がそっくりだった。


 デシアーナさんもコーズさんとアリシーさんが家族だったのは知らなかったという顔をしている。


「治療院と自宅は別だからな、爺さんは自宅近くを訪問治療しているのさ、もう足腰弱ってんのに、動かさないともっと弱るから余計な口出しはするなってさ」


「病気予防の首輪は明日届けさせる」

「ああそうしてくれ、月に1度は防疫を必ず受けさせるのも忘れずにな」

「母親の方が話せるまで回復したら、南街区街兵隊詰所まで連絡して下さい」

「分かった、爺さんかそこらへんの兵士に連絡してもらうよ」


 そんなやり取りを最後に治療院を後にした。


 馬車に乗るとすでに夜8時を過ぎている。

 走る馬車の中から見える景色では、立ち並ぶ建物に取り付けられた照明器具らしきが光りを放っているものの弱弱しい。


 街の中でも一際高い建物が巨大なランプのように光を放っている、灯台のようだと思ったがその通り灯台なのだろうと思い直す。

 灯台がある場所は海の近くというイメージが浮かんだので、街の中にあるのが不思議に思い聞いてみる。


「街中なのに灯台があるんですね」

「夜も魔物は休んでくれませんから、灯りは必要です」

「灯台が無い町や村はどうしてるんですか?」

「罠を仕掛けたり、魔物除けのスキルやアイテムで魔物が寄ってこないようにしています、その分狩りがしにくくなるのでどちらを選ぶかは街の規模次第ですね」

 

 詰所に着くとバイワートさんと軽く別れの挨拶をして、馬車を見送る。

 夜道を行く、光る飾りで彩られた馬車が派手だ。

 夜遅くなってしまっていたので、衣服の購入は翌日へ繰り越しになった。


 デシアーナさんは部屋まで着いてきてくれたが、ミリアーナさんと協議する事があると行ってしまった。


 帰室するのが遅くなったにも関わらずローリアさんが食事を用意してくれたので、お詫びとお礼を兼ねて少量確保しておいたみかん味の喉飴とマシュマロをプレゼントした。


「あらあら美味しいわ、お菓子なんてこの街でよく買えましたね」

「パントセレブル商会の方と知り合いになりまして」


 ローリアさんは部屋が芋で溢れかえってしまっていたことは知っているはずだが、スキルの実験に失敗したという事以外には具体的に何があったのかまで知らされていないのだろう。


 俺も黙っていた方がいいと思ったのでごまかす事にした。

 商会の人と知り合ったとは言ったが買ったとは言ってない、錬金術で作ったという真実は話さなかったが嘘はついていない。


「高かったでしょ、悪いわねありがとう」

「いえいえ、どういたしまして」


 根掘り葉掘り事情徴収されたらごまかしきれる自信は無かったので、あっさりと受け入れてくれたのは助かった。



 食事を終えるといつものようにベッドに座る。

 部屋の中は照明道具のお陰で明るい、部照明道具は木の蓋を外したり被せたりでONOFFできるのだが、10分ほどかけてゆっくり明るくなるので少し不便だ。


 今日はデシアーナさんに抱き着かれたりして嬉しかったが、アソコは反応しなかった。

 昨日の一件以来、性欲が解消したまま戻らないのは体がボロボロの状態であるせいだろう。

 一月もすれば治るとの診察結果なので、こちらも治ると信じたい。

 せっかく恋人が出来たというのに、治らなかったら泣ける。


 とか考えていたら、相変わらず唐突だがスキルコンテナで新しい事が出来そうな感覚が沸き上がってきた。

 錬金術が使えるようになった時と似たようなタイミングだ。、

 一昨日の同じような時間、ベッドの上という同じ場所。

 何がスキル解放のトリガーになっているのだろうか?


 今は多少の心当たりがある『転移してから記憶を失うまでの空白の期間』があり、その空白の期間で身に着けたスキルの記憶が戻りつつあるのでは? というもの。

 それに加え、体調が回復するにつれ、スキルの制限が無くなってきているとも考えられる。

 体調が回復するのに1か月かかる、そう考えるとまだまだ出来る事が増えたりするのだろうか?


 こちらの世界に関して生活していたような記憶は無いので確証は無いのだが、他にこれといって思い当たるものは無い。


 今回使えるようになったのは『相転移』とはいっても自分が元の世界に戻れたりはしない、行き来できたら楽しそうだがそこまで便利には出来ていないようだ。


 相転移コンテナの特性について頭の中で整理する。


 大きさはティッシュ箱程度。

 二つ一組が出せる上限で、通常の収納コンテナのように無限に出したりはできない。

 生物は入れられるが、生物を入れた状態では閉める事ができず、閉める事が相転移開始の条件なので生物を相転移させることはできない。

 どちらか片方が開いたままだと相転移されない。

 相転移されるのは中身だけ。

 錬金コンテナと違い、俺以外でも多分使える、これはあまり自信が無い。


 このスキルで出来る事は手紙や小物のやり取りぐらいだろうか、建築物とコンテナの融合や錬金術と比べるとちょっとショボい。

 一方的に転移させられたら、錬金術と組み合わせて大量の食糧を送り込んだりできそうなのだが。


 試してみようかと思ったが、昨日スキルを暴走させたのは1人だったらかなり危ないところだったので、さすがに自重した。

 出来ると理解できている事から想像した結果と、実際に使用してみた結果では差があるのだ。

 転移の失敗とか大惨事になりそうで怖すぎる


 明日デシアーナさんに報告しておこう、上手くいけば手紙のやり取りができるのではという期待もある。

 口では言いにくい事もある。

 紙は高価だったりするのだろうか?


 書棚にある本を一冊手に取って見てみたが、紙が厚みがありつるつるしていて折り曲げようとすると割れそうな硬さがある。

 何の紙だろうか?

 記憶を探っても一致するものは存在しない。


 流石に眠くなってきたので灯りに木の蓋を被せ部屋を暗くすると、ベッドに横になり目を閉じた。


 ☆ ☆ ☆


 近くで何かが動く気配と感触があり、目を覚ましたら俺の隣にデシアーナさんが横になっていて、俺の顔を覗き込んでいた。


「デシアーナさん?」

「起こしてしまいましたか? ごめんなさい、寂しかったので来てしまいました」


 キスをしてきたのでこちらも返す。


 デシアーナさんからのムニュっとした感触に反応して股間が痛みを訴える。


 決めた、俺もうこの世界に永住する。

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